先日出演したYouTube番組が前編・後編合わせ40万回再生を超えたそうです。

想像していたよりも多くの方に見ていただいたことに驚きつつ、大変ありがたく感じています。

 

 

番組内でもお話したのですが、不妊治療は「必ず妊娠する」という保証がない不確実な側面を持っています。1回の周期での妊娠率は、高くても約50%ほどと言われています(これは30歳前後の女性の体外受精での移植の際の妊娠率です)。

不妊治療は、勉強や仕事などのように患者さん自身が努力することで治療成績を必ず上げることができるとは限らない側面があり、自己コントロール感を失いやすい治療でもあります。

こういった点から、不妊治療中の心理的苦痛は、実はがん患者さんと同等レベルに達することもあり、さらに社会的なアイデンティティをも揺るがすことがあるのですが、あまり知られていません。

「妊娠を考えて転職や昇進を断念するか迷っている」

「新しいプロジェクトに参加するか悩んでいる」

「仕事をやめた方が良いのでは・・・」

 

という悩みを話してくださる女性患者さんはたくさんいますが、お子さんを望む男性がそういった発言をされることは少ないような印象があります。

妊娠出産は女性にしかできないことなので仕方がない面もありますが、女性の負担が大きいことは間違いありません。

また、保険適用がされたものの、体外受精などの生殖補助医療の治療費用はやはり高額です。先の見えない不安や経済的な負担に、お一人で悩んでいる方も多くいらっしゃいます。

だからこそ、パートナーも自分ごととして治療に参加してほしいと思っています。

「手伝う」「協力する」という言葉は、実は自分が主となってやることではない、という意識が透けて見えます。

 

不妊治療の先にある子育てにおいても同じことが言えます。

 

もしパートナーに

「子育ても家事も手伝うよ!」

と言われたら

「じゃあ、私も手伝うね!」

と言ってみましょう。

 

一体誰が中心でやるんだろう??

 

という疑問を感じていただけると思います。


また、私たちが不妊治療を行う際は、「妊娠の確率を上げる最適な治療」を提供するのがまず大前提であり、その上で患者さんの心のサポートを大切に考えています。
患者さん以上に、患者さんに妊娠してもらうことを目標にして治療を行うこと。

これが、医療者が不妊治療を自分ごととして行うことだと考えています。

 

そして、そのために大切なのは、意外かもしれませんが感情移入しすぎないことです。

 

治療期間が長くなると、患者さんとの関係も当然深くなっていきます。

どうしても、今回こそうまくいってほしい、という気持ちも強くなります。

 

YouTube番組で総合診療科の生坂先生もおっしゃっていましたが、患者さんに対して陽性感情を抱いているからゆえに、かえって診断や治療に悪影響を及ぼすことがあります。

 

本当は行った方が良い検査や治療だけど、痛みを伴うもの

 

こういったものを、患者さんに感情移入しすぎて適切なタイミングで提案できなくなることは、結果的に患者さんの不利益になってしまいます。


 

私たち医療者側の努力や配慮、工夫で回避できる負担はできる限りなくしつつ、 治療上、必要なことを適切なタイミングで実施していくことが医療者には求められると思っています。


同じ不妊治療をするなら、できる限り快適で心地よいものに、そして、できるなら妊娠への期待でわくわくして通院してほしい。

その期待を裏切らない治療を提供することを目標に日々診療していきたいと思います。

 

 

*外来で「人工授精ってどういう治療ですか?」とよく聞かれるのですが、不妊治療についての概要はYouTube動画後編でお伝えしています。

 

 

 

これから治療を考えている患者さんにとっては入門編になる内容ですので、ご覧いただければ幸いです。

 

YouTube「林修の本物の流儀」