前田日明が旗揚げしたリングスにはたくさんの個性ある外国人選手がいたが、その中でも一番衝撃を受けた選手はヴォルク・ハンでほとんどのプロレス、格闘技ファンは一致するだろう。

ヴォルクはロシア語で狼を意味するらしいが、狼と言うよりマジシャンの方がしっくりくる。
ルックスも魔術師のようだし、かっこいい。

このサンビストの繰り出すあらゆるサブミッションは見たことのない複雑なもので、それらを様々な体勢から仕掛け、ギブアップを取っていた。
今改めて見ると、リングス後期のKOKトーナメントの時以外の試合はプロレスだったが、
それでもクロスヒールホールドやビクトル膝十字、首極め腕卍、フィッシュストレッチスリーパーなど、どれも必殺技として説得力があった。
ちなみに僕は技の名前はファイプロで覚えた。

ヴォルク・ハンはかなり頭の柔らかい人なんだろう。また、ハングリーでもあったと思う。
旧ソ連からずっと軍隊でサンボをやってきて、いきなり現れた日本人からのスカウトを受け来日し、恐らく見たこともないプロレスをやるのだ。多少の戸惑いはあったかもしれないけど、それをやることで金と名声が得られることは理解してたんだろうね。
だからリングスと前田には感謝しているんだろう。「私は前田の兵隊だ、彼から行けといわれたら私はどこへでも行く」のコメントは有名だし、痺れます。

ただ初めての前田戦は、変幻自在のサブミッションを披露していたが、試合途中、かなりぎこちない部分もあった。前田の大車輪キックを側頭部に受ける前は、かなり変な間があったことを覚えてる。

それでもインパクトは十分で、あっという間に客の呼べる選手になっていった。
だからWOW WOWも考えたんだろう。天井からリングを映すあの手法は、ヴォルク・ハンのサブミッションをより見やすくするために取り入れたんだと思う。

そしてこの人、なにが凄いって、祖国では実績のあるサンビストなだけあって、ガチでも相当強い。もう年齢的にも全盛期を過ぎたであろうKOKトーナメントのミノタウロとの試合。
判定負けではあったが、まだ若く、元気いっぱいのミノタウロとほぼ互角に渡り合った。
それだけで終わりじゃなく、試合後、サインを貰いに来たミノタウロに、いつか自分の弟子が君を倒すと言ったとか言わないとか。その弟子とはヒョードル。話が出来過ぎてるなぁ。

今でもヴォルク・ハンは僕の大好きな外国人選手ベスト10に入る。
相手の腕を掌底のような打撃で払い退けてから入る腕十字が、今も忘れられないな。