<艶が~る、妄想小説>


今回は、【恋心】シリーズ、翔太きゅんの再UPですきらハートてふてふあげはさんの素敵な絵をお借りして、少し書き直してみましたpnish


お互いを想う気持ちを確かめる方法は、千差万別なんですなぁきらハートキスよりも、抱き合うことよりも、素敵な言葉に弱いのだと、最近、思ったりしています笑


今回も、相変わらずの拙い文ですし、説明不足ではありますが、少しでも翔太きゅんを感じて貰えたら嬉しいですahaha;* 今回は、翔太きゅん目線で…。




【恋心】 ~想いはてなく、心はるかに~


絵:てふてふあげはさん

作:小春



季節は、夏を迎えた頃。


俺と、龍馬さんは相変わらず忙しい日々を過ごす中、下関から京へと足を運んでいた。


京へ着いて二日目。


必要な資材を買う為に、京の町を練り歩いていた時だった。


ふと、前方から歩いて来る女性に目を奪われた。


「あれは…」
「あれ?翔太くん!」
「お前…だったのか…」


彼女は、立ち尽くす俺の前まで走ってくると、ひさしぶりだね…と、言っていつもの笑顔で微笑む。


(…一瞬、気がつかなかった…なんか綺麗になったな…)


「こっちへ来てたんだね」
「一昨日、京へ着いたんだ。お使いか?」

「うん。翔太くんも?」

「ああ。数日後には、また下関へ戻ることになってるんだけどな」
「そっかぁ…」


ほんの少しだけど、彼女の笑顔が曇り出した。


「俺に会えなくて寂しかったとか?」
「……うん」
「えっ…」


唖然とする俺の顔を見つめながら、彼女はクスッと笑い、「なんてね」と、言っておどけた表情を見せた。


こんな会話は久しぶりだ。


現代にいた頃は、当たり前のようにしていた会話だけど…こっちへ来てからは、それどころでは無かったから。


「龍馬さんも元気?」
「ああ。龍馬さんは元気なんだけどさ…ちょっと、ここじゃ話しにくいから店に入らないか?」
「そうだね…」


俺は、すぐ傍にある甘味処へ彼女を誘い、これまでの経緯を話し始める。


「この間、あの有名な池田屋事件があっただろ?」
「…うん」
「龍馬さんと仲の良かった人達も、新選組の犠牲になったんだ…」
「えっ!本当に?!」


元治元年、六月五日。現代でいうところの祇園祭の真っ最中に、それは起こった。


その日、会合の為に池田屋に集っていた長州藩士と土佐藩士達の中に、肥後の出身である宮部鼎蔵(みやべ いぞう)や、同じく長州藩士の高杉さんと共に、松門四天王と言われていた吉田稔麿(よしだ としまろ)らもいたらしく、その他にも、多くの長州藩士や土佐藩士達が犠牲になっていたのだ。


そして、龍馬さんと仲の良かった、土佐藩士の北添佶摩(きたぞえ きつま)さんや、望月亀弥太(もちづき かめやた)さんも、その尊い命を奪われていた。


龍馬さんの開拓を構想していた蝦夷地を周遊した北添さんと、神戸海軍塾の塾生だった望月さんとは、俺も何回か会ったことがあるが、龍馬さんみたいに努力家で、志のでかい人達だった。


「俺、新選組の物語は何となく知ってはいたんだけど、尊皇攘夷派のことは良く知らなくて…今回、自らがその尊皇攘夷派として関わってからは、とてもじゃないけれど他人事とは思えなくてさ…」
「…じゃあ、もしかして…翔太くんも、命を狙われてたりするの?」
「……もしかしたら」


彼女の泣きそうな顔を目にし、俺は慌てて言い直す。


「あ、いや…俺は、龍馬さんの小姓みたいなもんだから、目をつけられるなんてことは無いと思うんだけど、一応…いざって時に自分の身は守れるようにはしている」


この時代に来て、龍馬さんと知り会ってからは、毎日のように剣術の稽古をしてきたから、龍馬さん曰く、『守りの剣』と言う意味ではその役目を果すことは出来そうだ。


だけど、まだまだ剣術では龍馬さんの足元にも及ばないし、戦場で役に立てるかどうかも分からない。


「これから何が起こるか分からないけど、ただ俺は龍馬さんと一緒に世直しの旅を続けて行きたいって思っているよ。無念にも死んでいった同志達の為にも…」


そう言うと、彼女は…


また強くなったね、と言って微笑んだ。


俺は照れながら、お前の方こそ…と、言って微笑み返す。


「島原での生活も、大変だろ…」
「うん…酔っ払ったお客さんとかいると、特にね。でも、秋斉さんたちに良くして貰っているし、三味線や舞も少しずつ出来るようになってきたから、楽しいって思えることも多くなってきたんだ」
「そっかぁ…」


道端に目をやりながら話す彼女の横顔は、俺の知らない顔をしていた。


「お待ちどうさまどした」


満面の笑顔でお団子を持ってきた娘さんに軽くお辞儀をしながら、彼女の配る団子とお茶を見やる。


「お団子、久しぶり~」
「ほな、ごゆっくり」


お盆を胸に抱え、こちらに微笑みながら去っていく娘さんを見送った後、喜ぶ彼女の笑顔を見て、やっぱり良い笑顔だ…なんて勝手に思いながら、自分の皿に手をつけた。


爪楊枝をもっと太くしたような物で小さめの団子をすくい上げ、一口頬張ってみる。


「これ、うまっ」
「美味しいね」


丁度、小腹が空いていたせいもあるのだけれど、あまりの美味さに一気に口に頬張っていった。


彼女は、そんな俺を見てくすくすと笑う。


「ん、どうした?」
「翔太くん、子供みたいだよ」
「なっ……」


(やばっ…ガッつき過ぎた…)


こんなにのんびりしたのは久しぶりだったし…


隣りにはやっぱ、こいつがいるから…。


「そんなに、まじまじと見るなよ…」
「ふふ、だって二人でこんなふうにするの久しぶりだから…つい、楽しくて」


彼女も、同じ事を考えていたのだろうか…。


その、はにかんだ微笑みに、また心が癒され始める。


「翔太くん、この後…まだ時間あるの?」
「ああ、少しなら。お前は?」
「私も少しなら…」


お互いに、買出しがまだだったことに気がついて、団子を早々に食べ終わると、それぞれの目的地へと急いだ。


そして、彼女の用事を済ませて店から出た時だった。


「あっ……」


小さく声を漏らす彼女の視線の先を見やると、数名の新選組がこちらへやって来るのが見える。


「大丈夫だよ」


それだけ言って、道のど真ん中を小走りで進む彼らの胸元を見つめながら、ただ、通り過ぎるのを待った。


(……相変わらずだな、こいつら…)


擦れ違う人達の肩などを掠めて走り去る姿は、まるで獲物を狙う猛獣みたいだ。情け無用、手加減無しの集団……。


それが、新選組だ。


俺は、刀の鞘に手を置きながら、擦れ違っていった彼らの背中を睨み付ける。


「翔太…くん」
「な、大丈夫だっただろう?俺の面はまだ割れていない…って…」


俺の腕を両手で掴みながら、震えている彼女に気づく。


「大丈夫か?」
「……うん。でも、良かった…翔太くんが捕まらなくて…」


彼女は、そっと俺の胸元に触れ、顔をうずめながら小さく呟いた。


その華奢な身体をそっと抱き寄せ、優しく後ろ髪を撫でながら、「もう大丈夫だから」とだけ、声をかける。


新選組がどれだけの集団なのかは分からないけれど、俺も、龍馬さんから右腕になってもいいくらいだって言われているし、彼女を守ってあげることだって出来るはずだ。


でも、要らぬ心配をさせてしまったことを、今更ながら悔いていた。


「ごめんな…怖い思いをさせてしまって…」
「……ううん。こういうの、慣れてるはずだったんだけど…もしも、翔太くんに何かあったらどうしようって思ったら、急に怖くなって…」


こういうのは慣れている…。


その言葉が胸に突き刺さった。


俺のいない間に、どれだけの思いを抱えていたのか、改めてこれからのことを考えなくてはいけない、そう思うと同時に、俺の命を心配する彼女の想いを受け止め、もっと強くならなければと、改めてそう思った。


「さ、気を取り直して…今度は俺の買い物に付き合ってくれるか?」
「勿論…」


俺達は、手を繋ぎあったまま残りの買い物を済ませ、彼女を送る為に置屋を目指した。


その途中、賀茂御祖神社(下鴨神社)へ寄って参拝を済ませると、俺達はのんびりと境内を歩き出す。


「あ、そうだ。ね、翔太くん、お守りを買おうよ」
「そうだな…」


彼女は俺に微笑むと、繋いでいた手を離し駆け出した。


長い髪を揺らし駆けて行くその後ろ姿を見つめながら、ゆっくりと彼女に歩み寄ると、お守りを二つ持って戻ってきた彼女の嬉しそうな視線と目が合う。


「はい、これ…」
「あ、俺の分も買ってくれたのか?」
「…勝手にごめんね」
「いや、ありがとう…」


差し出された彼女の掌に乗っていたお守りを受け取る。


「なんのお守り?」
「あのね…その……縁結びのお守りなんだ」
「え、縁結び?」


彼女は、唖然とする俺を見つめながら、はにかんだ笑みを見せると、俺との縁が切れないように…そして、二人で一緒に現代へ帰れますように…と、いう願いを込めてこのお守りを選んだのだと教えてくれた。


「それとね、一緒のお守り…欲しいなって思っていたの…」


この笑顔が堪らなく愛しい。


俺がお前を想うと同じくらい、お前も俺のことを気にかけてくれているのだろうか…。勝手な思い込みかもしれないけれど、今だけはそう思わせて欲しい。


「あのさ……」
「なに?」
「……いや、なんでもない」


何度もそう言っては、その先を言えずにいた。


もう少しでいいから、一緒にいたい…


そんな想いを抱きつつも、日が沈みかけていることに気がつく。


「そろそろ、帰らないとな…置屋まで送っていく…よっ…」



(…えっ……)



*艶が~る幕末志士伝* ~もう一つの艶物語~



ふと気がつくと、彼女の手が俺の袖を掴んでいた。


「…翔太くん」

「どうした?」

「うん……あの…やっぱりなんでもない…」


彼女は、節目がちに何かを言いたそうにしていたが、その先を口にすることは無く、俺もその先を聞けずにいる…。


いつどうなるか分からないこの激動の幕末時代で、いつ失われるかもしれない命だというのに…その想いを口にする事は無く……


結局、俺達はお揃いのお守りを胸元に忍ばせると、名残惜しげにその場を後にした。


いつの間にか、夕焼けが空と町をオレンジ色に染め始めた頃。


彼女は大門をくぐると、俺の前に向き直り、今日はありがとうと、囁いた。


「偶然、会えて…いろんな話が出来て、本当に楽しかった」
「俺も…お前が元気そうで安心したよ。今度、龍馬さんも連れてまた来るから…お前も頑張れよ」

「うん、翔太くんも…次に会えるのを楽しみにしてるから」


微笑む彼女に、ここで見ているから…と、言って置屋へ戻るように促す。


「じゃあ、またな」

「うん、またね」


彼女は、微笑んだままこちらに背を向けゆっくりと歩き出した。俺は、時々、こちらを振り返り、胸元で小さく手を振る彼女を見送った。



今度は、いつ会えるか分からないけれど…


龍馬さんにも負けないくらい強くて、志のでかい男になって……


いつか、あいつを迎えに行く日を思い描いた。



「待っててくれ。必ず、お前を迎えに来るから…」


俺は、そう呟くと大門に背を向けた。




<END>




~あとがき~


少しだけこの幕末時代で揉まれ始めた二人を描いてみたんですけど、新選組のあたり…書いてても複雑になりましたare-?*なぜなら、新選組も大好きだからガクリ


でも、翔太きゅん達からすれば、にっくき敵なんですもんね…(´・ω・`;)どちらも、日本の為に…よかれと思ってしていることなのにっ。そういえば…翔太きゅんの物語に初めて龍馬さんが出て来なかった!(笑)


そして、可愛い二人のドキドキシーンが!!あげはさんの翔太きゅんと主人公ちゃんの絵が入ったことによって、ドキドキ感が増しました!!


もう、個人的にも嬉しいかぎりですウフフ


今回も、遊びに来て下さってありがとうございました!


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素敵な旦那様たちに会えますよ!

紙の上の『喜・怒・哀・楽』