ぼくは若い頃、体育の研究にも夢中になっていたの。

っていうのもね、先生方や保護者の方々からね、

「私は、運動が苦手だったから体育が嫌いだったのよ～。」

っていう声をたくさん聴いていたから。

だからね、全員が大好きになる体育を求めていたの。

絶対にそういう体育があるはずだって思っていた。

５年生の担任になり、子どもたちと様々なチャレンジをしながら３学期になり、体育で跳び箱をした時だったの。

ちょっとやってもらったらね、

跳び箱を飛べない子どもたちが多くてびっくりしたの。

「ええ～！前の学年までどんな体育をやってたんだよぉ。」

ちょっと実力をつけてきて天狗になっていたぼくは、正直、前の学年までの指導を責めた。

「おれが教えたらすぐに跳ばせられる！」

その頃には、跳び箱は全員に跳ばせることが出来るようになっていたものだから…。

そしてさらに、子どもたちに

「先生のお蔭で跳べました～！」

とか

「先生は教え方が上手です～！」

なんて言って欲しくてたまらないお年頃だったのよね。あは。

おれは素晴らしい先生だって思いたかったの。

いやぁ～若いなぁ～。

若気の至りだなぁ～。

それで、

子どもたちに教えてあげようって思った時にね、

（教えてあげようって、既に上から目線…）

ふと、ある思いがよぎったの。

その頃の自分の研究テーマが

『自信を持たせる』「意欲を高める」「自主性を伸ばす」

だったからね、

ぼくが教えたら跳べるようにはなるけど、

自主性が伸びるわけではないなぁ～って思ったの。

そこでね、子どもたちに集まってもらって問いかけたの。

「あのね、みんなにこれからやる跳び箱の授業のやり方を聴くね。」

「先生が教えると１時間で全員が跳べるようになるよ。」

「もう一つは、自分達で調べたり教え合ったりする方法。」

「みんなはどっちがいい？」

こんなふうに聴いたらね、満場一致で自分達でやりたいって。

ぼくが、

「時間がかかるよぉ～。」

って言っても、やらせてくださいって。

でね、

「あのぉ～、先生は何したらいいのぉ～？」

って聞いたらね、

「先生はその辺で休んだり見たり応援したりしてくださいね。」

だって。あはは。

でね、子どもたちはめっちゃやる気を出してがんばっているの。

得意な子は、自分の技にチャレンジした後で、一生懸命に教えているの。

苦手な子もね、笑顔でがんばっているの。

これがまた、教え方がうまいんだよねぇ。

「〇〇ちゃん、すごいよ！さっきより１センチお尻が前に着いたよ！」

「〇〇ちゃん、すっごぉ～い！前よりお尻が上にあがったよぉ～！」

ほんのちょっとしたことも見逃さないでほめているの。

真剣にやっているから、見る目も育ってくる。

去年は何回やっても跳べなくて泣いたんですって言う子も笑顔でがんばっている。

助走から踏切、着手、移動、着地って動きはリズムが大事なんだよね。

でね、子どもたちは天才だなぁって思ったのがね、

「いち、にぃ、さぁ～ん！」

ってかけ声をかけ始めたの。

そうしたらね、体が大きくて跳ぶのが難しそうな女の子がね、跳べたのよ～！

「わああああああああああ～！！！！！」

大歓声が上がったの。

別の跳び箱でチャレンジしていた子たちも集まってきたの。

「〇〇ちゃんが跳べたんだよぉ～！！」

ってうれしそうに叫んでる。

中には涙している子もいる。

それで、みんなの前でもう一回跳んで見せることになったの。

みんなもぼくも祈った。

絶対に跳ばせてあげてください！

タタタタタ、ダン、パン、ドン！

「やったぁああああああ～！！！！！」

またまた大歓声！

感動に包まれた、充実感、満足感が半端なくでっかい授業になった。

他の跳べなかった子どもたちもね、

次の時間には全員跳べるようになったの。

子どもたちは自信をつけていった。

自分達もやればできるって。

もっといろいろとやってみたいっていう意欲が出てきた。

だから、６年生を送る会などの行事にも積極的に取り組んでいったの。

ぼくは、

子どもたちのパワーと成長を目の当たりにすることになった。

ぼくはこの子どもたちから、とっても大切なことを学ばせてもらった。

人を育てるって容易なことじゃない。

時間をかけることで本当の力がつくんだなぁって思ったの。

それから、子どもたちって、外からは見えないけど、やる気がいっぱいあるんだなって思った。

だから、子どもたちを信じてチャレンジさせてあげるといいんだよね。

教えることは極々最小限にとどめてね。

失敗すらも実力と人間力を高めるのに大事だと思うといいね。

そうやって、子どもたちに自信をつけてやる気を高め、自主性を伸ばしてあげたいよね。

大人になった教え子と一緒にドライブ。いくつになってもふざけている…あは。

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