少し頭が禿げたド派手な衣装のおっさん。
マッチョマン、ランディ・サベージ。
子供の頃、新日に来日して、小島聡か誰かとの、ドームでの試合を見た。

つまらなかった。

派手なのはコスチュームだけで、技は地味に見え、危険な角度のスープレックスもない。

この頃すでに全日派だった自分は、危険な角度のバックドロップや投げ捨てジャーマン、垂直落下ブレーンバスターなどの応酬、いわゆる四天王プロレスに興奮していたため、新日の試合はころっとスリーカウントが入ってしまい、呆気なく感じていた。とは言え、スキャンダルの多い新日の方が本当は面白かったんだが。

話は逸れたが、とにかくサベージにはあまり興味を抱かなかった。アメリカではトップレスラーなのは知っていたが、そもそもアメリカンプロレスの中でもコテコテのアメリカンプロレスラー、四天王プロレスとは対極だ。

でも...数々の四天王プロレスの試合はうろ覚えなのだが、日米レスリングサミットのサベージvs天龍の試合は忘れることはできない。

この2人が試合したのは知っていたが、僕はリアルタイムでは見ていない。大人になってからYouTubeで見た。

めちゃくちゃ面白かった。はっきり言って四天王プロレスよりも。やはりサベージの技は地味で、出した技も少ない。投げ技なんかボディスラムくらいしかしてない。でも、客の盛り上がり、サベージに対しての憎しみが凄いのだ。そしてあの広い、プロレスの会場としては熱気が伝わりにくいドームで、観客の感情が爆発している。

それを作っているのはサベージだ。もちろん、天龍も超一流だが、この試合に関してはサベージが引っ張っている。

子供の頃は分からなかったが、プロレスは、危険な技を出さなくとも、入場、間合い、受け、アピールだけでも試合を作ることができる。サベージはプロレスのプロなのだ。
技らしい技などないと思ったが、なんてことはない、入場から始まり、退場までの全ての一連の動きが、サベージの技なのだ。

今でも、YouTubeでこの試合は見られると思うので、ぜひ見てほしいと思う。
コテコテのアメリカンプロレスのサベージと無骨なファイトの天龍が、まさかの名勝負となり、アナウンサーから観客までもプロに引き上げ、理想のプロレスの空間を創り上げているこの試合は必見である。

ターザン山本は、何かの雑誌で、天龍の数ある名勝負の中で、サベージ戦がベストマッチだろうと言っている。僕もそう思う。

ただ一つ残念だったのは、サベージの必殺技、ダイビングエルボードロップがこの試合では見られないこと。たぶん相手はノーダメージだが、しっかり、ダイナミックに当てているように見える職人芸のあの技。

でも、昔のレスラーは、自分の必殺技を、本当のフェイバリットホールドとして使っていた。
出したらスリーカウントで勝ちなので、負けることになっているこの試合には必要なかったんだろう。