斉藤一
【前回のあらすじ】
周平の婚約者である春香とのことを知った沖田は、2人を祝福しながらも複雑な想いを抱き始める。そんな中、周平から春香と馬が合わないことなどを聞き、余計に心の整理をつけられずにいた。
※これは、「TV局中法度!」のドラマ、『誠ノ書』の番外編みたいなものだと思って下さい。
*今回の登場人物*
沖田総司 (阿久津慎太郎くん)
原田左之助 (近江陽一郎くん)
永倉新八 (池岡亮介くん)
武田観柳斎 (三津谷亮くん)
藤堂平助 (陣内将くん)
斉藤一 (山田裕貴くん)
山野八十八 (前山剛久くん)
馬越三郎 (大久保祥太郎くん)
北川春乃(オリジナルキャラ)
※ここでの沖田総司の一人称は「僕」です。
【誠ノ書~外伝~】
第3話 『恋文』
翌朝。
朝餉を済ませた後、自分の部屋へ戻ろうと縁側を通っていると、何やらまた裏庭の辺りから女人の甲高い声を耳にした。そのどこか恥ずかしげな声は、縁側に座り込んでいる山野さんと、馬越くんへと向けられており、お二人もそれを承知でたまに笑顔を振りまいている。
「相変わらず、凄い人気だなぁ…」
「ったくよぉ、」
「うわっ!びっくりしたぁー」
すぐ背後で声がして、慌てて振り返るとそこにいたのは、渋い顔をした左之助さんだった。
「何びびってんだよ、総司」
「突然、話しかけて来るんですもん。吃驚しますよ」
「そりゃ、すまん。にしても、あんな貧相な体つきのどこに魅力を感じてるんだろうな?あの女どもは」
「何度も言いますが、御二人とも剣の腕もお有りですし。何より、容姿端麗ですからね」
僕の肩に凭れ掛かりながら、気怠そうに言う左之助さんに苦笑する。
(この間、永倉さんと藤堂さんと一緒に、惣三郎さんのところへ行って懲りたって言ってたのに…)
そんなことを考えていたその時、「あれ?」と、いう左之助さんの声にふと我に返る。
「どうかしました?」
「いや、あの子。知らねぇなーと思ってさ」
「え?」
その視線の先、よく目を凝らして見るといつもの方々の中に見知らぬ女人が、後ろの方で控え目に俯いている。
「今度こそ、俺様を観に来たってとこか?」
「はいはい…」
得意げに言う左之助さんに適当に頷いて、その方に視線を戻すと今まで曇っていた顔がいっぺんに晴れて、満面の笑顔を浮かべている。
「もしかして、本当に左之助さんに?」
「間違いねぇ!やっと俺の魅力に気付いたらしい」
そう言いながら、肩を出そうとする左之助さんを慌てて制する。
「ちょ、だからって脱ぐことないじゃないですか!って…」
「あ?どうした総司…」
対面したのは、いつの間にか背後までやって来ていた斉藤さんだった。左之助さんも僕の視線を追ってその異様な雰囲気に気付く。
「……斉藤だ」
「おう、お前いつの間にそこに…」
「斉藤一だ」
「分かってるって。で、何か用か?」
「厠…」
「あっ、そう」
面倒そうな表情の左之助さんを横目に、僕らの間を通って歩み去る斉藤さんを見送ると、山野さんと馬越くんも、女人達に手を振りながらその場を去って行き、彼らが目当てだった彼女達もまた、早々にその場を去って行った。
そんな中、たった独りだけその場に残ってこちらを見やっている方に左之助さんが声を掛けた。
「おい、もうあいつらは行っちまったぜ」
「…………」
その方は、ただ顔を真っ赤にさせながら俯いているばかりでその声に答えようとしない。
「ってこたぁ、今度こそ俺目当てってことだな」
「本当にいい性格してますね…」
にやにやする左之助さんにいつもの突っ込みを入れて、改めて声を掛けてみる。
「あの、誰かに何か御用ですか?」
「……はい、あの…」
何かを言いたげにまた小さく息をつくと、その方は控え目に口を開いた。
・
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・
「えぇぇー!それ本当か?!」
藤堂さんの、素っ頓狂な声が部屋中に響き渡る。
驚かれるのも無理はない。
あれから数刻の後。
僕も左之助さんも、未だに驚いたまま引きずっているのだから。
物好きもいるもんだな。と、言って肩を鳴らす永倉さんに左之助さんが大きく頷く。
「そうなんだよな、てっきり総司か五人衆のうちの誰かに用があるのかと思いきや、斉藤にだってんだからな」
そうなのです。
自らを、北川春乃と名乗ったその方は、顔を真っ赤にさせたまま襟元から書簡のようなものを取り出して、ゆっくりと近づいた僕にそれを差し出し、たどたどしい口調で斎藤さんに渡して欲しいと仰られたのです。
「しかし、どこで知り合ったんだ?」
「それは分かりません。その書簡を受け取ってすぐに一礼してその場を去ってしまわれたので…」
永倉さんの問いかけに答えると、開け放たれたままの襖の先にある廊下から観柳斎さんが顔を出した。
「あーらみんなして集まっちゃってどうかしたの?」
「観柳斎さん…」
「ん、なになになぁーに?もしかして内緒な話?!」
観柳斎さんは、声をかけた僕のすぐ隣に腰を下ろすと、それぞれの顔を覗き込むように微笑んだ。
「お前、こういう時になると絶対に現れるよな?」
「やぁっぱりそういう話なのね!で、誰のどんな話しをしてたの?」
いつものように左之助さんに睨まれながらも、観柳斎さんは更にニンマリとした笑顔で僕の肩に甘えるように寄り添って来る。
どうせ、いつかはみんなにも知れ渡るだろうという結論により、観柳斎さんにも斉藤さんの話をした。その結果、あの観柳斎さんでさえ一瞬、固まって唖然とした表情を浮かべた。
「…普通なら、あり得ない話しよね」
「お前に恋文が届くのと同じくらいすげーことだよな?」
「筋肉馬鹿の左之助に言われたくないけど」
「何だとこらぁ!」
「もう、観柳斎さんも左之助さんも口喧嘩なら他所(よそ)でやって下さい!」
お二人を制していたその時、藤堂さんの小さく呟く声に誰もが口を噤(つぐ)んだ。斎藤さんが、一点を見つめたまま廊下の端に佇んでいたから。
「さ、斉藤さん…」
「……行く」
ぽつりと呟く斉藤さんを見上げたまま、次の動向を窺っていると斉藤さんは、「風呂」とだけ呟き、そのままゆっくりと歩みを進めた。次いで、その場からいなくなったことを確認する左之助さんの安堵の息を聞いた。
「ま、人の恋路なんてどーでもいいか…」
「まぁね。でも、どんな展開を迎えるのか気になるわよね」
左之助さんの言葉に笑顔で頷く観柳斎さんを見やり、僕は大きな溜息を漏らした。何故なら、その書簡は未だ僕が預かっているから。
一度は受け取って貰えたものの、しばらくしてくずかごの中からその書簡を見つけてしまい。もしも、斉藤さんへの恋文だったとしたら、いやその前に、ちゃんと読んだのかどうかも分からないまま。
春乃さんのはにかんだ微笑みを思い出して、僕は次あの方に会った時になんて言えば良いかなど、余計なことを考えてしまっていた。
【第4話へ続く】
~あとがき~
総司×周平の前に、斉藤も絡ませてみました(笑)
斉藤へ想いを寄せる人がいたとして、斉藤はどんな反応を見せるのか!?なんか、想像したらどんどん書きたくなってしまって。
総司×周平と同時進行でいってみまふ♪
( ´艸`)
にしても、全話観られたからか…彼らの行動がすぐに頭に浮かんできて♪書いてて、ほんまに楽しかったですww
完全に、自己満足な妄想世界ですけど
ここでは、なるべく局中法度では描かれなかった“恋愛”に対しても触れてみたいと思ってます。
今回も、お粗末様でした!!
(●´ω`●)ゞ
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