【バレンタインデーの夜に…】第3話
高杉晋作編
「春香……」
耳元を擽る高杉さんの吐息。
「俺と一緒に…」
「えっ…」
「いや、何でもない…」
高杉さんは、何かを言いかけて口ごもると、その続きは言わずそっと口付けをくれた。
「…ンッ…」
いつもの強引さはなく、どこか切なげな口付けに戸惑いながら、思わず高杉さんの肩に触れながらゆっくりと身体を離した。
「…高杉…さ…ん」
そして、次の瞬間。
視界が変わり、冷たい畳に背を預けていた。
一瞬の出来事に目を丸くして見上げるも、目前には寂しそうな瞳があるだけ…。
(……ど、どうしよう…)
心の中で、一生懸命考えてみる。
龍馬さんや、翔太くんと同じように…高杉さんも、日本中を忙しく動き回っている。それに常に誰かに追われる身だし、いつ戦地へ赴くことになるかもしれない人だ。
それに、明日にはまた遠くへ行ってしまう…。
私が彼にしてあげられることって何だろう?
頭の中で必死に考えていた時だった。
「お前を抱きたい…」
囁かれ、体中が震えはじめた。
(…少し怖いけれど、彼の想いを受け止めたい)
前髪を優しく梳く少し武骨な指先。
「……切なげな表情もいいな」
耳元で囁かれ、ゆっくりと目蓋を閉じた。
(……高杉さんになら…私は…)
そんなふうに思った時だった。
「高杉さん…?」
そっと目蓋を開けると、すぐ傍で片膝を立てて座り込んでいる高杉さんがいた。
「お前のその表情も目に焼き付けた。これでもう、思い残すことは無い」
「高杉さん…」
「綺麗だったぞ…」
と、高杉さんはいつもの笑顔で言った。
「あの、高杉さん…私……」
上半身だけお越し、乱れた襟元や裾を治しながら布団の上に腰を下ろす。
「据え膳食わぬは男の恥というが、さすがにこれ以上は無理だな…藍屋に殺されてしまう」
そういうと、高杉さんは私を慈しむかのように優しく抱きしめてきた。その襟元に頬を寄せると、高杉さんは、「我慢の限界なんだがな…」と、笑った。
「いつか…全てが終わったら、お前を迎えに来る。その時こそは、俺の女になれ」と、呟いた。その声は、今まで聴いたことのないくらい優しく、穏やかなものだった。
「……信じて待っています」
高杉さんの腕の中でそっと囁くと、高杉さんは私をさらに抱きしめながら囁きかけしてくれる。
「ああ、その時は遠慮無くお前を愛する」
「高杉さん…」
「それまでに、お前はもっと女を磨いておけ。この俺が見間違えるほどにな…」
これが一生のお別れっていうわけでは無いはずなのに、まるで二度と会えなくなるような寂しさに襲われた。
この温もりも、声も、優しげな笑顔も……。
私の方こそ、いろんな高杉さんを心の中に焼き付けていた。
「なあに、そう何年も待たせはしない。だから、最後にお前の笑顔を見せてくれ」
私は切なさに胸が締め付けられながらも、精一杯の笑顔を見せた。すると、高杉さんはまた泣き笑いのような顔をして、「愛している」と、囁いてくれて。
「俺以外の男に浮気するなよ」
「その言葉、そっくりそのままお返しします」
お互いに微笑み合うと、私達は時間の許す限り寄り添って温もりを感じあったのだった。
それからしばらくして、大門の前まで高杉さんを見送った。
「無理をせずに、身体を大事にしてくださいね…」
「ああ。しかし、俺の活躍を見せる事が出来なくて残念だ」
「ふふっ…」
くすくすと笑う私に、高杉さんは真剣な眼差しを向けた。
「……必ずお前の元へ帰る」
そう言うと高杉さんは、踵を返し歩き出した。
一度もこちらを振り返ることなく……。
私は、その背中が見えなくなるまで見送ると、月を見上げながら彼の無事を何度も祈った。
どうか、一日も早く彼が私を迎えにきてくれますように…と。
<おわり>
~あとがき~
高杉さん、どないだったでしょう?
難しかったなぁ~
彼の切なさをキチンと描きたかったのですけど
龍馬さんなら、すぐに書けるのになぁ(笑)
次は、俊太郎様に挑戦っ
マッタリペースではありますが…。
また、良ければ遊びに来てくださいませ
あと、ホワイトバレンタインは、無料ガチャで秋斉さんの月の着物ゲットです
龍馬さんの龍の着物が欲しいですぅぅ
やっぱり、秋斉さんは月のイメージなんでしょうかね
今回は、全員の着物ゲットしたいところです