<艶が~る。妄想小説>


初心に返って、短いですがっ慶喜さんと秋斉さんの主人公への「恋心」を書いてみました。数ヶ月前までは、彼らのことばかり考えていたっけなぁ~なんて、思ったらこんなシーンが浮かんできてしまって♪

きっと、こういうシーンは他の作者様方が素敵に描いて下さっているのですが、たまにはこの二人も感じてみたくて書いちゃいました(汗)


良かったら、読んでって下さいませ♪




「思惑」 *慶喜*



「あの子は元気だろうか…」


庭先に胡坐をかき、煙を燻らせながら寂寥感を抱いていた。


愛しい人に会えなくなってどれだけの月日が流れたのか、今の仕事に疑問を抱きつつもどうにもならない現実に心だけが苛まれていく。



*艶が~る妄想小説* ~もう一つの艶物語~



そして、時間の許すかぎり、遠く離れた彼女にその想いを馳せていた。


「会いたいな……」
「……わてにか?」


彼は、すぐ傍の曲がり角からやってきた秋斉を見つけ苦笑する。


「お前にも会いたかったけどね…」
「……あの子なら元気でやっとるさかい安心しい。それよりも、その後はどうなった?」


彼はその言葉に安心すると、また煙管を銜え緩やかに煙を燻らせながら、今までのことを話し始めた。将軍家茂様のご容態や、これからの戦況一つ一つを報告し合う。


そして、全ての報告を終えて帰ろうとした秋斉をそっと呼び止めた。


「秋斉…」
「……何どす?」
「次、いつ会いに行けるか分からないが、それまであの子のことは頼んだよ」
「ああ、それも心得ています」
「あと、もう分かっているだろうけど…他の誰にもあげたくないんだ…」
「……………」


半ば呆れ顔の秋斉に苦笑しながらも、彼は念を押すように口を開く。


「お前も…ただの遊女としては見ていないんだろう?」


一瞬、秋斉の表情が強張り、大きく見開かれた瞳は揺らいで見えた。


「どういう意味や?」
「お前は何でもそつなくこなすが、惚れた女のことになるといつも竜頭蛇尾に終わることが多い。それは何故だと思う?」
「…………」
「素直になれよ、秋斉」


秋斉は、何かを言いたげに口を開こうとしたが、無言のまま静かにその場を後にした。


そして、一人残された彼は、ふっと微笑みまた彼女の笑顔を想い描く…。


(今すぐお前に触れたい…ただ、それだけなんだけどね…)


つかの間の安らぎの中…。

彼女の温もりを思い出し、そっと自分の肩を抱きしめた。





「思惑」 *秋斉*



一方、置屋の自分の部屋へ戻った秋斉もまた、たった一人で記帳作業処理に追われていた。長い沈黙の中、ふと手を止め、一点を見つめるその瞳は憂いを宿しているように見えた。


「素直に……か。それが叶うならとっくにそうしている」


彼は、筆を置きゆっくり立ち上がると、端然とした顔つきで部屋を後にした。


そして、揚屋へと赴くと、いつものように藍屋の遊女に会いに来る顔馴染みの客に挨拶まわりをし、新米新造がいるお座敷へと急ぐ。


「今宵も世俗を忘れ…楽しんで行っておくれやす」


ここでも客一人一人に挨拶をし、最後に新米新造達を見やると、その中でぎこちなく酌をする新米新造を見つけ声をかけた。


「気いつけや…」
「あ、はい!す、すみません…」
「まだ、始めたばかりやさかい…気にせんでもええ」


そう言うと彼は、先輩遊女に声をかけ隣りの部屋へと急ぐ。


(全ては、明日を生き抜く為に…)


長い廊下を歩きながら、心の中で繰り返し呟いた。



何の為に生きるのか…。

それは、その先に見えるであろう自分達の未来の為だった。




それから、大門が閉まる頃合いを見計らい全ての客を見送った後、揚屋を立ち去ろうとした彼は、さっきの新米新造に呼び止められた。



*艶が~る妄想小説* ~もう一つの艶物語~



「あの、秋斉さん…」
「なんどすか?」
「いえ…やっぱり何でもありません」
「……どないしはったん?客に変なことでもされたんどすか?」


彼は、俯く彼女の目元にかかった前髪を優しく梳いた。


「いえ、そうではなくて…私、これでいいのかなと、思って…」


彼女の言いたいことを理解した彼は、小さい子供に言い聞かせるかのように優しく囁く。


「……大丈夫や、あんさんなら出来る。これだけの器量やさかい、それにまだ新造なんや…完璧な芸や饗応(きょうおう)を求めてなどおまへんえ」
「秋斉さん…」
「あんさんらしい笑顔で、客をもて成してくれはったらええんや…」


彼の柔和な眼差しを受け、彼女は徐々に笑顔を取り戻していく。


「ありがとうございます…いつも、秋斉さんには励まされてばかりで…」


自分の方こそ…と、言いかけて、すぐにでも彼女を抱きしめたいと思う気持ちを抑えながら、心とは裏腹な言葉を投げかける。


「楼主として当たり前のことをしとるだけや。あんさんには、これからぎょうさん客引きして稼いで貰うさかい」
「はい、頑張ります。おやすみなさい…」
「おやすみ…」


置屋へと戻る彼女を見送り揚屋の玄関先から夜空を見上げながら、またあの言葉を思い出す…。


<素直になれよ、秋斉>



「余計なお世話や…」



彼の瞳は、不退転の決意と共に果無げに細められた。



<おわり>



~あとがき~


ちびっと、彼らの内心を勝手に妄想してみました。
状況はかなり省き気味ではありますが!
一人の時や、二人の時はこんなふうに想っているのかな~みたいな♪いや、こんなふうに想われたいなぁ~が正解ですが しかし、もっとト書きを素敵に書けるようになりたいなぁ~☆


(ノ∀≦。)ノ


今回も、遊びに来て下さってありがとうございました!


※一回目の投稿で、コメを下さった方のコメントが…消えてしまいました。・゚・(ノε`)・゚・。せっかく下さったのにすみませんでした!!