<艶が~る、妄想小説>


今回は、リクエストなんぞもちこっといただき、慶喜さん編を書いてみました(-∀-)イヒッ

こんな私の小説でも、期待して下さっている方がいると思うと、本当に嬉しいですなく

ご期待に応えられるかどうか、心配ですが涙

(勝手ながら、主人公の名前を春香と名づけさせていただいてます涙


また、良かったら、読んでやって下さいませキャッ


*バレンタインデーの夜は…。*幕府新撰組編* #1

(初めての方は、↑こちらからお読みくださいませ)



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バレンタインデーの夜は…。 *徳川慶喜編*



あれから、数日後。


いよいよ、バレンタインデーを迎えた私は、花里ちゃんに手伝って貰いながらあの人に喜んで貰いたくて、長命寺桜餅を作ることになった。


長命寺(ちょうめいじ)桜餅とは、塩漬けの桜の葉を用いた江戸発祥の桜餅なのだそうだ。


まずは、塩漬けの桜の葉、生地の粉、小豆餡、白玉粉や餅粉を加え、これに砂糖、小麦粉に味甚粉、上南粉等を調製する。そして、水に漬けておいた桜の葉の塩気を除き、生地の粉を餅粉や白玉粉から少しずつ水と合わせて置いておく。次に、溶いた生地を薄く延ばして熱し、後荒熱をとるように冷ましたら、焼き加減は周囲の水気が取れて乾く程度に、餅がしっとり仕上がるようにする。次に、小豆の餡を丸めて、焼いた皮で包み、そして、桜の葉を真水で洗い、桜の葉を餅の表に巻くようにして付け……最後は、餅を桜の葉で包み蒸籠で蒸して完成だ。


この長命寺桜餅を作るのに、行きつけの和菓子屋さんのご主人に作り方を親切に教えていただいたり、図々しくも台所をお借りしたり、足りない材料を貸していただいたりして、何とか今日を迎えることが出来たのだった。


「上出来や~!これなら、慶喜はんも喜んでくれるんとちゃうかな?」


私の作った長命寺桜餅を見て、花里ちゃんが微笑みながら言った。


「……そうだといいなぁ…」
「大丈夫やって、自信持ち。これ、慶喜はん好きやと思うわ」


花里ちゃんに背中をポンッと叩かれ、私は逸る気持ちを押さえ込んだ。



それから、私はいつものようにお座敷へ出る準備に追われた。今夜、慶喜さんが会いに来てくれることを心の中で願いつつ、私は揚屋へと向かった。すると、揚屋の玄関先で秋斉さんと見知らぬ男性が話しているのが見えた。男性は、私に背を向けているので分からないけれど、秋斉さんは浮かない顔をしている。


(……何かあったのかな?)


二人の様子が気になり、下駄を脱ぎながらもそちらを気にしていると、秋斉さんが私の傍に来て小声で言った。


「慶喜はん…今夜は、あんさんに会いに来る言うてはったんやけど、もしかしたら、来られへんかもしれへんそうや」
「……えっ…そ、そうなんですか…」
「……そないにガッカリせんとき、まだ分からんさかい」


彼は、苦笑しながら私の顔を覗きこむと、私の背中を叩きながら、「今夜もおきばりやす」と、言って廊下を歩いて行ってしまった。


(……そうか…慶喜さん…来られないかもしれないんだ…)


私は、思いっきり肩を落とし溜息をつくと、今度は深呼吸をして心を入れ替えた。こんな気持ちのまま、お座敷へは行けないから……。


しばらくして落ち着きを取り戻すと、私は背筋をピンと伸ばし、お座敷へと急いだ。




それから無事に宴を終え、私は置屋の自分の部屋へ戻り、着替え等を済ませると、窓辺に佇んで夜空を見上げた。沢山の星々の中に、綺麗な三日月がぽっかりと浮かんでいるのが見える。


(………慶喜さんに会いたかったなぁ……)


と、その時だった。


襖の向こうで、秋斉さんの声がして私はそっと声をかけた。


「……あ、どうぞ」


その声を聞き、彼はゆっくりと襖を開けて入ってくると、私を見ながら微笑んだ。


「……春香はん、今夜はもう一人お客はんが残ってはるから、行ったってくれるか?」
「えっ?!お客様が?」
「そうや、あんさんでないとあかん言いよる我儘なお客はんやけど…」


彼の言葉に、首をかしげながらも、私はまた準備をしようとすると、彼は、「そのままでええよ」と、言い、私の耳元で優しく囁いた。


「慶喜はん、間におうたみたいや」
「……け、慶喜さんが?!ありがとうございます!秋斉さん」


私はそのまますぐに部屋を飛び出し、台所に寄ってお菓子を持つと、揚屋のお座敷へと急いだ。


そして、また揚屋に息を切らせて上がり込むと、慶喜さんが待つ部屋を教えてもらい、人目もはばからず廊下を急ぎ足で駆け抜けた。


そして、はたとして立ち止まる……。


気が付けば、今の私は、寝間着同然の格好で、髪の毛もくしゃくしゃだったりする……。


(……嬉しすぎて…このまま来ちゃったよぉ…)


私は、後悔しながらも彼の待つ部屋へと辿りつき、ゆっくりと襖を開けて中へ入ると、そこには、煙管を吹かしながらこちらを見て微笑む慶喜さんの姿があった。


「け、慶喜さん!」
「やあ、春香。会いに来たよ」


私は、自分の身なりも気にせずに、彼の元へと駆け寄った。


「今夜はもう、会えないかと思っていました…」
「すまない、こんな時間になってしまって。でも、今夜だけはお前に会いに来なければって思ってね。それに、俺に話したいことがあるんだろう?」
「……はい」


私が俯きながら答えると、彼はまた私を見つめながら、今夜のお前は特に綺麗だよ…と、囁いてくれた。


忙しいであろう彼が今夜、私に会いに来てくれた。そして、すぐ手を伸ばせば触れられる距離にいてくれる…。それが、とても嬉しい……。


「あの……これ…」


私は、持ってきたお菓子を差し出すと、慶喜さんは、差し出されたお菓子を見て目を丸くした。



*艶が~る妄想小説* ~もう一つの艶物語~



「これ、お前が作ったのかい?!」
「……はい、いろんなお菓子を作ってきたけれど、慶喜さんには是非、これを食べて貰いたくて…一生懸命、作りました…」


この間、味見をして貰った時、慶喜さんは御餅やお団子が好きだと言っていたし、子供の頃は江戸で過ごしていたということも配慮して、私は、江戸で有名なこの長命寺桜餅を食べて貰いたかったのだった。


「春香、もしかして…俺が幼少時代を江戸で過ごしたってこと、覚えていてくれたのか?」
「……はい」
「これ、懐かしいな…」


そう言いながら彼は一つ手に持つと、口に頬ばった。


「うん、上出来だよ春香。少し甘すぎるかもしれないけど…餅の塩加減が丁度いい」
「……はぁ…良かったぁ……」
「料理の腕も上げたようだね」


二個目も頬張りながら、彼は無邪気な笑顔で微笑む。


(そういえば、なんで長命寺桜餅って言うんだろう?)


ふと、この桜餅が何故、長命寺というのかが気になって、慶喜さんに尋ねてみることにした。


「慶喜さん、どうしてこの桜餅は長命寺桜餅って言うんですか?」
「それはね、山本屋というお店でこの桜餅は売られるようになったんだが、そのすぐ裏の土手下に長命寺っていうお寺があって、虚子の句に、「桜餅、食ふてぬけけり長命寺」とあるように、山本屋のすぐ脇の小道を下りて行くと、長命寺の裏門に繋がっていて、そこから境内へ入れたことから、長命寺の名前が先にくるようになったんだよ」
「……それ、本当の話ですか?」
「もしかして、嘘だと思ってる?」


まるで、作り話みたいな話に一瞬、慶喜さんが面白おかしく語っているだけなのかと思ったら、本当の話だったようだ…。


「す、すみません…なんだか、単純すぎてて慶喜さんが作り話をしたのかと思ったから…」
「酷いなぁ……でも、物事はけっこう単純なものさ」


私は、お猪口を持つ彼にお酌をすると、彼は一気に飲み干した。喉を鳴らして一息つくと、彼はまた私を見て微笑んだ。


「ご馳走様……。しかし、これなら、いつ俺の奥さんになっても大丈夫だな」
「……え?」
「春香、傍においで…」


そう囁かれ、私は彼に寄り添うと、優しく肩を抱き寄せられた。胸を高鳴らせながらも、そっと彼の広い胸に頬を寄せる。



*艶が~る妄想小説* ~もう一つの艶物語~


この瞬間を、ずっとずっと待っていた…。
彼に寄り添って、この温もりを感じたかった。


いま、大好きな人と同じ時を過ごしていることに、この上ない幸せを感じていた。


「で、俺に言いたいことって?」
「……け、慶喜さん…」


(……分かっていてわざと聞いてきてるぅ…)


私は、頬を真っ赤にしながら俯くと、彼は私の顎を右手で優しく支え、ゆっくりと持ち上げる。


「可愛い顔を見せて……」
「……あ……」


彼の切れ長な目を直視し、また顔を伏せようとした瞬間、「春香…」と、言われ、私は顔を上げた。


「そろそろ言ってくれるかな?俺が好きだと…」
「……あ…あの…」
「ん?」
「……慶喜さん、こんなに近いと…恥ずかしいです」


私が目線を逸らしながら言うと、彼はくすッと笑い、じゃあ…と、言うと、私の背後に回りこみギュッと抱きしめて来た。彼の長い髪や、柔らかい唇が耳元をくすぐる度に、私は肩を震わせる。


「け、慶喜さん…」
「……これなら言える?」


耳元で呟かれる度に、心臓がバクバクと飛び出そうになる。


「……近いことに変わりは無いじゃないですかぁぁ!」

「お前と一刻も離れたくないからさ」


ドキドキはさらに大きくなる中、私は思いきって素直な気持ちを告げた。


「私……慶喜さんのことが…大好きです…」


私は思わず瞼を閉じながら言うと、彼は後ろから抱きしめたまま、「…やっと聞くことができたな」と、囁いた。


「春香、お菓子のお礼は何がいい?」


再び彼に囁かれ、私は照れながら首を振った。


そして、お返しなんて要らないと答えると、彼は微笑みながら、「駄目だな、春香……ここは、俺が欲しいって言わなきゃ」と、言った。


「け、慶喜さん!」


私が手を振り解きながら後ろを振り返ると、小さく舌を出した彼が私を見つめて微笑んでいた。


「ごめん、ごめん、ちょっと調子に乗りすぎたね」


(……慶喜さんってば…どこまでが本気で、どこまでが冗談なんだか分からないよぉ…)


彼は、乱れた着物を正すと、私の傍に座り直し笑顔で私にお猪口を差し出した。私は銚子を持ち、またお酒を注ぐと、彼は美味しそうに飲み干した。


「でも、このお菓子のお礼はしなきゃいけないね」


ニコッと笑う彼に、私は、ホワイトバレンタインデーの話をし始めた。


翌月の14日は、男性から女性へお返しをする日なのだということを話すと、彼は目を輝かせながら、その時にまた一緒に過ごそうと言ってくれた。


「その時には、何か贈り物を用意しよう…何が欲しい?」
「私は、慶喜さんと過ごすことが出来れば…何も…」


私がそう言うと、彼はまた少し曇った顔をしながら呟いた。


「だから……そこは、「慶喜さんが欲しいです」って言ってくれなきゃ…」
「…………」


無言で呆れる私を見て、彼はぷっと吹き出して次第に笑いだした。


「あはは…本当にお前は可愛いね」
「……もう…慶喜さんっ…」


ひとしきり笑うと、彼は私をちょこんと膝の上に乗せた。されるがままに、私は彼の整った顔を目の前にし、思わず俯いた。


「で、結局まだ……お返しが出来ないままだったね…」


彼はそう言うと、私に甘くて優しい口付けをくれた。


突然の出来事に、私は目を閉じることも忘れ彼の閉じられた瞳を見つめた。その優しい口づけに、身も心もとろけそうになりながら、やがて私もゆっくりと瞼を閉じる。


そして、ひとしきり口付けを交し合うと、彼は私を抱きしめたまま囁いた。


「……お前の全てが愛しい」
「慶喜さん…」


いつもはどんなお仕事をして、どこに住んでいるのかさえも分からない…。でも、私にとって慶喜さんは、たった一人しかいない大切な存在で…。何ものにも変えがたい、大切な人……。


やがて、薄暗い部屋に月明かりがゆっくりと差し込み始めた。


すると、彼は私の手を取り窓際へ歩いて行くと、夜空を見上げながら、「来月も楽しみだね」と、微笑んだ。


世界中のどんな高価な物よりも、世界でたった一人しかいない彼がいつも笑顔でいてくれること…。それが、一番の願いだ……。



私は彼の手を握り締めながら、そっと、月にお願いをした。


彼がずっと私の傍にいてくれますように……。





<おわり>



~あとがき~


ひぃぃ~、慶喜さん…どうでした?

今は、龍馬さんにきゅんきゅんしている私なので、慶喜さんに骨抜きにされていた頃を、一生懸命思い出して書いてみましたが……。


慶喜さんのイメージが崩れていたら、ごめんなさい。・゚・(ノε`)・゚・。