【抗えない眼差し】



「今、どこで何をしているのかな…」


窓辺に佇み、夜風に髪を攫われながらぽっかりと浮かぶ月を見上げた。


あれから、どれくらいの月日が流れただろう…。どうしようもないほど恋しくなって、ふと、唇から想いが零れ出る。


「会いたいです…」

「俺にか?」

「え…?」

背後からの声にハッとなって振り返ると、そこには紛れも無く今、想いを馳せていた本人がおどけたような表情で私を見つめていた。


「た、た…高杉さん!」

「なんだ、その化け物を見るような目は…」


少し不機嫌そうに眉を顰めながら、襖に寄りかかっている高杉さんにゆっくりと近寄って、そっと左頬に触れてみる。


「…おい」

「本物だぁ…」


おいおいと、言いながらもその呆れ顔が苦笑へと変わり、いつものように窓辺に腰を下ろし、私を引き寄せそっと抱きしめてくれる。


その腕の中は温かくて、何より安心出来て。

少し肌蹴た襟元にそっと触れながら、温かい胸に頬を預けた。


「そろそろ、お前が寂しがっている頃だと思ってな」

「会いたかったです…とっても…」

「その言葉、嘘でも他の奴らの前で口にするなよ」

「…やきもち妬いてくれるんですか?」


妬く必要など無いだろう。と、言って更に私を強く抱きしめ、次いで、お前は俺だけを見ているのだからと、私の耳元で囁く。


ずっと聞きたかった優しい声。

ふわりとした息遣いが耳元を掠める度に肩を竦めるも、その何もかもを受け入れてしまう。


抗えない真実…。


それに、この人について行けたらきっと…


自分らしくいられる様な気がして。


もう二度と、この手を離したくない。でも、ぎゅっと抱きしめては、次第に離れ行く温もりを手繰り寄せることが出来ないまま。


高杉さんとの時間は、いつもあっという間に過ぎ去ってしまう。


「…ねぇ、高杉さん」

「なんだ」

「次、会えるのは…いつ頃ですか?」

「そんなに俺を待ち侘びていたのか」


不意に首筋に口付けを受け止め、肩を竦めながら小さな抵抗を試みる。


「……からかわないで下さい」


短くも長い沈黙。

私の頭上、小さな溜息が零れた。


「俺にも分からん。だが、俺が帰る場所は……お前の元だけだ」

「…っ…」

「と、伝えていなかったか?」

「聞いてませんよ!」


恥ずかしさと嬉しさとが綯交ぜとなり、思わず大声で抗議するもやっぱり高杉さんには敵わなくて。「すまん」と、楽しそうに笑いながら更に強く抱き寄せられる。


「翌朝、京を発つ」


当分、会えなくなるからわざわざ私のところへ足を運んでくれたのだろうか。


温かい膝の上でその端整な顔と息遣いを間近にしながら、なおも口を開く高杉さんの話に耳を傾けた。


数日前まで上海に行っていたらしく、そこで植民地とされる場所を自らの目に焼き付けると同時に、母国日本の未来を真剣に考えさせられたこと。帰国してからは、これまでの功績を称えられ、念願の奇兵隊総督の座を得たことなどを一喜一憂しながら聞いていた。


「凄いです!総督だなんて…」

「その分、京が遠くなるがな」

「ずっと待っていますから……いつか、私を迎えに来てくれる日まで」


一瞬、私を見つめる瞳が大きく揺れる。


「それまで、もっと芸も女も磨いておくんだな。この俺が思わず驚嘆の溜息を零すほどに…」


高杉さんは、いつものように口角を上げて悪戯っぽい笑みを浮かべると、私を強く抱きしめながら耳元で囁いた。


お前が欲しい、と。


そんな甘い言葉に、首を小さく横に振って懇願する。


「それなら、なるべく早く迎えに来て下さい…」

「…約束は出来んが、必ずお前のいる京を目指す」


その真剣な眼に頷いて、少し強引に奪われる唇から想いを受け止める。



“愛している”



お互いの唇から零れる甘い吐息。

畳みに背を受けて、いけないと思いながらも強く引き寄せてしまう。


高杉さんにこの身を預けたいと、心のどこかで望んでいたから…。


でも、その手が私の体に触れることは無く。


気が付けばまた、次第に離れ行く温もりを手繰り寄せようとしていた。


「そんな顔をするな」

「…っ……」

「歯止めが利かなくなる」


自分でも、どんな顔をしているのか良く分かる。

この温もりを失いたくないという気持ちを必死に抑え込むしかないことも、十分に理解しているつもりだ。


(また、会えなくなる。もしかしたら、もう二度と会えないかもしれない…)


「あ……」


額に口付けを落とされて間もなく。

その場を去ろうとする高杉さんを呼び止め、最後になるかもしれない言葉を伝える。


「必ず、私のところに戻って来て下さいね…」

「…お前はただ、俺を信じて待っていればいい」


余韻だけが残る中。


窓辺からその後ろ姿を見送って、一度も振り返ることなく去って行く高杉さんの背中を目に焼き付けながら、心の中で誓う。



───貴方だけを想い続けると。




【END】




゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚



あれから、調子ぶっこいて…

無謀にも、高杉さんに挑戦してみましたあせる



↓1回目に描いたのがこちら…



幕末志士伝 ~もう一つの艶物語~-未設定


でもなんか、どうしても…


何かが足りない!

ヽ(;´Д`)ノ

それはなんだ??なんて、思ってて…

で、気付いたのでふ汗
足りなかったのは、ある意味“抗えない眼差し”だとあせる


↓で、描き直したのがこちらあせる


幕末志士伝 ~もう一つの艶物語~


↓ちびっとだけ寄って…もう一枚あせる



幕末志士伝 ~もう一つの艶物語~-未設定



「俺を誘っているのか?」


と、でも言いたげな…悪そーな表情になっちまいましたがあせる


(そげな願望があったのだろうかw)


輪郭や髪型なども、多少書き直し…

眼と眉を少しだけシャープにしてみただけなのに、こんなにも表情が変わるものなんだなぁと、思ったりしてしゃきんっ


高杉さん√の後半…

金平糖をかじかじしながら、夢中で読んでしまったこと…。


花エンドになって、最後の台詞にきゅんきゅんしていた頃のことを想い出しながら描いてましたハート


で、やっぱり、絵を描いているうちに物語も浮かんできて今回は、高杉さんとの1シーンを短いですが書いちゃいました音譜


だけど、私が高杉さんとの物語を書く時、必ずって言っていいほど、“高杉さんが夜這いしにきて、主人公ちゃんが切ない想いを語る”みたいな展開になってるような涙



話は戻りますがっ。

やっぱり、「目は口ほどにものを言う」ってことですなキラキラ


まだまだ、顔の輪郭と目などのパーツの大きさが釣り合っていないようなガクリ(黒背景用)


今は、お手本を見ながらですが、いつかは私なりの彼らを描けるようになったらいいなぁ…なんて、思ったりしていましたニコ


あと、沖田さんを描いた時は鉛筆だったのですが、今回はシャープペンシルで挑んだ結果、鉛筆よりシャープな感じに仕上がるんだなぁ…などと思ったりニコ


今、短編ものや、沖田さん花エンド後を書きながらも、たまの気分転換にまた彼らを描いてみたいって思いました。



あと、もうじきGWがやってきますな!


うちは、パパがお仕事なのでどこかへ遠出するってことは無いのですが、僕ちんを連れて江戸巡りを考えておりまふにひひ


まず…

GW中には、「徳川家所縁の地」や、「坂本龍馬所縁の地」へ訪れるのもええかな?とラブラブ!


でもって、GW明けには…


今年こそ、日野の「新撰組祭り」と、再び日野宿本陣へ。で、去年は行けんかった土方歳三資料館などへれっつごーの予定ですキャー


皆さんはどんなふうに過ごす予定ですか?ニコニコ



『第16回ひの新撰組祭り』詳細

(↑こちらからどぞw)