オヤジと妻とチモの大バトル

私が夜勤の時もこれまたおかしい出来事が多かったようで最初の頃はやっぱりカミさんとは信頼関係が完全ではなかったらしく私の出勤した後なんかはいつも一悶着あったらしい。
 
内容はこうである,

オヤジが仕事に行ってしまった後の寂しさと今度はオヤジ
に代わってカミさんを守らなければならないという使命感
からカミさんが寝るまでは必ず玄関の前で聞き耳を立てて
誰か不審者はいないか,家に入ってくる者はいないかと
ジーっと待ち構えているらしい。
 
カミさん呆れて、

もう誰もいないからこっちに来なさい!」

と言っても聞く耳持たず,別にカミさんに怒ってる訳じゃ
ないんだがケツを引っ張たいて無理矢理部屋に連れて
いこうとすると、、
 
[まだ終わってない!]と
ばかりに

[ガルルルッ!]
と唸るそうなのである。

カミさんはまだそこまで信頼関係が築けていなかったのと
チモの外見にビビり、

[ヒェーッ喰われる!]

とさっさと自分のベッドに潜り込んで寝てしまったそうなのである。
 
しかーし!事はそれだけでは終わらなかったのである!
 
 
部屋の電気を消し,夜中やっとカミさんがウトウトしかけた頃チモは夜間パトロールを開始するそうなのである。
 
ちょっとでも物音や車の音が外でするともう大変みたいで
今まで部屋の中でウロウロパトロールしていたのにあのデカイ体を牧羊犬のような身のこなしで玄関までダッシュしていき、

[コラーッ誰だーッ!]
というように、

[ガルルルッ!ガオーッン!]

と唸り声を上げながら戦闘体制に突入していったそうである。
 
ロットワイラーは元々家畜や財産を運ぶ人達を盗賊や野生の肉食獣などから夜を徹して守る目的で人々から重宝され可愛がられてきた犬種なので,
やはりチモのような普段からボケロットでも血が騒ぐのか家の周りに知らない人間や物音があったりすると敵とみなし戦闘体制に入るのである。
 
一度質の悪い新聞勧誘の野郎を玄関からチモと百メートル位追っかけ回した事があるがその時のチモの表情といったら物凄いものがあった。
 
それに加えてハゲ坊主に髭面の三角目のデカイオヤジの
罵声と前蹴りに恐れをなした勧誘の奴の悲鳴にも似た叫び声が午後3時46分の閑静な住宅街に木霊していったのは言うまでもない。
 
あまりにもフザケタ野郎の態度にオレもチモも、

(多分腹が立ったのはオレだけ)抑えていたものが

(パンッ!)

弾けてしまったのである。
 
わりかし硬派で育ってきたオレは目上の人に対する礼儀や言葉使いや弱い者イジメをする奴らを絶対的に軽蔑していたし許せなかったのである。
 
犬社会でも犬は割とお互いに寛容であるが一旦しては
いけない一線を超えると皆から手痛いお仕置きを受ける。
 
それと同じなので奴にはいい勉強になった事だろう。

二度とお会いする事はなかったが謙虚な心を持って
欲しいと願うばかりである。
 
話を戻すがこんな感じでカミさんとチモのバトルは
何ヶ月も続いていたそうである。
 
奴が初めて二人でいる時にゴロンと腹を見せて触って触ってと甘えて来た時は涙が出る程愛らしいと感じたとカミさんが嬉しそうに話してくれた。