フレッド・ブラッシー。

かなり古いレスラーではあるが、世界的なレジェンドレスラーであり、日本プロレス界に、果ては日本国民にヒールというものを見せつけ、大きな影響を与えたレスラーであるため、記事にしたいと思う。

力道山が連れて来たこの悪役レスラー。その力道山と闘うことで、日本国民のほとんどを憎しみと恐怖で支配してきた。
憎きアメリカ人が、国民的英雄の力道山を痛めつけるのだから当然だが、その最たる技は噛みつきだ。
ヤスリで歯を研ぐギミックと噛みつき攻撃は、当時の日本人にはあまりにも衝撃的だったんだろう。有名な話で、事実かどうかはわからないが、それを見た老人がショック死したらしい。

たが、このブラッシー。実は相当な親日家で紳士的な人物だったとのこと。街で荷物を持っている高齢者に手を貸してしまったりして、力道山は頭を悩ませたらしい。プロレスのヒールレスラーは、基本的に皆良い人が多いと言われるが、その典型である。人間、ギャップに弱い人が多いが、僕もその一人で、こんなエピソードを聞くとファンになってしまう。

プライベートではつい人の良さが出てしまうブラッシーだが、仕事では別。
インタビューでは自分の母親でも、リング上であれば噛み殺すと凄み、力道山が亡くなった時でも「あいつは地獄に落ちた」と答えた。ヒールの鏡である。

僕はもちろん、リアルタイムでのブラッシーの試合は知らない。テレビの特集やYouTubeで見ただけだ。現代のプロレスと比べるのはナンセンスだが、当然試合は技が少なく、動きも少ない。
だが、噛みつきをしているブラッシーは本当に気の狂った恐ろしいアメリカ人で、白黒映像の中で光る汗や血がより恐怖を引き立たせており、現代プロレスでは表現することができない迫力を作り出している。
そりゃ、プロレスやバイオレスに耐性のないピュアな日本人には衝撃だよな。

親日家なブラッシーは日本人と結婚したが、相手の親族は猛反対したらしい。そんな悪い人と結婚なんてとんでもないと。
現代の情報社会ではそんなことで反対する人がいたら笑うしかないが、昔の人はテレビで見るブラッシーが全てだ。
見ている視聴者の背筋を凍らせ、本気で嫌われたブラッシーを尊敬する。

ただ、猪木とアリが闘った時、アリ側のマネージャーだったのは、なぜ?と思った。
元レスラーなんだからプロレスの味方についてくれよ!と。

僕の頭が単純だったんだろう。