今朝、起きてテレビをつけて地震のニュースに吃驚しました…。その地方に住んでらっしゃる方、また、そちらへ行ってらっしゃる方、大丈夫だったでしょうか?!
淡路島あたりで震度6とのことみたいですが、かなり広い範囲に影響があったみたいですね;
まだ続くだろう余震にお気を付けください!
そして、艶ギャラリーも大きな余震に見舞われることなく大成功しますように…。
【前回のあらすじ】
幕末時代へタイムスリップして間もなく、春香は沖田総司と出会い、沖田を狙う刺客との場面に居合わせてしまう。そんな沖田の殺陣を間近で感じると同時に圧巻させられた春香。その後、沖田に付き添われながら旅籠屋へ戻るも、自分の取った行動について翔太と真剣に話し合ったのだった。
※艶がのキャラは登場しますが、艶がとは別のオリジナル物語になっています。
【桜花舞う空を見上げて】
第4話 「新たなる想い」
あれから、お互いに休める日を話し合った結果、明日の正午に手合せの約束をしてそれぞれ課せられた仕事に戻った。急遽、庭の掃除を言い渡された私は、新しく用意されていた盆栽を植え直しながらも、考えることといえばやはり……
沖田さんとの一時だった。
沖田総司の剣は史実通りで、だからこそ、怖いという感情よりも一瞬さえも見逃したくないという感情の方が勝っていたのだろう。
(本当に凄かったなぁ…あの殺陣…)
無駄な動きは一切無く、全てにおいて相手の次の一手が見えていたようだったから。
やはり、彼は天才剣士だった。と、思ったその時、
「…大丈夫か?」
「え?」
ハッとして、声の方を見やると結城くんの少し心配そうな瞳と目が合う。
「なんか、心ここにあらずって感じだな」
「…ちょっと、いろいろ考えちゃって」
いつの間にか、やって来ていた結城くんに苦笑いを返して、止まっていた手を動かし始めた。
「正直な話、俺もこれからのことを考えると不安しかない…」
「結城くん…」
また手を止めて、伏し目がちな視線で話し始める結城くんを見つめ、すぐに視線を逸らす。
「なんか、ごめんね…」
「何が?」
「世間知らずな日本人が、外国旅行ではしゃいでて心無い外国人に襲われたような…そんな展開だよね、私がしていたのって…」
溜息交じりに伏し目がちに呟くと、視界の端に結城くんの足元が映り込み、下駄を履いてゆっくりとこちらに近づき、すぐ隣に腰を下ろす結城くんを横目に見やる。
「その例えはどうかと思うけど……確かにな」
「うっ、やっぱそうだよね…」
「でも、その気持ちは分かるよ」
「え?」
「君が新選組に憧れているように、俺も坂本龍馬や高杉晋作に憧れているからさ」
私の作業を手伝うように手を動かしながら、結城くんはその名を堂々と口にした。
「え、そうだったんだ!天然理心流だって聞いてたから、てっきり結城くんも新選組が好きなんだと思ってた…」
「親が天然理心流だから、俺もそのまま影響を受けたんだ」
「なるほど…」
結城くんの属する天然理心流と、私の属する北辰一刀流以外にも、一刀流系やその他を含めた数は、162種類もあり。
剣術だから、どの流派が一番かということは無いのだが、それぞれの持ち味を生かした流派に属することで己の技や心身を鍛え上げることが出来る。
私も、彼と同じように父親が北辰一刀流だったからそのままの流派を継いだのだけれど、玄武館では抜刀術や組太刀。その他、長刀術や、竹刀剣術などの指導を受けたこともあった。
抜刀術に関しては、中伝までなら取得している。
「凄いなぁ、中伝まで授かっていたとは…」
「よく、両親からは『女のくせにのめり込み過ぎだ』って、言われ続けていたけどね」
「その腕、侮れないな…」
「ふふ、明日は覚悟しておいてね」
微笑み合って、今度は結城くんが自慢げに天然理心流について語り出す。
「ちなみに流祖は、近藤内蔵之助長裕(こんどうくらのすけながひろ)。江戸で創始した剣術流派だ」
鹿島神道流からの伝系が書かれている伝書が残されているが、正しくは鹿島新当流だそうで、単なる字の間違いなのか他に意味があるのか分からないらしい。
剣術、柔術、棒術の独立した3つの伝系を有していたが、現在では剣術のみが継承されていて、剣術の体系の中には居合術や柔術も含まれており、これらは現代まで伝承されているのだそうだ。
「近藤勇を始め、土方歳三、沖田総司、井上源三郎らもこの流派なのは、」
「えっ?!」
「ん、どうした?」
不思議そうに小首を傾げる結城くんに、私は驚愕の色を隠せなかった。何故なら、新選組ファンにも関わらず彼らの流派までは知らなかったからだ。
「そ、そうだったの?!」
「まさか、知らなかったとか!?」
「知ってたら、絶対に天然理心流に入門していたのに…」
「…マジか?」
「あ、あはは…うん…」
(でも、どうして知らなかったんだろう…そんな大事なことを…)
少し呆気に取られたような表情の結城くんに苦笑しながらも、話の続きを促した。
「じゃあ、後に近藤勇もその立場を受け継ぐことになったことも知らなかった?」
「うん…」
「何代目かはよく分からないが、近藤もその後継を担っている」
近藤勇昌宜。
多摩郡上石原村で、宮川久次郎の三男として生まれ、幼名は勝五郎と名乗り。生来の資質が認められ、近藤周助のもとへ養子に入り近藤勇となった。
文久元年には、府中六所宮で四代目襲名披露の野試合を行ったことがあるらしい。
そして、14代将軍徳川家茂の上洛警護のため幕府が募った浪士組に、近藤勇以下試衛館の土方歳三、沖田総司、井上源三郎、山南敬助、永倉新八、原田佐之助、藤堂平助らと集った後、浪士組一行と共に京都へ向け出立した。
その後、京都に着いた試衛館の面々は、浪士組を離れて前川邸を屯所として新選組を結成し、幕末の京を舞台に大活躍することになるのだった。
「徳川幕府存続の為に、江戸から京へと上洛してからなら私も知ってる…かな…」
「それ以前の彼らを知らなかったとはね…」
「自分でも情けなく思う…」
今まで観て来たどのドラマや映画も、舞台は京都で。
池田屋事件などで、役者さんが斬り合うシーンばかりに目を奪われていたから。
そんなこれまでの自分の経緯を話すと、結城くんは更に呆れたような顔をしながら言った。
「なるほど、納得したよ」
「納得されるのも哀しいけど…」
「俺も、全ての史実に詳しい訳では無いんだけど、彼らが上洛したのは今年になってからのはずだ」
現在は、文久三年四月六日。
結城くんの話だと、数日前の京は何故か新選組などの警護が厳しかったらしい。
「現代へ戻って歴史書か、インターネットですぐにでも調べたいくらいだよ。今、京都で何が起こっているのか…そして、何が起ころうとしているのかを…」
「そうだよね…」
「ただ、小耳に挟んだんだが、どうやら勤王志士らの動きが活発になっているようだ」
「ということは、討幕派の人達が?」
「ああ…」
あとから知ることになるのだが、この頃。私達の知らないところで、勤王志士達による猛烈な将軍東帰反対運動が起っていたのだ。
将軍家茂は、幕府中心主義というよりも大義名分に服し。後見には一橋慶喜、越前の松平春嶽を補佐とする中、幕府の旧弊は着々として改革が断行された。
将軍自らが朝廷に奉仕することにより、国内の与論を鎮め、人々の心を安らかにするものとして勤王の志士達も、我が意を得ることが出来たことで大役を果たしたと思われた家茂だが、未だ攘夷との開港問題が滞ったままだった為、一刻も早く京を引き上げようと思っていた最中。
それを知った勤王志士達による、家茂帰府を阻止する為の運動が起こってしまう。
その活動にいきり立ったのが、桂小五郎(木戸孝允)、佐々木男也、高杉晋作、寺島忠三郎、野村和作、伊藤俊輔(伊藤博文)、品川弥二郎、横山主税、田中土佐等という幕末の獅子達だった。
一方、御用党である壬生浪士組の隊長・芹沢鴨や近藤勇等が人知れず活躍し始めた為、会津藩候である松平容保が討幕派と佐幕派との対立を鑑み、将軍直々に謁して東帰延期を進め中止させ、大騒動を未然に防ぐことが出来たのだった。
「とにかく、これから京都は更に危険に晒されることになる。十分に用心しなければ…」
結城くんの真剣な眼差しを受け止める。
「そうだね…」
「それに、もうじき徳川家茂の代は終わり、最後の将軍・徳川慶喜の時代が始まるはずだ…」
そう呟いた横顔がとても真剣で、私は一抹の不安を覚えながらも次の言葉を待つ。
「その徳川幕府の下で活躍することになった新選組を集結させたのは、実は敵である勤王志士だったって知ってた?」
「え、嘘!それも知らない…」
結城くんの問いかけに、首を横に振って驚愕した。
「確か、名前を清河八郎と言ったかな。しつこく打倒幕府を唱え続けた勤王志士の一人…」
「詳しいんだね、史実に…」
「親父が好きで詳しかったから、俺も影響を受けたのかも…」
打倒幕府を唱えるも、それらの計画がことごとく失敗に終わっていた清河は、敵であるはずの幕府に、身分を問わず、優秀な人材を集め、乱れた京都の治安を回復し、将軍家茂の上洛を警護する為の浪士組を結成したいとの建言状を提出する。
そして、“幕府に浪士組を結成させ、その浪士組を倒幕のために使おう”と試み、自分の手を汚さずに京都の治安を回復させたいという幕府の事情を読んだ結果、この計画を実行した。
尊皇攘夷を掲げる過激派らと対抗出来る、命知らずな剣客集団を求めていた幕府にとって、腕は立つが金策に喘いでいた近藤、芹沢一派が目に留まったのだった。
「討幕の為に集めた浪士達に攘夷論を述べたり、帰東させようとした清河だったが、攘夷論に反対していた近藤達は、その命令に背き京都に残ったのだそうだ」
「そうだったんだ…」
「もしも、近藤達がその攘夷論に賛成して帰東していたら、新選組はもっと違った集団になっていたかもしれないな」
(よく分からない部分も多々あるけれど、清河八郎って人が浪士を集めようとしなければ新選組は誕生していなかったかもしれないんだ…)
「尊皇攘夷の話題になったから話すけど。俺の記憶が確かなら、あの時代は、あ…いや、この時代は天皇よりも江戸幕府の将軍の方が権力を持っていて…」
結城くんが言うには、今から約10年前に黒船が来航して以来、外国人の言いなりになっているように見えた江戸幕府を非難し始めたのが尊皇攘夷派で、やはり天皇に任せることが一番だと唱え始めことが切っ掛けらしい。
その後も、彼らは朝廷にその意を伝えるが政治の場で破れてしまう。
朝廷は「公武合体(将軍と天皇が仲良くすること)」を考え始めていた中、自分達の立場を失うことに不安を感じた彼らは、将軍との戦いを好まないであろう天皇を誘拐してでも、自分達の気持ちを伝えなければならないと思うようになったのだそうだ。
「そうこうしているうちに、新選組ファンならずとも知っているだろうあの事件が起こってしまう」
「それって、池田屋事件?」
「ああ…」
元治元年六月五日。
祇園祭の宵山の最中に起こってしまった、世に言う池田屋事件。
勤王志士の一人、古高俊太郎を捕縛した新選組は自白を迫った後、長州藩士らの企てを未然に防いだとされている。
「で、古高奪還と共に、戦争を起こそうとした勤王志士達が相談する為に集まった場所が、池田屋だったって訳だ」
「うん…」
「ま、史実がどこまで正しいかは分からないけれど。それらの真実を、俺達は目の当たりにすることが出来るかもしれないんだよな…」
複雑な表情の結城くんに無言で頷き、改めて心の中で討幕派と佐幕派について考えてみた。現代でいうところの、政治家達がいろいろな党を立ち上げ、激論する。そんな感じだったのだろうか、と。
けれど、話し合いでけりがつかない場合は、武力行使で勝ち取ろうとするこの時代の人達。
戦争を知らず、ぬくぬくと育った日本人としてはとても考えられないことだが、彼らにとっては自分の思想や理想を貫くことは時に命懸けなんだ。
(もしも、私が彼らと同じ立場だったら…。どちらの味方につくだろう?)
そんな風に思った瞬間、結城くんが真剣な眼差しを浮かべ言った。
「俺だったら、迷わず討幕派につく」
「え…」
「坂本龍馬の影響もあるけれど、もしも史実通りなら彼らの理念を尊重しているから…」
「私も、同じことを考えてた…」
いずれも、自分の選んだ道が正しいと思って戦っている彼ら。こんなこと、深く考えたことが無かった私はどちらにつくかなんて、結城くんのようにはっきりと答えることが出来なかった。
でも、どちらか選ばなければならないのなら、佐幕派かもしれないことを伝えると、結城くんは少し困ったように微笑う。
「…そうか」
「どちらの味方にもなりたい…っていうのが、本音なんだけどね」
お互いに苦笑し合いながら、出来ればその歴史に触れてみたいという思いに駆られた。
何の因果かこの時代にやってきて戻る方法が見つけられずにいる今、不安は尽きないままだけれど、せっかく憧れていた偉人達が集うこの京都でこっそり生きていくなんて、勿体無い気がするから…。
だからと言って、この後どうすれば良いかなんて分からない。
でも、私はまた沖田さんの凛々しい殺陣型を思い出し、無謀にもその剣を間近で感じたいと思っていた。
【第5話へ続く】
~あとがき~
9日に息子の小学校入学式があり、二日間の付き添い登校を経て、昨日からスクールバス登校が始まって、最寄りのバス停への送迎が始まりました。
特別支援学校に通うことになったのですが、先生方も同じクラスの親御さんたちも、みんな笑顔の素敵な人ばかりで!同じような境遇の親御さんたちとのコミュニケーションは、特に大事にしていきたいって思いました。
あと、僕ちんも小学校を気に入ったみたいで!
相変わらず落ち着き無く動き回っていましたけど、いつも通りに楽しんでいたので一安心です。
これからがまた大変ですが、頑張り過ぎない程度に…周りのみんなと成長していけたらって改めて思いました。
でもって、「桜花舞う空を見つめて」も、やっと4話目に
なんか、今回は歴史の勉強みたいな感じになっちゃった(;´▽`A``
もう少ししたら、春香と翔太に運命的な出来事が起こる予定なのですが…そこまでが長いw
次回こそ、二人の手合せがあり…。
また新たな展開を迎えることに
今年は、仕事も忙しいし、僕ちんも以前より手がかかるようになってきたので、かなりなマッタリペースになると思いますが、良かったらまた更新の際はお付き合い下さい
まだまだ、寒暖の差が激しいし…花粉もしつこく飛んでるみたいなので
体調にだけは気を付けて(●´ω`●)ゞ