勇者になれなかったへたれちきん。 -2ページ目
七階建ての
まあまあ新しい
その建物
前に立ち
見上げるあの方のお背中は
何時もより大分
弱かった
入るのを少し躊躇い
足を踏み入れたあの方
覚悟を決めたかの様に
悠々と前を歩いてゆくあの方
隣を歩くことは出来なかった
その建物の丁度真ん中
足を踏み入れたあの方
まるで吸い込まれる様に
歩く姿は悠々と
話かけたはひとりの人間
あの方の旅はここでおわり
“手錠をかけて下さいな”
私にとってはただの紙
あの方にとっては
自分と建物を繋ぐ鋼鉄の鎖
その建物の真ん中の東側
今のあの方の小さなお家
あの方にとっては冷たい牢獄
小さな窓から見えるちっぽけな街並みは
あの方にとっての唯一の世界
すこし小さくなったあの方は
ため息をつき
ベッドに座り
天井をみあげ言葉を呑み込む
建物を去る
あの方を置いて
最後に見たあの方は
弱味を見せずに
笑って見せた
“連れて行って”
あの方の心が泣いた
ごめんね
ごめんね
ごめんね
ごめんね
ごめんね
許してね
また
迎えにくるから
約束よ
また必ず
「大丈夫」
そんなの嘘だった
寂しかった
苦しかった
辛かった
泣きたくて
甘えたくて
出来なくて
閉じ込めた
「大丈夫」
そんなの嘘だった
心配かけたくなかっただけ
不安にさせたくなかっただけ
傷つけたくなかっただけ
傷つきたくなかっただけ
嫌われたくなかっただけ
距離があるのに距離を置いた
聞き慣れた着信音
携帯手探すも一苦労
約束のスリーcall
待ち望んだその声に
溢れる涙を噛み締めて
震える声を噛み締めて
笑ってみせた
「ずっと一緒にいてあげる」
あの言葉も
あの約束も
あの笑い声も
あの日々も
全部が全部夢だった
すごく幸せな夢だった
嘘で固めた日々だった
優しい優しい日々だった
見えない彼に恋い焦がれ
ありもしない愛に溺れてた
幸せな日々だった
毎日愛を感じてた
変わらぬ愛を信じてた
いつの間にか
いつの間にか
いつの間にか
いつの間にか
いつの間にか
抱いた気持ちは
悲しい
哀しい
かなしい
愛でした。
るんるんるん。のるん。
いつも僕は
歩く、歩く、あるく
横を向いて
上を向いて
前だけは向けないで
歩く、歩く
気付ばここは
成れの果て。
るんるんるん。のるん。

