障害者の家族、これが毎日私を苦しめる。
いままで見てきた障害者が、今目の前に、家族として、切ってもきれない状況で立ちはだかる。自分のことでもないのに人生が終わったような気分。好き放題生きて、家族に数えきれない迷惑をかけてきた兄。それでも、それでも好きだった。兄が兄で良かったと。ある日突然単独事故を起こし、兄は兄ではなくなった。軸索損傷という脳へのダメージで兄だったそれは今では毛程にも、家族とは言えない存在へと変わった。事故当日、これから何が起こるか分からない私は好きだった兄の頭が陥没し目も覚まさない痛々しい様に、死んでしまうのではないかと、初めて直面した家族が死ぬという悲しみに、一晩中訳もわからず涙した。兄だったそれは、結局二週間寝たきりで、時発呼吸もできないほどにダメージを負っていた。目が覚めたときは親と涙を流して喜んだ。束の間の喜びだった。そこから一年と半年、兄の回復を待った。リハビリも懸命に頑張る姿に、早く良くなって欲しいと心から願った。だが何かがおかしいと感じ始めたのは、兄が言葉を少しずつ話せるようになってきた頃からだった。