<艶が~る、二次小説>
3月19日に第3話を書いて以来、滞ったまま完全オリジナル話につき、その難しさにかまけておりました
今回から、ようやく秋斉さん以外の旦那様たちも登場しつつあります
新キャラの、北村隼人がどのように春香(今回は名前をつけさせていただいてます)と関わってくるのか、艶旦那様たちの展開はどのようになるのか…。こげな駄文でも、続きを…という声をいただいていたので、続けていきたいと思いますどちらかというと今回からは、ドラマなんかの時代劇っぽい感じになっていくかと思います
今回も、良かったら読んでやってくださいませ
あの夜から、一週間ほど経ったある日の午後。
いつものように、番頭さんからお使いを頼まれて、薬屋さんへ足を運んだ時のこと。
いつも笑顔で迎えてくれる旦那さんが、その笑顔を曇らせ悲痛な顔を見せていた。
「どうかなさったんですか?」
「いえ…なんも…」
旦那さんは、悲痛な面持ちのまま私に薬を手渡すと、「毎度おおきに」と、言ってぎこちない笑顔を見せた。
私は、その様子が気になりつつも、旦那さんに挨拶をしてお店を後にすると、すぐに駆け足で通り過ぎていくお役人の方々とすれ違った。
(…何かあったのかな?)
何か、一抹の不安を覚えながらも、来た道を戻り始めて間もなく。
一条戸橋付近を通りかかった私は、大勢の人だかりと一緒に、新選組隊士の姿を見つける。
(あれは、沖田さんと土方さん…永倉さんや原田さん、藤堂さんまで…)
「あ、春香さん…」
沖田さんは、少し険しい顔つきのままこちらへ駆け寄って来た。
「お使いですか?」
「あ、はい…三間堂さんまで薬を買いに行っていました」
「三間堂まで?」
沖田さんの端整な眉が顰められ、細められた瞳が哀しげに揺れた。
「あの、何かあったのですか?」
「…三間堂に嫁がれたばかりの奥方が、あの戸橋の袂でお亡くなりになっていたのです…」
「えっ!お悠さんが…それ、本当ですか?」
お悠さんは、いつもお世話になっている和菓子屋さんの一人娘で、先ほど薬を買った三間堂さんの若旦那である、勇太郎さんと結納を済ませたばかりだった。
その、お悠さんが…どうして?
「少しだけ、ここで待っていて下さい」
沖田さんは、私にそう言って踵を返すと、土方さん達のいる場所へ行き何かを話すようにして、またこちらへ戻ってきた。
「もう、お使いは済んだのですか?」
「…はい」
「それなら、私が置屋までお送りします。最近、若い女人が襲われる事件が多いので…」
「そう…だったんですか?」
「ええ、とりあえず参りましょう」
こちらを見ている土方さん達にお辞儀をして、ゆっくりと歩き出す沖田さんの少し後ろをついて行くと、すれ違う人たちのひそひそ話が耳に飛び込んできた。
「この間も、若くて綺麗な人やったよね?」
「今回のお悠はんもそうや。勇太郎はんと夫婦になったばかりやいうのに…」
(旦那さん…だから、元気が無かったんだ…それなのに私…)
「春香さん」
「え、あ…何でしょう?」
「何を考えているのですか?」
沖田さんは、私の顔を覗き込むようにして尋ねると、いつものように微笑んだ。
「……お悠さんは?」
「私たちが駆けつけた時にはもう、お悠さんの亡骸は三間堂さんに引き取られていました…」
「そうですか…」
「これで、二人目です。お二人とも、胴を横一文字に一刀されている…その手口が一緒なことから、同一犯によるものかと…」
「まだ、犯人は捕まっていないんですね」
「はい、残念ながら…」
怖くなった私は思わず、沖田さんの隊服の袖を掴むと、それに気が付いた沖田さんが私の手を取って微笑んでくれた。
「怖いですか?」
「…少し」
「私がついていますから、大丈夫ですよ」
「ありがとうございます…」
意外と大きな沖田さんの手に包み込まれながら、置屋への長い道のりを目指して歩いた。
それから、やっとの思いで置屋へ辿り着くと、玄関先には慶喜さんと秋斉さんの姿があった。
「お帰り、春香」
「慶喜さん、どうしてここに?」
「ちょっと、秋斉に用事があってね。沖田くんが一緒だったのなら安心だ」
慶喜さんは、いつもの微笑みを見せると、ふぅ~と、溜息を洩らした。
「私は、春香さんを一条戸橋付近で見かけたので、お送りしたまで。それまでは、お一人だった…」
「えっ!」
沖田さんの言葉に、慶喜さんは目を見開いて驚くと同時に、咥えていた煙管を落としそうになりながら、秋斉さんを睨みつけた。
「おいおい、この子を一人でお使いにやったのか?」
「頼んだ番頭が、今回のことを知れへんかったんや」
「これからはこの子に限らず、しばらくの間は一人で外出させないほうがいい…」
そう言いながら、慶喜さんはゆっくりとこちらに近づいてくると、そっと私を包み込んだ。
「何やら、可愛い子が狙われていると聞いた…これから置屋を離れる時は、絶対に一人になっちゃいけないよ」
「…はい。これからは、気を付けます」
「うん、いい子だ」
秋斉さんは、少し呆れ顔で慶喜さんを見ていたけれど、すぐに真剣な眼差しを浮かべると沖田さんに問いかけた。
「ところで、今回も同じ手口やったようやね?」
「はい…胴を横一文字にバッサリと。かなり、腕の立つ人物による犯行かと思われます」
「さようか…」
「それも、二人とも結納を交わしたばかりの若い女ときたもんだ…」
慶喜さんはまた、秋斉さんの隣に腰掛けながら静かに口を開くと、秋斉さんと沖田さんも、神妙な顔つきで何かを考え込むようにして真剣な表情を浮かべた。
……と、その時。
「お邪魔致します」と、いう威勢の良い声に全員で振り返ると、一週間前に出会ったばかりの北村隼人さんが柔和な笑顔を浮かべていた。
「あんさんは…」
「はい、加瀬様の下で見習いをさせて頂いている、北村です。旦那様から、頼まれて新しい盆栽をお届けに上がりました」
(…あ、この人は……)
「こんにちは。春香…さん、でしたよね?」
「は、はい…」
間近で北村さんの瞳を見つめた途端、その背後に鬱蒼とした森が広がるのが見えると同時に、胸がぎゅっと締め付けられるような痛みを感じて、私は思わずその場に座り込んだ。
「春香!」
「春香さん!」
慶喜さんと沖田さんの声がして、私はそれに答えようと何かを言い返そうとするが、あまりの息苦しさに、深呼吸を繰り返すことしか出来ずにいる…。
「はぁ…はぁ…うっ…」
「あ、あの…」
「慶喜はん、すまないが春香はんをわての部屋へ。沖田はんは、医者を呼んで来ておくれやす」
「はい!」
北村さんの戸惑うような声と、秋斉さんの少し怒鳴るような声、そして、薄らと視界がぼやける中、沖田さんの走り去る姿が見えた。
そして、慶喜さんに抱きかかえられたまま、私は完全に意識を失っていった…。
~あとがき~
やっとこ、秋斉さん以外の旦那さまが登場し、今回は…いわゆる、ちょっとした不思議話に挑戦です
幕府・新選組とは敵同士である、勤王志士たちも、その身を隠しながら、主人公の為に一致団結し合って見えない敵と戦うことになるかと…。
どちらかというと、土方さんは永井大くん、沖田さんは辻本祐樹くんを意識しちゃいました慶喜さんと秋斉さんは誰も浮かばず
艶がキャラがドラマ化されたら…誰に演じて貰いたいかなぁ
そして、気になる新キャラの北村隼人はどのように関わってくるのか…。また良かったら、続き…見守ってやってくださいませ
今回も、遊びに来て下さってありがとうございました