<艶が~る、二次小説>
私なりの、高杉晋作様~鏡end後~のお話も、ようやく4話目ですその後の、主人公ちゃんと翔太くんは?そして、高杉さんとの逢瀬は叶うのか…。
駄文ではありますが…良かったらまたお付き合い下さい
※高杉さんの本編を読んでいない方や、鏡endを迎えていらっしゃらない方には完全にネタバレになりますので、ご注意くださいませ
【高杉晋作~鏡end後~】第4話
――翌朝。
誰かに胃を鷲掴みにされているような痛みを感じながら目を覚ました。
(……うぅ~、気持ち悪い…)
それでも、今までと違うのはお腹の中に赤ちゃんがいるということ。まだ信じられないけれど、確実に私の中で小さな命が息づいている。
「君も頑張ってるんだもんね。私も頑張らなきゃね……でも、」
三味線を見つめながら、高杉さんの笑顔を思い出す。
高杉さんがいてくれたらきっと、でかした!って、言って私を抱き寄せ強く抱きしめてくれただろう。
(また、ぎゅっと抱きしめられたい。愛を囁かれたいなぁ…)
気持ち悪さと寂しさから大きな溜息が漏れ、否応なしに現実が重く圧し掛かってくる中。
(もう、7時か……家から学校まで、歩いて30分。休み休み行ったらもっとかかってしまう…)
「…今日は行かなきゃ」
着替えを済ませ、机の上に置いてあった飴を口に含んで階下へと向かうと、心配そうな顔をした母と目が合った。
「おはよう」
「体調はどう?」
「昨日よりはいいよ。今日は行けそう…」
そう言いながら、ソファーで新聞を読んでいた父の隣に座り込む。
「ふぅ~……」
「大丈夫か?顔色が悪いぞ」
「大丈夫。これくらいで休んでなんていられないもん」
ソファーに背を預け、また深呼吸をして父に微笑んだ。
(そうだ…もしも、あの時代だったとしたらこんなふうに甘えてはいられなかったはずだし…。なにより、高杉さんの妻として強く生きていたはずだもんね…)
「でも、悪阻が酷くなったら無理しちゃ駄目よ」
「うん。なるべく無理をしないようにする」
「あとは、担任の杉田先生に話さないとね…」
「……うん」
それから、軽くトーストとコンソメ野菜スープを食べると、食欲が戻って来た私に安心した様子の母に見送られながら家を後にした。
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家を出た頃は軽かった体が徐々に重くなり、学校が近づくにつれ軽い吐き気に襲われ始める中。休みながらも何とか正門に辿り着いた私は、玄関を目前にその場に座り込んだままあと数歩が踏み出せずにいた。
「はぁ……あともう少しなのに…」
「おい、大丈夫か?!」
「あ、翔太くん…」
背後からいつもの優しい声がして振り返ると、翔太くんが心配そうな瞳と目が合う。
「ちょっと、疲れただけ…」
「疲れただけって、登校しただけで疲れるなんて。それに顔色が悪いぞ…」
「……そう?」
自分では分からなかったけれど、今のこの状態がそのまま顔に現れていたみたいで…私の荷物を持ち、手を差し伸べる彼に微笑んだ。
「あ、ありがとう…」
「このまま帰ったほうがいいんじゃないか?送って行こうか…」
「ううん、大丈夫。これくらいで休んでられないもん…」
「無理するなよ…」
翔太くんの腕を借りながら少しずつ歩き出す。
(翔太くんには…話さなきゃ……)
いつかは話さなければいけないことだし、相談したいと思っていたから。
「あのね、翔太くん…」
「ん?」
「話したいことがあるんだ。あとで、いつでもいいから聞いてくれるかな?」
「何だか分からないけど、後で聞くよ」
こちらに向けられる優しい眼差しを受け、今すぐ話したい衝動に駆られながらも保健室を目指したのだった。
「おはよう。あれ、どうしたの?」
保健室のドアを開けて間もなく、先生の優しい笑顔に迎えられる。
「すみません…ちょっと…また具合が悪くて」
すぐ傍にある椅子に座らされながら答えると、なぜか、学校に近づくごとに辛くなったことを告げた。
「じゃ、先生。こいつのこと頼みます」
「申し訳ないけど、杉田先生に伝えてくれる?彼女をここで預かっていることを」
「分かりました」
ベッドに横になる私を見届けると、翔太くんはそう言って教室へと戻って行った。先生は、私の額に手を触れながら静かに口を開く。
「大丈夫?」
「……はい…」
柔和な微笑みと目が合い、もう一度考えて。
「じつは……」
次の瞬間には、あのことを口にしていた。
一瞬、先生は驚愕の顔を見せたが、視線を逸らして小さく息を吐くとまた私を見つめながら微笑む。
「そうだったの……あの時の貧血は、そういうことだったのね」
「もう、妊娠二カ月目に入っているそうです…」
「ご両親はもう知っているの?」
「はい。産むことにも賛成してくれています…」
これまでの経緯を詳しく話すと、先生はすぐにノートに何かを書き始めた。そして、これからどうしていけば良いのかを話し合おうと言ってくれたのだった。
「まず、今の時期は赤ちゃんにとって結構大事な時期だから、なるべくストレスを溜めないようにすること。今、二カ月目ということは……予定日は来年の3月ね…」
「はい…」
先生が言うには、妊娠や出産の形は人それぞれで、何もかもが予定通りにいかないということ。そして、いろいろな事を念頭に準備をしておいたほうが良いと教えてくれた。
安定期に入るまで、悪阻も続くらしいし。安定期に入ってからも悪阻は続くかもしれないとのこと。
その悪阻の種類も三種類くらいあって、食べていさえすれば悪阻が軽く感じる食べ悪阻と、常に吐き気を感じて戻してしまう吐き悪阻。それから、食事などの時に空気を飲みこんで起こるゲップ悪阻に悩まされるかもしれないらしい。
「ゲップ悪阻なんていうのもあるんですね…」
「悪阻が全然無い人もいれば、入院しなければいけないほど重症な人もいるの。でも、悪阻があるってことは、お腹の中の赤ちゃんが元気な証拠だから、お母さんは我慢するしかないのよね…」
妊娠初期にみられる嘔吐、食欲不振は、大部分が全身状態に重大な影響を与えることなく自然治癒するらしい。このような症状を「つわり」といい、妊婦の50~80%にみられるそうだ。
これらの症状が悪化し食物摂取が困難となり、その状態が持続すると栄養障害・代謝障害をきたし、臓器障害や全身状態の悪化を招くこともあり、食物摂取が困難となり加療を要する状態になったものを妊娠悪阻といって、軽症のものも含めると妊婦の数%にみられる。
通常は妊娠5~6週から症状が出現し、妊娠12~16週ころまでには消失するそうだが、個人差があるらしい。
(…本当に大変なんだなぁ…子供を産むということは…)
思っていたよりも簡単にはいかないことを再認識させられると同時に、大きな不安が圧し掛かった。
「脅かすつもりは無かったんだけど、今のあなたは体も心も未熟だからしっかり勉強して正しい知識を得て貰いたいと思っているの」
「……はい」
「疲れたなぁと感じたら、すぐに体を休めること」
そう言いながら、先生はベージュのカーテンを閉じた。
先生が椅子に腰かける音がして、ふと、白いカーテンから見える青空を見上げ、ゆっくりと流れる羊雲を見つめながらこれからのことを考える。
棒高跳びでもしているのだろうか。運動場からは、一定の間隔で笛の音が聞こえる。時折、みんなの歓声も聞こえる中、
私は、いつの間にか深い眠りに誘われていた。
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(ん……ここは??)
真っ白な靄のようなものが消え去ると、私は一人見知らぬ部屋に佇んでいた。
(……どこだろう??)
部屋を見回して後ろを振り返ったその時。
開け放たれた襖の向こう、文机の前に胡坐をかいて書状らしきものを見つめる高杉さんの姿を見つけた。
「高杉さん!」
思わず声をかけたが、その声が届くことは無く。こちらの姿も気付いて貰えずにいる。
(これは、また夢の中……?)
「死して不朽の見込みあらば、いつでも死ぬべし……生きて大業の見込みあらば、いつでも生くべし…か」
「高杉…さん…」
書状らしきものを見つめながら、哀しげな表情で厳かに呟く高杉さんの傍にそっと寄りそう。
ふと覗いた書面には、難しい文面の最後に吉田松陰さんの名前が見てとれた。
(高杉さんの師。吉田松陰さんからの手紙……)
「貴方がいなければ、俺は……」
――安政六年。
藩命により萩に帰郷を命じられた高杉さんは、吉田松陰さんに書簡を送っていた。いずれ長州で会えることを楽しみにしながら…。
しかし、江戸を出発した高杉さんの耳に届いたのは、信頼なる師が処刑によってその命を落としたという訃報だった。
予期しなかった松陰さんの死に、悲しみと幕府への激しい怒りに打ち震えた高杉さんは、倒幕を心に誓い、歴史のうねりの中に自らの身を投じていく。
それからだった。師の遺志を継ぐために、高杉さんが死にもの狂いで戦うことになったのは…。
「死ぬ覚悟は出来ている。だが、」
(……っ……)
「ただ一つ……あいつのことだけが悔やまれる」
(高杉さん……)
消え入りそうな声で呟く高杉さんの痩せた頬に触れようと手を伸ばすが、スルリとすり抜けて触れることが出来ない……。
(高杉さんと一緒に居られて、とても幸せだったことを伝えたいのに……哀しんでいる高杉さんを抱きしめてあげることも出来ないなんて…)
「うっ…」
急に背中を丸めながら咳き込む高杉さんの背中を擦るようにして、必死に声を掛けるがそれも届かず…。私はただ、苦しげに息をしようとする彼を見つめることしか出来ずにいる。
(…もう、これ以上……)
「高杉さんを苦しめないで!!」
「…な、何?」
「えっ?!」
激しく咳き込みながらも辺りを見回す高杉さんを見つめ、私は首を傾げた。
まるで、こちらの声が聞こえたような反応だったから…。
「……気の…せいか……ふっ…幻聴を聞いてしまうほど…あいつに会いたい…とでもいうのか…俺は…」
(私の声が聴こえた?!)
口元を赤く染め、息も絶え絶えに呟く高杉さんを見つめる視界が涙でぼやけ始める。
「高杉さん!!」
零れ落ちる涙を拭う間もなく、まだ激しく咳き込んだままの高杉さんに一生懸命声を掛ける中。私を呼ぶ声に耳を澄ました次の瞬間、現実へと引き戻されていた――
「大丈夫?!」
「……えっ…」
目を覚ますと、保健室の真っ白な天井と心配そうな表情を浮かべる先生の顔が映りこんだ。
「うなされていたから、声を掛けたんだけど。怖い夢でも見てた?」
「はい…」
「……体調はどう?」
「眠ったら、少し楽になりました」
「もう、教室へ行けるかな…」
「はい」
「また、何かあったら無理せずにここへ来るのよ」
そう言うと、先生はゆっくりと立ち上がる私に微笑む。
それから、私は改めて先生にお礼を言って保健室を後にしたのだった。
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(あ、1限目は体育だったのか…)
誰もいない教室にたった一人。
窓の外を眺めながら、まだ運動場で動き回るみんなを見下ろす。
「……苦しそうだった…」
夢の中の苦しげな顔を思い出し、また泣かないように青い空を見上げた。
少しだけ涼しい風が耳元の髪を掠めていき、片手でこめかみのあたりを押さえ込む。
(…それでも、夢の中の高杉さんは私に会いたがってくれていた。せめて、夢の中で話すことが出来たら良いのに…)
想い人や亡くなった人が夢の中に現れるのは、自分の想いが強いからで。逆に、相手が自分を想っている場合にも夢に見ると聞いたことがある。
(…もしかしたら、私達のことが心配で……だから、頻繁に夢の中に現れるのだろうか…)
と、その時だった。
また、ふわりと肩に何かが触れたような感じがして、それが高杉さんの温もりだと気付くまで時間はかからなかった。
「……高杉さん?」
返事は無かった。
姿は見えなくても、声は聞こえなくても。
確実に傍で私を見守ってくれているような、そんな感じがして。
私は、その優しい温もりに包まれながらこの先、解決しなければいけない事柄について真剣に考えていた。
無事に、元気な赤ちゃんを産むために…。
【第5話へ続く】
~あとがき~
お粗末様どしたやっとこ、高杉さんの書けた
なんか、アメージングストーリーみたいな展開になってきたような(笑)今後、翔太くんと担任の先生らに真実を話し、共に協力し合いながら出産への道を歩き出した主人公ちゃん
ちなみに私は、悪阻が酷くて……死ぬかと思ったくらいどしたトイレで寝泊まり状態だったし
本当に、重症の場合は辛いんですよね…これが
これから、主人公ちゃん達はどうなっていくのか…。
あと、あの後…慶喜さんが来てくれたものの…高杉さんだけどうしても来てくれへんかった高杉さんのだけ無いなんてぇ
あれから、来てくれるのは、龍馬さん、土方さん、秋斉さん…。高杉さんに嫌われてるのか??と、思うほどでした
そして、次は…ずっと書いていなかった「イフ」シリーズの翔太きゅん編と、土方さん編も少しずつ手を入れて行こうかと。
「もしも、翔太きゅんが新選組隊士になっていたら」と、「もしも、土方さんが会社の上司だったら」って、覚えてらっしゃいますか?まだ、二次小説を書き始めたばかりの頃どしたが。
土方さん編は現代版で、#3で初めての拙い艶シーンを描き(笑)#2で、どうして沖田さんがバーのオーナーをすることになったか?という疑問を残したまま終わっていました。なので、その編を番外編としてこれからまた、二人のその後を描いていこうかと♪
あとは、幕末時代にタイムスリップして主人公ちゃんと逸れた後、本編とは逆に翔太きゅんが新選組入隊した設定の#1。土方さん達と町の巡回に行くことになった翔太きゅん!ってところで終わっていました。
発想の転換がどこまで続くのやら
今日も、遊びに来て下さってありがとうございました