090320 演劇集団スプートニク第3回公演 「ジェニファー」
今週末から来週にかけて、個人的に「ジェニファー」「アロマ」「すべての風景の中にあなたがいます」「光の帝国」と観劇が立て続けになる予定なのですが、その一つ目の「ジェニファー」の簡単な感想等を。
ちなみに僕が観たのは3/20 14:00の回と3/21 18:00の回です。
以下、公式の概要の後でネタバレも含めた感想を記載しますのでご注意下さい。
”高校からの友人である男4人組が、久しぶりに集まり、ぐだぐだと飲んでいた。
話題と言えば当時、憧れの存在だった同級生の 「ジェニファー」(あだ名)のことばかり。
しかしそのジェニファーが、同じ高校のヒロシと結婚してから苦しい生活をしているという話を聞き、4人のテンションは下がる一方。
夜も更け、嘆きと酔いで次々に潰れていく4人だったが、
突然、眩い光に包まれていき―――
目を覚ますと、なぜか10年前の高校生だった頃に戻っていた!!
そして4人は、ジェニファーの未来を明るく幸せな人生に変えるために、
ある作戦の実行を決意する!
果たして、ジェニファーや4人の運命は…!?
怒涛のテンションでお送りする、タイムスリップ学園おバカコメディ、ここに誕生!!”
劇では多い「タイムトラベル」ものなのですが、この主題が含む寓意とは何かと問われれば、まず上げられるのは「ifの実現」でしょうか。時間を軸上に、しかも先端を視座とし、それより後方しか認知出来ない人間にとって、その機会は喉から手が出るくらい欲するものです。
登場人物達は20代後半の年齢に達し、今、自分がいる状況にも環境にも不満を抱きながら、典型的なメサイヤ・コンプレックスからか、アイドル歌手を応援するのを拠所に日々を過ごすという、なんともまぁ、我が身を振り返ればというところですが…この辺り、「依存」という段階まで行ってるかどうかは個人差なので、一括りにするのは乱暴でしょうが、一般人の持ってる印象はそうである事は否定出来ないでしょう。
そういった境遇の人物たちが「ifの実現」の機会を得たなら…。
「タイム・トラベル」ものではお決まりとなる「タイム・パラドックス」の解釈や、時間朔行の原理(『ある日どこかで』(リチャード・マシスン)の方法に近いでしょうか?)はほぼ省いています。SF部分ではなく、それぞれの人物が視点の差異を前提としながら、過去を再共有する事で、成長する事を主眼においている為、物語の小道具として使用しただけというのならいいのです。しかし、未来があの様な形で変容するのなら、話は別です。
成長と契機を物語の核に用いるのなら、それは現実の変容ではなく、あくまで自意識の変化に留まるべきだと思うのです。でなければ、其処に成長が介在する余地がありません。
…と、まぁ物語としてだけならば骨子と展開・帰結のズレが気にはなるのですが、これは別段、口承でも小説でもありません。舞台なのです。「タイム・トラベル」に巻き込まれ、その中で悲喜交々をリアルタイムで演じていく形式に、例えば、実時間に戻り、意識変化による成長を表現したところで、ただただ白々しい寓意が浮き彫りにされるだけになるだろうと思います。
これくらい馬鹿馬鹿しい終わり方、この劇に似合うのは結局、こっちなのだと思うのです。
「ifの実現」は彼らを変えたのでしょうか。彼らの中で過去を楽しもうと真っ先に提案したタダケン(?)自身が結局は何も変えれない、自分の枠を自覚していってしまいます。彼以外も結局は依存する対象が変わっただけだったり、自分より強者に立ち向かえなかったり、能動的に動いた動機さえもその頸木から脱したものではありません。10年という月日に望むと望まないに関係なく得た技術・知識が、結局は彼らが持ち得たものだけが活用される事になったのです。
「結局、俺らが出来るのはヲタ芸だけだなぁ」(厳密には言い方が違うかも知れませんが)
過去も現在も、「ifの実現」の機会においてさえ、彼らが現実への諦観とも、立ち向かう覚悟とも違う、行動するというその単純な行為の執行する事により得た言葉であり、自覚だったのでないでしょうか。
「踏み出す一歩」を促した言葉が彼にとっての「踏み出す一歩」…言葉でも、行動でも、能動的でも、受動的でも、働きかける事の意味はあるということが謳われている様に感じました。
…「ジェニファー」のシンボリズムについても書きたいとこですが、劇の感想でなくなりそうなので割愛するとしまして、劇自体は単純に面白かったので、NGPメンバーが出る出ないは別にして、是非、次回の演劇集団スプートニクスの公演も行ってみたいと思います。
最後に橋本愛奈さについてですが…そつなくこなしていたという印象です。コメディならコメディの、シリアスならシリアスの、抑揚があると思うのですが、その辺りで、もう少し遊んでみても良かった様な気もするのですが、彼女なりの解釈があったのかもしれません。まぁ、あまり無茶できない役でしたし。
個人的に友人からの誘いの劇団☆新感線の「蜉蝣峠」をスルーして、当日券で、もう一回行ったくらいなので、もう一度観てみたいと思わせるくらい面白かったのは間違いなかったです![]()