<艶が~る、妄想小説>
沖田さんには月夜が似合う。それも、三日月が。ふと、そんなふうにして思った瞬間、沖田さんとの一夜を描いてみたくなりました…。
好きだ、と言いたい……そんな彼の想いを少しですが書いてみました。そして、彼からこんなふうに言われてみたい…それだけどす(笑)
今回も、相変わらずの駄文ではありますが…良かったら
【恋心】 ~想いはてなく、心はるかに~
「今夜の月も綺麗だ…」
「本当に綺麗ですね…」
障子を開けて夜空を見上げる彼の背中を見つめながら、私もゆっくりと立ち上がり隣りに寄り添った。
そして、彼は明後日の方向を見つめながら照れくさそうに呟く。
「…今夜は、その……」
「……?」
「あの……なんていうか…今夜は三度目の夜を迎えました」
「三度目の夜?」
(三度目の夜って……どういうことなんだろう?)
「……あっ!」
そうだ、私が太夫になってから、沖田さんとの夜も三度目を迎えていたんだ。そう、思った途端、身体中が熱くなり、思わず両頬を押さえ込んだ。
「あれから、土方さんに聞きました。太夫との…一夜のことを」
「沖田さん…」
月明かりと、廊下の行灯に照らされた彼の優しい瞳と目が合う…。
「今夜は、あなたと素敵な時間が過ごせる…」
彼のしなやかな指が私の指に触れ、優しく絡め取られると同時に両手で包み込まれた…。その突然の出来事に、思わず肩を震わせる…。
私だけを見つめるその瞳が、いつもと違うように見えて…。
その男らしい瞳に、戸惑いの色を浮かべていると、彼はそっと私の肩を抱き寄せて耳元で囁いた。
「……あなたを…好きにしても良いんですよね」
(……!!)
確かに、三度目の夜は床入りも旦那様の思うがまま。
……もしかして、沖田さんもそれを希望している…と、いうことなのだろうか?
「あの、沖田さん……」
「なんて、言ってみたかっただけです」
「え?」
彼は、私の顔を見つめながら小さく吹き出すと、指を絡めたまま部屋の中へ戻り一式敷かれた布団に目をやった。
「でも、一つだけ…私の願いを叶えていただけませんか?」
「願い?」
「はい、あなたと添い寝がしてみたい…」
彼は、そっと絡めていた指を解くと、布団の上に正座してにっこりと微笑む。
「駄目でしょうか?」
「い、いえ…そんな…」
彼は、掛け布団をほんの少し捲り上げながら横になると、上目遣いに私を見上げた。
「し、失礼します…」
隣りに寄り添った瞬間、彼の胸元から伝わる優しい体温に指先まで温められ……
やがて、彼のしなやかな指が、私の前髪に触れる……。
「ずっと、夢見ていました……」
「えっ…」
「こうやって、あなたに触れられる日を…」
彼の指先が髪を梳く度に、さわさわとした感触に身を震わせ…
涼やかな声と共に、吐息が私の前髪をふわりと揺らす。
なんだろう……この安心感は…。
ほんの少し空いていた彼との隙間を埋めると同時に、広い胸に手を添えてみる。
すると、彼はその手を握り締めて……
「……幸せです」と、囁いた。
その言葉に胸を擽られ、彼の胸元から目を上げることが出来ずにいる…。
(何か話さなければ…)
「……あの、添い寝だけでいいのですか?」
「えっ?」
彼は、私の問いかけにふと手を止め、唖然とした表情を浮かべる…。
「……えっと、それって…」
「あ…特に深い意味は無いのです!その…添い寝以外にも、膝枕とか…耳掻きとか…してあげられるのかな、なんて思ったので…」
慌てふためきながらそう言うと、彼は、くすっと笑い、「じゃあ、今度は…」と、言って何かを考えるように天井を見上げた。
しばらく、その横顔を見つめていると、彼はこちらに向き直りまた口を開く。
「あの!」
「は、はい…」
「……ここに触れてもいいですか?」
彼の指先が私の唇に触れた。
「………っ……」
「口付けを交わしたい…」
そう言って、彼は上半身を起しそっと私に覆いかぶさると、私の手首を掴みながらその端整な顔をゆっくりと近づけてくる……。
(沖田さんになら…)
「震えている……」
「あっ……」
(どうしよう…こんな時、どうすればいいのだろう?)
彼になら…そう、思いつつ、緊張しすぎて身体の力が抜けないまま固まってしまっている…。
その時……
(……あっ…)
彼の柔らかい前髪が耳元を擽り、温かい唇が私の頬に触れ……
……唇に落ちた。
触れるか触れないか…そんな優しい口付けだった。
「すみません…とうとう、奪ってしまいました…どうしても、我慢出来なくて」
「……っ……」
「……泣かせるつもりは…」
彼は、いつの間にか頬を伝っていた私の涙を手で拭うと、また頬に優しい口付けを落とした。
「嫌でしたか……」
「……違います」
「なら、どうして…」
「嬉しくて……」
素直な気持ちだった。
ずっと思い描いていた、彼の口付けを受け止めることが出来たから…
「……もう、あなた以外には考えられない」
ずっと、聞きたかった愛の言葉……。
お互いの切ない想いを確かめ合うかのように、ぎこちない手で触れ合い…
温もりを分け合う。
「愛しています…ずっと、あなたの傍に置いて下さい」
ずっと、伝えたかった愛の言葉……。
彼の悲しみも、苦しみも…すべて、受け止めたい。
どうにもならない二人の境遇と、それでも、どうにも出来ない想いの中で…
いずれやってくるであろう別離を見据えながらも、せめて、二人でいる時だけは…と、微笑み合う。
幾千の時を越えた奇跡。
一途な想いだけを胸に抱き、私は……
時許す限り、あなたに寄り添う…。
<終わり>
~あとがき~
最近、「新選組血風録」の影響もあり…沖田さんにもきゅんきゅんしている私ですでも、太夫になって三度目の夜でよかったんだったっけ?なんて、思っちゃってます
そして、秋斉さんと、沖田さん、俊太郎様、翔太きゅんの4パターンの設定だけは出来上がりました!それぞれの旦那様と、あの場面でああして、ああなって、あの場面でしっぽりと…とか(笑)
それまでは、自由に旦那はんとの素敵時間の1シーンを書いたり、長編の続きを書いたりしてます
引き続き、マッタリ更新ですが…お暇な時にでもまた遊びに来てやってくださいませ
今日も、遊びに来て下さってありがとうございました!