<艶が~る、妄想小説>

一通り、旦那様たちのサイドストーリーを書いてきましたが音譜

なぜか、慶喜さんが最後にあせる


この人が大本命だったのにあせる


今回は、慶喜さんがヒロイン(春香)をデートに誘いますラブラブ!

ああ……慶喜さんに誘ってもらいたい…そんな私の妄想全開です(笑)


なんか、古風な感じになっちまいましたが…

良かったら、読んでやってくださいませニコニコ



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<もう一つの艶物語 ~春うらら~> *徳川慶喜*  



少しだけ春が顔を覗かせ始めた頃。


いつものように朝の仕事を終わらせると、私は自分の部屋の窓際で春の風を感じていた。


すると、ふいに襖の向こうから聞き慣れた声がして私は胸がドキッとする。


「春香、居るかい?」
「その声は、慶喜さん?」
「入ってもいいかな?」
「……どうぞ」
「お邪魔するよ」

彼は、襖を開けて入ってくると、にこにこしながら私の側にあぐらをかいて座った。


「今日は、急にどうしたんですか?」
「暇が出来たものだからね、お前に会いに来たんだ」

「またまた!本当は秋斉さんに会いに来たんでしょ?」

「いや、今日は本当にお前に会いたくて来たんだけどね…」
「え?…本当に?」
「ああ」


ふと見せる彼の優しげな眼差しに、私は思わず目線をそらす。


「今日一日、俺に付き合ってくれないか?」
「え?あ…でも、まだこれからやらなきゃいけない仕事が残っているし…」
「その件はもう、秋斉に話をつけてある。あとは、俺と来てくれるかどうかなんだけど……」


(慶喜さんから誘われた??この私が???)


私は、半分舞い上がりながらも、「はい」と返事をした。


「そうか、良かった。じゃ、急いで支度をしてくれるかな」
「は……はい!」

「俺も手伝おうか?」
「いえ…結構です…」


私が少し照れながら言うと、彼は立ち上がり笑いながら部屋を出て行った。


それから身支度を整え、秋斉さんにお礼を言って、私たちは置屋を後にした。ふと、すぐ横を歩く彼を見ると、彼ももこちらを見てニコっと笑う。


(なんだか、まだ信じられないなぁ…。あの慶喜さんと一緒に町を歩いているなんて)


私の視線を感じたのか、彼は私を見下ろしてニヤリとした。


「春香、今…俺に見とれてただろ」
「えっ、えーと……」


(はい…だなんて、恥ずかしくて言えないよね…普通…)


彼はくすっと笑うと、また楽しげに話し出す。


「今日は、春香を素敵な場所へ案内しよう」
「楽しみですっ」
「きっと気に入ると思うよ」


町を離れて山道を少し登って行くと、広い野原が見えて来た。辺り一面には花が咲き乱れ、まるで私たちを歓迎してくれているようだった。


「うわぁ~、綺麗……こんな場所があったなんて…」


野原一面の花畑に、私は感動して思わず声を出した。


「気に入ったかい?」
「はい!こんな場所があったなんて知りませんでした」


私は、久しぶりに沢山の緑に囲まれて心も身体も癒された。いつもは、島原近辺の町までしか行ったことが無かったから、こんな自由な気持ちになったのは久しぶりだった。


「きっと、喜んでくれると思ったよ。連れて来て良かった」
と、慶喜さんが私の方を見て笑いながら言った。


「慶喜さん、ありがとうございました!」
「こんなに喜んで貰えるとはね。俺のこと、見直した?」
「もう、かなり見直しました!…って言うか…また慶喜さんのことが好きになりました」
「素直だね、春香は」


そう言うと、彼は不意にひょいっと私の身体を抱き上げた。お姫様だっこのような格好と、すぐ傍にある彼の端正な顔にクラクラしながら思わず顔を真っ赤にする。


「け、慶喜さん…」


少し驚いた私に、彼は優しく囁く。


「立ち話もなんだから、あそこに座って話そう」
「あ…はい」
「あれ?……」


ふと、慶喜さんが私を抱きかかえたまま、動きを止める。


「どうしたんですか?慶喜さん…」
「春香……少し重くなった?」


彼は、悪戯っぽい笑顔を浮かべて言った。


「もぉぉぉ…知りません!」


私が少しむくれながら言うと、彼は笑いながらまた歩き出した。

大きな切り株に二人して腰掛けると、また慶喜さんは話し始める。


「初めて会った頃のお前も十分に可愛かったが、今日は特に可愛いね」

「……嬉しいです、そう言って貰えると」
「俺のおかげかな?」
「ふふ、そうかもしれませんね」


私は、恥ずかしくなり少し俯くと、彼は私の肩を優しく抱きしめる。


「これからしばらくの間、お前に会いに来られなくなる…」
「えっ?どうしてですか?」


彼は少し俯きながら、穏やかに話し始める。


「京を離れることになったからね」
「そ、そうなんですか…」


春風がひゅ~っと、私達の間を吹き抜けた。
突然の話しに、私は胸がズキッとすると、思わず泣きそうになる。


そして彼は、私の頬に触れながら、また静かに口を開く。


「ちょっとだけ会えなくなるけど、俺はいつでもお前の事を思い続けるよ。お前のこの瞳は俺の心を癒し、この温もりは俺の心を温める……だから…」
「慶喜さん……」
「春香……お前の全てを俺に預けてくれないか…」


彼は泣き笑いのような顔をすると、目を細めながらそっと私のおでこにキスをし、頬にキスをして最後は唇にキスをした。私はその全てがくすぐったくて、くすっと微笑む。


春の風が、彼の長くて艶やかな髪を悪戯に揺らす。そして私たちは、綺麗に咲き乱れる花々に目をやりながら、そっと寄り添った。


「何もかも終わったら、お前を俺だけのものにする……いいね」


肩に置かれた彼の大きくて暖かい手に、私はそっと頬を寄せて小さく頷いた。


悪戯に吹き荒れる春風に花びらが舞う。
私達は、時間の許すかぎりいつまでも寄り添っていた。


この素晴らしい景色と、今、傍にある大好きな人の温もりを胸に閉じ込めながら。




<おわり>



正統派な慶喜さんって感じっすかね( *´艸`)