【バレンタインデーの夜は…】第2話
高杉晋作編
揚屋のお座敷までの間、高鳴る胸を必死で抑えこんでいた。
(…胸がドキドキしてきたぁ…高杉さん、お菓子気に入ってくれるかな…)
そして、お座敷の前にたどり着きゆっくりと襖を開けて挨拶をすると、高杉さんは手酌でお酒を飲みつつ、微笑みながら私を迎え入れてくれた。
「待っていたぞ、春香」
「まさか、今夜…高杉さんに会えるとは思っていませんでした…」
高杉さんの何気ない微笑に一瞬、胸を高鳴らせながらも、持ってきたお菓子をそっと差し出した。
「どんなお菓子が好きなのか…全然分からなかったんですけど、こんな感じのお菓子なら好きなんじゃないかと思って…」
「菓子はあまり食べないんだが、これは別だ。お前が俺だけの為に作ったんだろ?」
「はい…高杉さんに会えるか分からなかったけれど、一生懸命、心を込めて作りました」
すると高杉さんは、お菓子を手で掴んで一口頬張り、柔和な笑みを見せてくれて。
「俺好みな味に仕上がってるじゃないか」
「ほ、本当ですか?!」
そして、残りの分も食べ終わると、親指を舐めながらとびっきりの笑顔を浮かべ言った。
「美味かったぞ」
「良かった、高杉さんに喜んで貰えて…」
(こんな優しげな顔は、初めて見た気がする…高杉さんって、こんな顔もするんだ…)
そんなふうに思っていた時、高杉さんは三味線を胸の前で構えると弦を調節し直し、「菓子の礼に一曲弾いてやろう」と、言って奏で始めた。
その色っぽい瞳と、しなやかに動く指先。時折、瞼を閉じながら弾く姿はとても素敵に見える。
(……やっぱり、三味線を弾かせたら彼の右に出る者は居ないだろうなぁ…)
やがて、一曲弾き終わると、高杉さんは私を見つめながら言った。
「春香…今夜は、お前の全てを見せてくれ」
「…えっ?」
「大門が閉まるまでの間だけでいい」
いつにない真剣な眼差しに、私は戸惑いながらも小さく頷くと再び抱き寄せられる。
「さて、まずは何をしてもらおうか」
「……な、何をって…」
「いちだんと綺麗になったお前の舞が観たい」
「あ…は、はい…」
(……私ってば、何を考えて…)
「何か別のことを期待していたのか?」
その悪戯っぽい笑みに戸惑いながらも、私はまた三味線を奏でて貰うことにし、高杉さんの三味線の音色に合わせながらゆっくりと舞い始める。
私の舞を見ながら満足げに微笑んでいるその優しげな視線に、微笑み返した。
(こんな時間がずっと続けばいいのに…)
それから、彼に日頃の稽古の成果を見て貰うことになり、私はそのまま三味線を借りると、以前、高杉さんから教えていただいた曲を奏で始めた。まだ上手くは弾けないけれど、私なりの高杉さんへの思いを三味線の音色に込める。
そして、一曲弾き終わると高杉さんは満足げに言った。
「いい音色だった…上達したな、春香」
「高杉さんへの想いを込めてみました」
ドサクサ紛れに今までの想いを口にする。
高杉さんは少し驚いたような顔をしたが、すぐにニヤリとしてお猪口を私に差し出した。
「もう一杯、くれ」
私は微笑みながらお酌をすると、彼は美味しそうに飲み干した。
刹那、少し強引に肩を抱き寄せられ、
「……春香、次は何をしてくれるんだ?」
「えっ?!」
「さっきも言っただろう…今夜はお前の全てが見たいと」
「高杉…さん…」
高杉さんの視線が私の唇を捉えた。
~あとがき~
いいところで終わりにしてみました(笑)
高杉さんは、俊太郎様や沖田さんなどの次に、何気に切ない恋をする人だと思うので…。
描き方が難しいですけど…
早く、高杉さんを書き終えて…俊太郎様も書きたいところ
ああ…時間が欲しいぃ
もうすぐ、ホワイトバレンタインデーが始まってしまうがよ
そして、龍馬さんのと私の個人的な記事に沢山のコメントをありがとうございました!皆、何かしらで悩みを抱えているんだなって…。
逆に、私も励まされました
毎日、大変だけど……。
無理しないで、一人で抱え込まないで…。
支えあって楽しく生きて行きたいですね