艶展での出展作品で、もっともやりがいがありました。


私は、勿論…

「満月」(十六夜の月も真ん丸なんですよね)、沖田総司を選びました。


素敵な図録は、もう観て頂けたと思いますが!


今回、ノーカット版でアップさせて頂きます!



「会いたいなぁ」


彼女の笑顔に癒されていた日々から、いったいどれ程の時が流れたことだろう。新撰組一番隊組長とて、昼夜を問わず働きずくめの沖田にとって唯一の癒しだった。


「そんなところで何をやっている」
「…月が綺麗だったので」


視線は夜空に向けたまま、土方の問いかけに答えると、肩に羽織が掛けられると同時に、「風邪引くなよ」と、いう柔和な声がして、沖田は背後に佇む土方を見上げた。


「子供じゃないのですから…」
「風が冷たくなってきた。病人は大人しく寝てろ」

そう言ってその場を立ち去る土方の背中を見送り、沖田はずれ落ちそうになる羽織を肩に引き寄せた。


彼女への想いを胸に抱きながら。



あれは、久方ぶりに土方らと島原を訪れた時のこと。藍屋の玄関先にて、先に屯所へ戻るという沖田を見送りたいという彼女から、思わぬ言葉を投げかけられたことがあった。それが明らかに己を想っての言葉だと気付きながらも、本心は言えぬまま。


「ということは、好きな人がいるのですか?」


そんな彼女の一言に沖田は、一瞬言い淀んだ。


本音を言えばそのような人などいるはずもなく。好いた人の想いを受け止められない歯痒さを抱えながらも、「はい」と、いつもの笑顔で答えると一礼し踵を返した。


後ろ髪を揺らしながら去ってゆく沖田の背中が涙でぼやける中、自分の名を呼ぶ優しい声を聞くと同時に、そっと差し出された手拭に気付く。


「秋斉さん…」


綺麗に折り畳まれたそれを受け取ると、彼女は秋斉の胸に飛び込むようにして、抑え込んでいた想いを溢れさせた。


「沖田さんに…振られちゃいました」
「酷な言い方かもしれへんけど、それでええ」


たちまち、その優しい温もりが冷えた彼女の心を癒し始める。


「新撰組として生きるあのお方には敵も多い。そやし、あんさんを傍に置くゆうことは余程の覚悟がいるゆうことや」
「分かっています。でも、それでも私は…」
「それに…」


秋斉は、彼女の乱れた髪を整えながらそっと呟いた。


沖田が彼女を受け入れられないもう一つの理由を。


「あんさんのことを本気で好いとるからこそ、添い遂げられへんもどかしさを抱えとる。その想いをどう理解し、受け入れるか」
「私、私は…」


あまりに残酷な真実を目の前に、はっきりとした答えを見出せないまま、彼女もまた厳しい現実に心を惑わされていた。


時折、夜風が沖田の乾いた咳を浚ってゆく。


(これでいい。今の私には、あの方を幸せにすることは出来ないのだから…)


月が紅く見え始めてからというもの、己が抱えた禍根を消し去ってくれる彼女の笑顔でさえ、もう目にすることは許されないのだと思うようになっていた。


「やはり私は…」

愛しい人を想いながらも、沖田は改めて新撰組隊士として生きようと心に誓った。


この命尽きぬ限り…



【藍空の 月の光にただ一目 相見し人の夢にし見ゆる】


(たった数回会っただけの貴方に恋をし、夢にまで見てしまうほど想いは募る)


彼女は、彼に想いを馳せ。



【かくばかり 恋つつあらずは愛刀の 姿纏いて死なましものを】


(これほど恋しくて、苦しい思いをするくらいならば、いっそ貴女を忘れてしまおう)


彼は、彼女への想いを胸の中へとしまいこんだ。

              



【完】



以上…です。


やっぱり、月テーマを頂いたら…

書かずにはいられない、沖田さんの切ない想い。


十六夜の月のショートバージョンという感じでもあります。


そして、ラストの和歌は…

以前、沖田さんとの物語、「恋文」からピックアップ。


文字数が決められていたので、数か所まとめました!


私、どうしても長くなる傾向にあったので…

この時期、とっても忙しくて不安だらけでしたが…


トライして、かなり鍛えられたような気がします!


参加させて貰って良かった…

正直、そう思いましたラブラブ!



そこで、もう…

私が描いたおっきたさんで申し訳ねーっすが…


何となくの…

主人公ちゃんのイメージ図としてw



幕末志士伝 ~もう一つの艶物語~-1386588974465.jpg


以前、描いた沖田さんを…


え、要らんかったって??


ヽ(;´ω`)ノ



それと、


昨日アップした絵の、眉と口元を書き直してみました。



幕末志士伝 ~もう一つの艶物語~-1386591494924.jpg

くどいようですが…

翔太くんではありまへんむふっ。



幕末志士伝 ~もう一つの艶物語~-1386490990818.jpg


↑これが、昨日アップしたものなのですが…


眉と口だけなのに、こうも表情が変わるんだなーって。


いやしかし…

たまにはお絵かきも楽しいっすー。



あー。

もっと、分かりやすく切ない想いを素敵に書けるようになりたいなぁ。


今、少しずつ…

俊太郎さま花エンド後を書いておりますっ。


俊太郎さんがまた秋斉さんのお店へ。その前に、翔太くんの案内で龍馬さんと沖田さんに会いに行くことに…


そこで、どんな話が聞けるのか。

私も主人公に成りきって(笑)

彼らにどんなことを言って貰いたいか、どんなことをして貰いたいかを考えながら書いてますw


なんか、最近…

沖田さん祭りしてますなw


(好きだから仕方がない)


これから、少しずつ年末に向けてあれこれ忙しくなるので、今のうちに暇を見つけてはちまちまと書いておりますw


相変わらずのマッタリではありますが…

また、良ければ更新の際は見守りに来てやって下さい音譜