<艶が~る、妄想小説>
「艶物語 ~比翼の鳥~」 第2話
以前、書いてからだいぶ経ちましたが
初の完全オリジナル話…のはず(笑)に、挑戦どす
続き物につき、初めての方は、「比翼の鳥#1
」を先に読んで下さいませ
【比翼の鳥】第2話
次の日の朝。
私は布団の中からなかなか起きることが出来ずにいた。
(……うう…身体が重い…風邪でも引いちゃったかなぁ…)
「春香はん、入ってもええか?」
襖の向こうから花里ちゃんの声が聴こえ、私は上半身だけ起こしながら声を返すと彼女はゆっくりと襖を開けて部屋へ入ってきた。
「どないしはったん、春香はんがまだ布団の中におるなんて…体調でも悪いんか?」
「うーん…ちょっと、身体が重くて。春先だからかな?」
私がそう呟くと、彼女は私の額に手を当てて、「熱は無いようやな」と、ニコッと微笑んだ。それから、昨夜見た奇妙な夢の話をすると、彼女は眉間に皺を寄せて呟く。
「なんやろう、その奇妙な夢は…」
「私も、あんな不思議な夢を見たのは初めてだったよ…。なんか、御伽噺の中に出てくるような…」
彼女は真剣な顔をしながら、「何かの前触れかもしれへんな」と、呟いた。
そういえば、昨晩も秋斉さんから同じようなことを言われたような…。
「もしも、体調が悪いようなら今日はこのまま休んどき」
彼女の心配げな視線を受け、私は苦笑しながら大丈夫と答えると、彼女はにこっと微笑みながら、「ほな、先に行ってるさかい。ほんまに無理はせんように…」と、言って私の部屋を後にした。
それから私も、身支度を整え自分の部屋を後にすると、他の新造仲間にも挨拶をし、玄関近くにある倉庫から箒(ほうき)を持って来て玄関先から掃除し始める。
(……それにしても、あの不思議な鳥はいったい…それに、私の名前を呼んでいたのは誰なのだろう…)
箒で枯葉などを掃きつつ、私は昨晩の夢のことばかりを気にかけていた。
そんな時……。
「おはようさん」
背後から秋斉さんの声がして振り返ると、彼は草履を履きながらゆっくりとこちらに近づいて来た。私はすぐに朝の挨拶と、昨晩のお詫びをする。
「あの、昨晩はお騒がせしました…」
「何事もなくて良かったどす。あの後は、よう眠れましたか?」
「はい、あの夢はあれっきりでした。でも、本当に不思議な夢だったので…なんか、気になってしまって」
箒を持ちながら佇む私に、彼は、「ただの夢や、あまり気にせんようにな」と、微笑んだ。
「そうですね…すみません」
「謝らんでもええ、それより…いつもより顔色が悪いようどすな。もしも体調が優れんようなら、遠慮無くわてに言い」
「……はい」
「あんさんは、頑張り過ぎてしまうところがあるさかい…」
そう言いながら、彼は私の帯の崩れをさりげなく直してくれる。
「あ、ありがとうございます…」
「無理はあきまへんえ…」
ポンッと私の背中を優しく叩くと、彼は微笑みながら奥へと去って行った。
何か違うことを考えようとすればするほど、私はあの不思議な鳥と、あの声の主の事を思い出してしまうのだった。しかし、どうしてこんなにもあの夢のことが気になるのだろう?
「はぁ……」
「あの、すみません…」
深い溜息を漏らしたその時だった。
また背後から声をかけられ振り返ると、見知らぬ青年が、沢山の植木鉢を乗せた大八車を横に携え立っていた。
肩まであるであろう黒髪を後ろで一つに結い上げ、前髪は風に遊ばれしなやかに揺れる…。
端整な顔立ちと、空のように澄んだ瞳はとても優しげで…。藍色に染まった着物の襟元から時々覗かせる胸や、たすきがけされて捲られた袖や裾先から見える腕や足がとても逞しく見えた…。
そんな彼に見つめられ、なぜか私は胸がドキドキし始める。
「ここは、藍屋秋斉様の置屋でしょうか?」
「は、はい…そうですけど」
「良かった…あの、頼まれていた植木をお持ちしました」
「そうだったのですか…じゃ、今から秋斉さんを呼んで来ますのでここで少しお待ち下さい」
そう彼に言い、私は秋斉さんの元へと急いだ。
秋斉さんに事情を説明して私も一緒に彼の元へ戻ると、彼は秋斉さんを見るなりすぐに一礼し、「あなたが藍屋様ですか?」と、尋ねてきた。
そう訪ねられ、秋斉さんは少し訝しげに呟く。
「そうどすが…あんさんは?」
「私は、先日から加瀬様の元で見習いをしている者です。今日は私がお届けに参りました」
「それはご苦労様どした」
秋斉さんは笑顔で言うと、彼に揚屋の庭に植えて欲しいと伝え、二人は揚屋のほうへと向かって行った。
また一人残された私は彼らを見送り、今の気持ちを整理する…。
(こんな気持ちになるのは初めてだ…)
心の中で不思議な感覚に囚われ、私は困惑していた。
どうして、こんなにも彼のことが気になるのだろう?
今、会ったばかりだというのに……。
あの笑顔に、どこか懐かしささえ感じている。
(……どこかで会ったことがあるのかも?)
そんなモヤモヤを抱えながらも、私は残りの仕事を片付けた。
夕焼けのオレンジが藍色に覆われ始めた頃。
私はいつものように身支度を整え、菖蒲さんの代わりにお座敷へと向かうと、そこで私を待っていてくれたのは、ここの常連客である加瀬様と、朝一番で植木を届けてくれた、あの青年だった…。
~あとがき~
新キャラの人物像は、皆様のご想像にお任せします
沖田さんのような話し方ではありますが…
個人的には、薄桜鬼の土方さんをもっともっとソフトにしたような感じです(笑)
これから、少しずつではありますがこちらも書き続けたいと思います。
良かったら、見守ってやって下さいませ
というか、今回は秋斉さんと花里ちゃんしか出てこなかったなぁ
今回も、読んで下さってありがとうございました!