今月のサイエンス誌に 
腸内微生物ががん免疫療法への反応を方向づける 
という論文が掲載されている。 

http://www.sciencemag.jp/science/298909 

おそらく同じ内容と思われる別の論文の日本語の要約がこちら。 

https://www.eurekalert.org/pub_releases_ml/2017-11/aaft-6_1103017.php 

腸内細菌が免疫チェックポイント阻害薬の効果に影響するというもので、オプジーボ等を投与されたメラノーマ患者及び肺がんや腎がん、膀胱がんの患者を対象に調査が実施された。 
後者では、治療の前後に「抗菌薬を使用していた患者69人」は、「抗菌薬を使用しなかった患者」と比べて、抗PD-1抗体薬の奏効率が低く、生存期間も短かったということが判明した。 
また、対象患者の腸内細菌叢(さいきんそう:細菌の集合体)を調べたところ、抗PD-1抗体薬の効果が認められた患者の69%で「アッカーマンシア・ムシニフィラ」と呼ばれる細菌が検出されたのに対し、非奏効患者でこの細菌が検出された割合は34%だったというものである。 

これらの結果から「腸内細菌が免疫療法の効果を決めている」ことが考えられ、これまでマウスでの実験データで得られていた結果がヒトでも再現されたとのことである。 
「がん患者の糞便試料を用いて腸内細菌叢を調べることで、抗PD-1抗体薬による治療効果を予測し、がんの個別化医療につなげられる可能性がある」らしい。 

今後必ず直面する、抗がん剤の変更時にはバイオマーカーは非常に重要であり、個別化医療に向けてこれらの研究が進むことを願うばかりだ。 
抗がん剤は延命治療であるが、1回/月としても、5年で60回になる。 
抗がん剤は耐性による制限があるだけで、回数制限はない(と思う)が、回数を重ねると、がんではなく、抗がん剤の副作用の蓄積でカラダはまいってしまうだろう。 
その意味では、抗がん剤の選択およびそのレジメンにおいては、奏功の程度ではなく、治療対効果を重要視するほうがよいようにも思う。 
延命すれば、上記のような結果や新しい治療が出てくることを期待できる。