ヴォルク・ハンに1年遅れでリングスに参戦した元サンボ王者。

参戦したばかりの頃は、顔はおっさんで身体は普通のヘビー級の体型だったが、だんだん小太りになり、比例してスタミナもなくなっていった選手である。
ソ連時代のサンボの実績はヴォルク・ハンより上だったらしいが、リングスでは人気も戦績もハンには及ばなかったと思う。
とにかく初期リングスはプロレスであるため勝ったり負けたりを繰り返していたが、本当のセメントの強さをファンに見せつけたのはKOKトーナメントが始まった時からである。

衝撃だった。何?この人こんなに強いの?って。
KOKトーナメント1回戦はブラジルのカステロ・ブランコ。柔術世界選手権準優勝の実力者。
この人はわざわざ地球の裏側から来日して、このプロレス団体に上がったことを後悔しただろう。
結果は16秒、膝十字でコピィロフの一本勝ち。
スタンドから、右足を取ろうとグラウンドに持ち込み、いつの間に左足を決めているという見事な流れだった。ブランコはこの試合の負傷で引退を余儀なくされたとのこと。

2回戦はオランダのストライカー、リカルド・フィエート。どう見てもフィエートの方が強そうに見えるが、なんと8秒、アキレス腱固めで一本勝ち。そしてコピィロフはコメントも痺れる発言をしている。
記者の、なぜオープンフィンガーグローブをしないのか?の問いに、自分はサンビストだから必要ないと話した。カッコ良すぎる。

現在のMMAはバックボーンに関係なく、みんな同じことを練習する。ストライカーも寝技を練習し、グラップラーも立ち技を学ぶ。勝つためには大切なことだ。でもなんか違うんだよな。
昔は空手家は空手しかやらないし、柔道家は寝技で勝とうとして、個性が出ていて面白かった。自分の磨いた技術を信じて未知の他流試合に挑む緊張感、いわゆる異種格闘技戦の独特な雰囲気が好きだった。コピィロフはそんな昔の雰囲気を残した魅力的なグラップラーだった。

長期戦になるとスタミナがないから一方的な試合になるが、それでもKO負けやギブアップ負けにならない。ヒカルド・アローナ戦はあまりにも一方的過ぎて判定差が聞いたことない数字で笑いが起きるくらいだったが、打たれ強さや技術ではコピィロフ以上の選手はなかなかいないと思う。

ハンとはまた違った個性を持つ、いい味を出したおっさんだった。