闇夜の果て -2ページ目

闇夜の果て

そして僕は、何かを失う。

「…んー…」



何だか体が重い。

もうちょっと寝ていたい…。

あと5分…。


…寝 て い た い ?


僕はかばっと起き上がった。

見慣れた部屋。

此処は樺夜の家だ。


僕は携帯を見た。

もう日付が変わっている。

それどころか、もうお昼時だ。

今日は学校の日だ。

さぼってしまったという事になるのか…。


それより。

何で樺夜の家で寝ているんだ?

しかも…床に。

一体何していたんだっけ…?


昨日、学校に居るときに樺夜から「しくった」とのメールが来たんだ。

とても気になり、僕は樺夜の家に押し掛けた。

そして、水無月…かなこ?

水無月かなえ?

…とにかく、裏切り者の水無月の仕業だという事が分かる。

しかし、水無月の居場所は不明。


…そのあとの記憶が無い。

僕、何していたんだっけ?


着崩れた制服はそのままにして、樺夜の姿を探した。

ベッドの方に、赤い物体が見えた。

赤髪…樺夜だ。


「樺夜ー。樺夜ー」


「…んん~…あと5分」



…さっきの僕と同じ状況だ。

僕はテーブルにある新聞を丸め、それで樺夜の頭を殴った。



「ッ!何すんだ~…!」



不機嫌そうに樺夜が起き上がる。

僕と目が合うと、びっくりしたような表情を見せた。



「お前、帰ってなかったのか?」


「昨日、水無月の話をした後の記憶がない」



その言葉に樺夜は目をぱちくりさせる。

そしてクスクスと笑い出した。



「…お前、あの後酒飲んでただろ」


「お酒?」



そういえば…。


情報が手に入らないのが気に入らなくて、僕は冷蔵庫にあるお酒類を全部出してきた。

そして片っ端から飲みだした…ような気がする。

樺夜も一緒になって飲んで。

でも樺夜より僕の方が強い。

それをいいことに、調子に乗って飲みまくった。

そして、潰れた。



「あー…なんでお酒なんか飲んだんだろー?」


「お前は情報収集出来ないからな。自分に腹が立ったんじゃないか?」



二日酔いなのか…。

頭がずきずきする。



「とりあえず、水無月の事は情報収集班にでも頼んでおけばいい。他の仕事をやるしかない」


「…ほーい」



そして僕は床に倒れた。

その後、半日を床で過ごしてしまった、らしい。

「…で、水無月の居場所は?」



僕はテレビの電源を切る。

部屋に静寂が戻る。

樺夜はふうっと溜め息をついた。



「裏切り者とはいえ、奴は組織の人間だったんだぜ?そんな簡単に見つかる訳ない」


「そうだよね…」



樺夜はテーブルの上に置いてある煙草の箱に手を伸ばした。

一本を口にくわえ、ライターで火をつける。


殺人組織を裏切るだなんて、馬鹿な女。

その先にあるのは死だけというのは分かっているはず…。


…いや、殺されないあてでもあったのか?



「…そういやお前、今は授業中じゃねぇのか?」


「勝手に早退して来た」


「いいのか?真面目な生徒を振る舞っているお前が」



樺夜の一言にクスッと笑ってしまった。



「僕にとっては、学校よりも樺夜の方が大切だもの」


「…俺じゃなくて組織だろ?」



樺夜にずばっと言われてしまい、思わず苦笑する。

そんな事はないんだけどな。



僕にとってはどちらも欠かせない存在。

僕の代わりに復讐してくれた組織も。

僕を絶望のどん底から助け出してくれた樺夜も。

「お邪魔しまーす」



僕は靴を脱ぎ捨て、リビングに入る。


テレビの傍にあるソファに樺夜は座っていた。

煙草を口にくわえ、眉間にしわを寄せ、ニュースを見ている。



「しくったってどういうこと?」


「俺のツメが甘かったって事さ」



そう言って樺夜はテレビを指差した。



『昨日、バラバラにされている遺体が発見されました。○○山のふもとで人間の足が埋まっているのを住民が見つけ…』



有り得ない。

樺夜が山のふもとに死体を埋めていたのは知っていたけど。

そんなあっさり見つかる深さに埋めるはずも無い。

慎重な樺夜が埋めた死体が簡単に見つかる訳、無い。


それとも、樺夜が浅いところに埋めてしまったとでも言うのか?

いや…樺夜に限ってそんな事は。



「勿論、いつも通りに埋めたんだよね?」


「当たり前だ。それが俺の仕事だからな」



…なら。

怪しいのは、発見した住民。

埋まっていた死体を見つけたというなら、そこで土を掘り返していたという事になる。

何故、山のふもとなんかで土を掘り返していた?


樺夜は煙草を灰皿に押し付けた。

音も無く火が消える。



「…発見者の情報が欲しい。急いで調べて」


「もう調べた。厄介だぜ、これは」



樺夜はテーブルに置いてある分厚いファイルを僕に手渡した。



「…水無月加奈江?」



この名、どっかで聞いた事ような…。

僕がはっとしたと同時に樺夜が口を開く。



「当たり前だ。こいつは組織の裏切り者さ」



そう。

水無月加奈江は、ちょうど三日前に組織の金を持って逃げた裏切り者。

そして、僕たちの次のターゲット。