<艶が~る、二次小説>
私なりの、高杉晋作~鏡end後~のお話も、ようやく第2話目ですその後の、主人公ちゃんと翔太くんは?そして、高杉さんとの逢瀬は叶うのか…。
駄文ではありますが…良かったら。
※高杉さんの本編を読んでいない方や、鏡endを迎えていらっしゃらない方には完全にネタバレになりますので、ご注意くださいませ
第1話
【高杉晋作~鏡end後~】第2話
あれから、数日が経ったある日のこと。
強い日差しと、生暖かい風に体力を奪われたのだろうか…それとも、早くも夏バテをしてしまったのか、保健体育の授業中に、突然、貧血のような症状に見舞われて、保健室へと運ばれていた。
「どう?調子は…」
「あ、もう…大丈夫そうです」
「ここへ運ばれた時、顔が土気色だったから吃驚したんだけど」
保健室の先生の優しい表情が、私に安心感をくれる。
「でも、授業中に貧血を起こすなんて珍しいわね」
「えっと、あの…今日の授業は、子供が出来るまで…という内容だったんですけど、赤ちゃんの生まれてくる映像を見ていたら…なんか、突然、目の前が真っ暗になっちゃって…」
そう言うと、彼女は苦笑しながら、「そういうことは、結構よくあることだ」と、言って女性の身体について詳しく話してくれた。
男と女が愛し合い、お互いを求め合って結ばれ…
その結果、手に出来るであろう宝物が、『子供』なのだ…と。
「だから、大好きな人の子供を産むということはとても素敵なことなのね。でも、誰にでも出来ると思ったら大間違いで、中には、子供を守る為に命がけで育て、出産する女性もいるし、産んだ後でさえも大変な日々が続く。だけど、その全てが、なにものにも変えられないほどの経験であり、喜びだと思うんだ」
「そうですね…でも、先生もまだ独身でしょ?」
私の問いかけに彼女は、「じつはそうなのよね」と、言って苦笑した。
「私も、早く結婚しなきゃ…でも、相手がねぇ」
「選り好みが激しいとか?」
「うーん、そうねぇ…確かに、それはあるかも…」
明後日の方向を向きながらそう言って、またこちらに向き直ると、ニヤッとした笑みを浮かべる。
「ところで、付き合っている人とかいるの?」
「えっ…」
ふと、高杉さんとの思い出が蘇った。
【愛している…】
一つの布団に枕を二つ並べ、私達は吐息が触れ合うくらい寄り添って温もりを与え合い、今までの想いを受け止め合った。
その時が初めてだった。
大好きな人の愛を受け止めたのは…。
【いつか、お前を抱けなくなっても……この世から消えて無くなったとしても…俺はお前だけを…】
……愛し続ける。
(高杉さん…)
「どうかした?また、具合でも悪い?」
「いえ、ちょっと…思い出したことがあって…」
彼女は、私の顔色を窺いながら真剣な眼差しで私を見つめる。
「思い出したこと?」
「いえ、何でもないです…」
「そう…また、何かあったら遠慮しないで相談しに来てね」
「…はい」
それから、休み時間を知らせるチャイムが鳴ると、私は先生に挨拶をして教室へ戻った。
廊下を歩き出し、別の教室で同じ保健体育の授業を受けていた男子達と合流すると、その中にいた翔太くんが心配そうな顔で隣に寄り添ってくれた。
「顔色が悪いけど、どうかしたのか?」
「あ、ちょっと授業中に貧血起こしちゃって…」
「貧血?もう大丈夫なのか?」
「まだ少し気持ち悪いけど、もう大丈夫だよ」
そう言って微笑む私に、彼は、「あまり無理をするなよ」と、言って微笑み返してくれる。
あの頃も、今も…
彼の優しい気遣いは変わらない。
そんな風に話しながら教室へ辿りついた私は、みんなから口々に声を掛けられる…。
「おお~、おかえり!もう、大丈夫なの?」
「うん、心配かけてごめんね…」
それぞれから、温かい言葉を投げかけられる度、その一つ一つに、「大丈夫、ありがとう」と、微笑み返した。
……と、その時。
休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴り、先生が教室へ入って来ると、次の授業が始まった。
先生は、私達にページを告げると、教科書をもとに尊皇攘夷論について話し始める。
「以前、幕府と新選組のことに関して勉強したが、今日は、彼らと敵対していた尊皇攘夷派のことについて勉強していくぞ」
そう言って、黒板に書き始めた先生の筆跡を見ていると、少し離れた場所で苦笑する翔太くんと目が合い、私も同じように苦笑しながら無言の会話を交わし合う。
(私達だけは、身を以て体験してきたんだもんね…)
徳川幕府や、新選組などのことを勉強したのは修学旅行前だった。
だから、私達がタイムスリップしてすぐに、土方さんや沖田さんに出会った時、その隊服を見て、私も翔太くんも、もしや?と、思ったことがあった。
今、考えてみれば、本当に不思議な体験をしたと思う。
絶対に、出会うはずのない幕末の志士達と出会い、生活して来たのだから…。
「尊王攘夷論とは、天皇の伝統的権威を尊ぶ崇拝思想「尊王論」と、外国人を排斥する思想「攘夷論」が結びついた政治理論のことを言う。もともとは、尊王論も攘夷論も、ともに封建思想であり、江戸時代を通じて存在していたのだが、幕末になり、度重なる外圧によって両者が一体化したんだな。特に、」
1858年の日米修好通商条約で、勅許を得ないまま条約調印を強行した大老『井伊直弼』の行動は、尊王にも攘夷にも反するとして激しい批判を受けた。
その結果、1860年には「桜田門外の変」で井伊直弼が暗殺されたほか、アメリカ総領事ハリスの通訳ヒュースケンも江戸で暗殺され、翌年、イギリス仮公使館が襲われるなど、攘夷運動が激しくなってきたのだそうだ。
やがて、長州藩の下級武士を中心とした尊王攘夷派は、尊王攘夷運動を討幕運動に発展させて、明治維新に導びかれる。けれど、尊王論も攘夷論も、本来、鎖国や幕藩体制の維持のためのものであり、討幕を目指すような性格を持つものでは無かった。
外国からの圧迫という危機によって両者が結びつき、紆余曲折を経て、討幕運動という予期せぬものに発展していったのだった。
龍馬さんや、高杉さん達が活躍したのは、丁度この頃だろう。
(あの時代で、高杉さん達に出会っていなければこんな難しいことを聞いても、意味が分からなかっただろうな・・・)
ノートに書き留める必要が無いほど、直に彼らの生き方を学んできた。
それは、一生忘れられない記憶の一つだった。
その後も、まだ少し気持ち悪さが残る中、なんとかその日の授業を終えた私は、部活を休んで真っ直ぐ家へと向かって歩き出した。
夕暮れとはいえ、じりじりと照りつける太陽の下。
自動販売機でスポーツドリンクを買って、それを口にしながら休み休み歩く。
「ふぅ…家までが遠いなぁ…もしかして、熱中症にでもなっちゃったのかな…」
軽い吐き気を伴いながらもやっとの思いで家にたどり着くと、夕飯の支度をしていた母に今日一日のことを話し、自分の部屋へ行って横になった。
「はぁ~…」
薄れゆく意識の中で、枕元の三味線がぼやけ始める。
(…高杉…さん…)
この蒸し暑い中、歩いてきたからだろう。
私は、すぐに深い眠りに誘われた。
(この音は……波の音?)
やがて、真っ暗な視界の中で、さざめく波の音が聞こえ始め、そっと目蓋を開けると、朝焼けのオレンジに染められた雄大な海が見え始める。
ここは、いつか高杉さんと訪れた…あの海に違いない。
あの日、私達は先に旅立つ龍馬さんと翔太くんを見送る前に、ここを訪れていた。
『おお~、ここがおまんが言っちょった秘密の場所か』
『そうだ。いいところだろう』
朝日を眩しそうに見つめながら、高杉さんと龍馬さんは浪間の方へと歩き出し、私と翔太くんは彼らの後ろ姿をしばらくの間、見つめながらこれからのことを話し合っていた…。
だからこの時、高杉さん達がどんな話をしていたのかは分からないままだったのだけれど、なぜか、二人の話し声が聞こえてきて、もう一人の私が、彼らの傍でその様子を窺っていることに気が付いた。
(これは…夢、なんだ…)
『高杉…』
『なんだ…』
『あの子に、ゆうたがか?』
『……まだだ』
(きっと、労咳のことだろう…)
私は、胸が締め付けられるような感触を受けながらも、彼らを見守った。
『このわしにも隠そうとしたくらいじゃからのう…。こがなことゆうても、おんしは素直に耳を傾けんじゃろうが、あの子の為にも、まずは身体を治すことが先決じゃ…』
『……余計なお世話だ。今、俺がいなくなったらお前らが困るだろう』
高杉さんの言葉に、龍馬さんは一瞬、俯いてまた静かに口を開く。
『確かにわしらには、おんしが必要じゃ。けんど、消えかかっちゅう命じゃいうのを見過ごすわけにゃいかんちや。あの子にとっても、おんしの代わりはおらんのやき』
『……何を言っているんだお前は』
『高杉、命を粗末にしちゃあいかんぜよ』
その龍馬さんの言葉に、高杉さんは黙り込むと、遠く離れた私と翔太くんのほうを見やった。
……次の瞬間。
「高杉さんっ!」
ふと、重たい目蓋を開けてすぐ、布団から飛び起きた。
「あ…やっぱり…夢、だったんだよね…」
(高杉さん…あの頃から、もう悩んでいたんだ…)
でも、あんなにリアルな夢は久しぶりだ。
波の音や、朝日の眩しさ。
時に激しく吹く潮風に髪を擽られ、彼らの話声もはっきりと聞こえるなんて…。
「入るわよ?」
ドアがゆっくりと開くと同時に、少し心配そうな顔をした母がゆっくりと部屋へ入ってきた。
「具合はどう?」
「うん、さっきよりは良いかな…でも、胃が気持ち悪いままなんだよね…」
「風邪でも引いたのかしらね…夕飯、食べられそう?それとも、お粥とか作ろうか?」
「あ、久しぶりにお粥食べたいかも…」
そう言うと、母はにこっと笑って部屋を後にした。
(…高杉さん)
枕元の三味線を見つめながら、思うことはやっぱり…高杉さんのことで。
あの凛々しい眼差しと、低く呟いた声が蘇る…。
「やっぱり、高杉さんに会いたい…」
思わず呟いたその言葉に答えるかのように、何故か指が弦に触れて音を奏でた。
(…えっ…今の…)
不意に何かに引き寄せられたような不思議な感覚に、一瞬、戸惑い思わずその場を見回してみる。
(もしかしたら、高杉さんが傍にいるのかもしれない…)
「…高杉さん?」
何年か前に、死んでしまった恋人が幽霊になって傍にいてくれたと、いう映画があったけれど、それはフィクションの世界のお話で、現実にはあり得ないことだ。
それに、高杉さんなら…もう、とっくに誰かに生まれ変わって、新たな人生を生きているに違いない。
何故か、そんな風に思って一人苦笑してみる。
「お粥、もうすぐ出来るから、下へ降りてらっしゃあい」
「はぁい!今、いきまぁす」
それから階下へ降りていくと、相撲中継を観ながら夕飯を食べていた父と目が合った。
「大丈夫か?」
「うん、まだ少し気持ち悪いけど…うっ…なにこの匂い…」
不意に、気持ち悪さが増して思わず鼻をつまんで後ずさると、二人は不思議そうな顔で私を見た。
「何って、あんたの好きな肉じゃがじゃない…」
「本当に、大丈夫か?」
「…やっぱ、風邪が胃に来てるのかな」
(大好きな肉じゃがの匂いまで嫌いになってしまうなんて…これは重症だなぁ。)
「お粥だけ食べて、早く薬を飲んだほうがいいわね…」
母は、そういうと、「何がいいかしら…」と、呟きながら、薬の入った箱を持ってきて探し始める。
「なんか、もう…食べられない…」
「えっ…本当に大丈夫か?熱はあるのか…」
「熱は無さそうなんだけど…」
父にも一応、熱も測っておいたほうがいいと言われ、すぐに測ってみたけれど熱は無く、やはり、胃が気持ち悪いだけだ…。
「胃薬のほうがいいかしら?」
とりあえず、手渡された胃薬を飲み、その後、お風呂にも入ることも出来ないまま、私はまた自分の部屋へと戻って行ったのだった。
(これで、少しは良くなるかな…)
せめて、シャワーだけでもと思ったけれど、それさえも面倒になるくらいの倦怠感に襲われ…また、ベッドに横になり、三味線に触れた。
「さっきの夢の続き、見られたら嬉しいなぁ…」
やがて、またやってきたダルさと共に、深い眠りに誘われていく。
……この時の私は、まだ知らなかった。
私の前に、大きな壁が立ちはだかっていたことを…。
~あとがき~
もう、皆さん、分かっている方ばかりだろうと思いますが、彼女も宝物を手に入れようとしています。
愛する人との宝物を…。
そして、今後…どのような展開を見せるのか…。
じつは、これ…私の実体験だったりしますw 保険体育の授業中、赤ちゃんが生まれる写真を見て、急に貧血を起こしてしまって、保健室へ運ばれました(苦笑)
その時の、映像がかなりリアルだったので
また、マッタリ更新ですが…良かったら、この続きも読みに来てやってくださいませ
今回も、遊びに来て下さってありがとうございました