<艶が~る、二次小説>
翔太きゅんがもしも、新撰組に入隊していたら…なんていうのを想像してみました沖田さんや土方さんと共に剣を振り合う…なんて、本当ならあり得ない話ではありますが
これから本格的に続けていくということで、今回は再び、てふてふあげはさんから素敵な絵をお借りして、以前、書いたものを少し手直しして再UPしました
翔太くん目線で良かったら
゚.+:。(≧∇≦)ノ゚.+:。
【Shyouta Yuuki】#1
「翔太くん、肩の力を抜いてください」
「え…あ、はい!」
俺は間合いを置き、竹刀を振りかぶり沖田さんへと向かっていく。
「であぁぁ~!」
「脇が甘い!」
一喝され、一瞬足が止まる。
そして、沖田さんはもう一度間合いを置いて立ち止まる俺に微笑むと、手や足の位置などを確認してくれた。
「足の幅は、丁度肩幅くらい…そして、左手はただ添えるだけで良いです」
「あ、はい…」
「右手一本でも、相手は斬れますからね。それと、振りかぶり過ぎないこと…姿勢も良くしてください」
何度も言われていることだが、これがなかなか身につかない…。何かを直すと、何かが崩れる…これの繰り返しだった。
「まぁ、初めてにしては筋が良いと思いますけどね」
戸惑う俺に、沖田さんはにっこりと微笑む。
(やっぱ、これが現実なんだよなぁ…)
ここに来たばかりの頃は、やることなすこと滅茶苦茶で、着物や胴着を着るのにも時間がかかり大変な思いをしたけれど、あいつの事を気にしながらも俺は、なんとか少しずつこの生活に慣れていった。
けれど、今でもまだ信じられない…。
偶然とはいえこの俺が新選組に入隊し、隊士としてここにいるなんて…。
新選組隊士として入隊した日から、どれくらい経っただろうか。汗を拭う沖田さんの横顔を見つめながらあの頃のことを思い返してみる。
沖田さん達に追いかけられ、いつの間にかあいつと逸れてしまった俺は、しばらくの間、途方に暮れながら町を練り歩く中。とある屋敷の前に辿り着いていた。
それがここ、新選組屯所前だった。
(…これからどうしたらいいんだ…)
溜息をついて間もなく。目前の屋敷内から聞こえてくる男たちの声が気になり門をくぐると、玄関から小柄な男性が袴姿で現れた。
新選組二番隊組長、永倉新八さんだ。
「おい、お前…何者だ?」
彼は、制服姿のままの俺を見ながら厳しい顔つきで言い放った。
「あ、怪しい者じゃありません!お、俺…その、なんていうか…」
「……お前は」
慌てふためいていたその時。背後から聴こえた訝しげな声に振り返ると、俺達を捕まえようとしていた男達が俺を睨み付けていた。
(マ、マズイッ…)
「あれ、土方さん、こいつのこと知ってるのか?」
「ああ、そいつを追いかけていた。この格好……間違いない」
永倉さんの問いかけに答えると、土方さんは刀の鞘に手を置きながらじりじりとこちらに進み迫って来る。
「ま、待って下さい!」
俺は、とっさに両手の平を彼らに見せながら怪しい者ではないことを説明すると、土方さんの隣りで苦笑していた沖田さんも口を開いた。
「でも、逃げたってことは何か悪いことをしたってことですよね?」
「いや、そうじゃなくて…」
(……ん?待てよ…土方って…)
俺はその名前と、彼らの身に着けている羽織りをまじまじと見ながら頭をフル回転させて考えた。
(……もしかして、こいつら…)
「おい、何を考えている…」
今にも刀を抜きそうな土方さんを前に、俺は必死で言い訳を考える。
「あの、俺……故郷からこっちへ出てきたばかりで…その、ここはもしかして新撰組の屯所ですか?」
その言葉に、三人は一瞬呆気に取られた様だったが、すぐに沖田さんが俺に問いかけてきた。
「しんせんぐみ…とは?」
「えっ?」
(……新選組じゃないのか?)
彼らは、それぞれが何かを考えるようにしながらこちらを見つめていたが、永倉さんの“俺達のことを知らないのか?”とでも言いたげに俺の顔を覗き込む。
「うちは、壬生浪士組ってんだけど…なんでぇ、その“しんせんぐみ”ってのは…」
(…あっ、そうか…新撰組って名乗る前に確か、壬生浪士組って言われてたんだっけ。やっちまった…まだ、新撰組と改名する前だったのか…。でも、じゃあ…やっぱり、ここは新撰組屯所ってことになるな…)
そんなことを考え込んでいると、土方さんが腕組みしながら静かに呟いた。
「やはり怪しい」
「土方さん、顔が怖いですよ……あの、もしかして入隊したくてこちらへ出てこられたのですか?」
沖田さんに問いかけられ、俺は何故か『そうだ…』と、口走っていた。
「おお?そうだったのか。どうせなら、土方さんの小姓もやらねぇか?」
「新八、お前は口を閉じてろ…」
「へいへい…」
(…あいつが土方歳三。じゃ、隣りにいるのはもしかして沖田総司か?それに新八ってことは、この人が永倉新八…)
俺は、幕末志士のことを学校で勉強したばかりだった為、新撰組のことも多少は分かっているつもりだったが…。にわかには信じられない展開に頭を抱えていた。
「入隊許可を。同志が増えるのは頼もしいことです。剣の腕は分かりませんし、我らの規律について来られるかも分かりませんが…」
沖田さんに促されながらも土方さんは、まだ俺を睨み付けたまま、
「その容姿といい…髪の色といい、怪しすぎる…」
そう言って、切れ長の目を更に細める。
「マジで、いや…本当に怪しいものじゃない!だからその……お、俺をここに置いて貰えませんか?」
半ばやけくそ気味にそう言うと、土方さんは少しの間考え込み、不服そうな顔つきのままボソッと呟いた。
「…数日だけ様子を看よう。だが、少しでも変な真似をしたら命は無いと思え…いいな」
「……はい」
こうして、厳しい現実を受け止めると同時に、新選組隊士としての生活が始まってしまったのだった。
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「少し、休みましょう」
袈裟懸けの稽古をいったん中断し、俺達は縁側に出て座り込む。
「あれから、もう一月が経とうとしていますね…」
沖田さんが、感慨深げに呟いた。
(…もう、そんなに経とうとしているのか…)
「この短期間で剣の腕も上がりましたね」
「本当ですか?」
「初めてとは思えないほどの出来だと思いますよ」
さりげなく手ぬぐいを差し出され、お礼を言いながら受け取ると遠慮なく汗を拭かせてもらう。
「ありがとうございます。剣術がこんなにも難しいとは思わなかった…」
「基本を身につけておけばもう怖いもの無しですから、頑張って下さい。それと、」
沖田さんは何かを思い出したかのように口を開く。
「連れの方は見つかりましたか?」
「いえ、まだ…」
――あの日。
この時代にタイムスリップしたばかりで何が起こっているのか分からなかった頃。一番最初に出くわしたのが、この沖田さんと土方さんだった。
『……これが時代劇のセットじゃないっていうんなら、いったい何だっていうんだ?!』
『翔太くん、どうしよう……』
あいつの震える肩を抱き寄せながら辺りを見渡していた時、突然声を掛けられて。振り返ると、そこにはどこかで見慣れた青い羽織りを身に纏い、腰には二刀ずつ携えた侍らしき姿があった。
『何奴(なにやつ)……』
(えっ……??)
彼らは、鋭い眼差しで俺達を見つめながら尋問を繰り返す。
『その奇抜な装い……もしや偉人か?』
『え、いや違う!俺達はその…』
慌てふためく俺に鋭い視線を向けたまま、刀の鞘に置かれていた指がほんの少し動くのを見逃さなかった俺は、
「ヤバイ!逃げるぞ!!」
咄嗟に彼女の腕を取り、一目散に駆け出した。
『しょ、翔太くん!』
『とにかく逃げるんだ!』
彼らに追いかけられながら、必死に隠れ場所を探すが見つからず。その後、細長い路地裏を抜けて大通りに出て間もなく、いつの間にか離れてしまっていたお互いの手を手繰り寄せることが出来ないまま人混みに流され、
『う、嘘だろう…』
気が付けば俺は、あいつを見失たまま見知らぬ町に一人、呆然と立ち尽くしていたのだった。
これまでも、暇な時間を見つけてはあいつを探し回っていたのだけれど、いまだにその手がかりさえも見つけられずにいる。
(……いったい、どこにいるんだ……)
「いつか、会えると良いですね…」
「……はい」
また沖田さんの優しげな微笑みに励まされた丁度その時。
「稽古は終わったのか?」
背後から声がして二人で振り返ると、隊の制服を身に纏った土方さんが稽古場の入り口からこちらに歩いて来るのが見えた。
「いま、休憩中です」
沖田さんがそれに答えると、土方さんは俺を見下ろしながら、「隊服に着替えろ」と、呟く。
「えっ?」
「ついて来い」
「えええっ!?」
「いよいよですか。いってらっしゃい、翔太くん!」
沖田さんは苦笑しながらそう言うと、俺の背中をポンッと叩いた。
「ま、お前はただ、俺達の傍にいればいい」
(俺が……土方さん達と??)
鼻で笑う土方さんを見上げたまま呆然としていると、二人からまた急ぐように促され、急いで自分の部屋へ戻って隊服に袖をとおす。
「……いよいよかぁ…」
俺は、着なれない隊服に袖をとおしながら、期待と不安に胸を高鳴らせていた。
【#2へ続く】
イラスト:てふてふあげはさん
(↑素敵な絵に会えます♪)
~あとがき~
お粗末様でした
4月頃に、「イフシリーズ」翔太編、『Syouta Yuuki』#1を書いたきりでしたが、あれからもっと新選組のことに詳しくなった私としては、この続きが書きたくなってしまって
この続き、翔太きゅん目線で書き続けたいと思ってます
本編とは逆の立場……どないなるやら…。
今回も、遊びに来て下さってありがとうございました