FX取引における損切りは、生き残るための「授業料」
FX取引を始めてから、ずっと心のどこかで引っかかっている言葉がある。それは「損切り＝悪」「損切り＝負け」という思い込みだ。
損切りをした瞬間、画面に表示されるマイナスの数字。その数字を見るたびに、自分の判断が否定されたような気がして、どこか悔しく、情けなく感じてしまう。
「もう少し待てば戻ったかもしれない」
「ここで切る必要はなかったのではないか」
そんな後悔が頭をよぎり、次のトレードにまで影を落とす。
しかし、冷静に考えればわかる。FX取引において、損切りは失敗ではない。むしろ、生き残るために必須の行為だ。どれだけ優れたトレーダーでも、勝率100％はあり得ない。
相場は常に不確実で、思惑通りに動かないことの方が圧倒的に多い。それでも長く市場に残り続けている人たちは、「負けない方法」ではなく、「致命傷を負わない方法」を知っている。
その中心にあるのが、損切りだ。頭では理解している。損切りは、相場に居続けるためのコスト。言い換えれば、生き残るための授業料だ。それなのに、感情はなかなか追いつかない。
損切りを避けたい気持ち、負けを認めたくない気持ちが、無意識のうちにルールを歪めてしまう。結果として、損失を小さく切るはずの場面で耐えてしまい、取り返しのつかない損失に発展する――そんな経験を何度もしてきた。
そこで、ひとつの実験を思いついた。
「損切り1万円チャレンジ」
やろうとしているのは、損切り1万円チャレンジだ。
内容はシンプルで、損切りを100円に設定したトレードを100回行う。合計の損切り額は1万円。
重要なのは、ただ適当にエントリーするのではない点だ。本来、利益を出すために使っている自分のトレードルールを、そのまま使う。環境認識、エントリー条件、損切り位置、利確の考え方――すべて通常通り。
違うのは、損切り幅だけを極端に小さくすること。100円という金額は、正直ほとんど痛みを感じない。だからこそ、「切る」という行為そのものに集中できる。
損切りした瞬間の感情、エントリーから損切りまでの思考、次のトレードへの影響。それらを一つひとつ観察する。このチャレンジの目的は、利益を出すことではない。勝率を上げることでもない。損切りに対する悪いイメージを壊すこと、ただそれだけだ。
100回も損切りを経験すれば、「損切り＝特別な出来事」ではなくなる。呼吸をするように、当たり前の行為になるはずだ。そして、「切ったから次に進める」「切ったから生き残れる」という感覚が、少しずつ身体に染み込んでいくのではないかと考えている。
この実験で起こる変化を検証したい
このチャレンジを通じて、自分にどんな変化が起こるのかを観察したい。
・エントリー時の恐怖は減るのか
・損切りをためらう場面は減るのか
・含み損を抱えたときの心理状態はどう変わるのか
・トレード後の後悔や自己否定は軽くなるのか
もしかすると、結果は地味かもしれない。劇的に勝てるようになるわけでもないだろう。それでも、相場に長く居続けるための土台が、少しずつ固まっていく気がしている。
損切りは「悪」ではない。
損切りは「負け」でもない。
それは、次のチャンスに進むための行為であり、未来の自分への投資だ。
この損切り1万円チャレンジは、
相場と向き合う前に、自分自身の思い込みと向き合うための実験なのかもしれない。
これから、この実験を通じて起こる変化を、記録し、検証していきたいと思う。