<艶が~る、妄想小説>
艶が~るにハマって
小説まで書くことになるとは…
それぞれの旦那様とのサイドストーリーを書いていますがっ
今回は、藍屋秋斉様との秘め事を載せてみました
そして、ここに限ってはヒロインの名前を「春香」と、勝手ながらつけさせていただきました
決して自分の名前ではありません(笑)
ショートストーリーです
良かったら、読んでくださいませ
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「もう一つの艶物語 ~秘め事~」 *藍屋秋斉*
「はぁ~、今日は北風が寒ぅ~い」
置屋の玄関先を掃除していた私は、手に息を吹きかけて冷たくなった手を温める。
季節は冬まっさかり…。
ふと、未来にいる家族や友達や、今どこにいるかも分からない翔太くんのことを考えた。
「みんな、元気でいるかな…」
ポツリと呟くと、背後から声がした。
「春香はん?」
振り向くと、そこには秋斉さんが立っていた。
「秋斉さん、何でしょうか?」
「この間新調したあんさんの着物を取りに行かなあきまへんな」
「あ…そうですね」
「ほな、後でわてと行きまひょ」
と、彼は笑顔で言うと、すぐにまた奥へ去って行った。
「秋斉さんと行けるのか…」
私は、少しニヤけながら残りの仕事を片付けた。
それからしばらくして、私は秋斉さんといつもの呉服屋さんへ出掛けることになった。
今までは同じ新造仲間や、姉さん方と一緒に行っていたのだけれど、今回は彼と二人だけ。
隣を歩く彼をチラチラ見つつ、私は少し緊張して歩いた。
すると、ふいに彼は違う道を歩いて行こうとした。
私は不思議に思い、声をかける。
「あの、秋斉さん…お店はこっちですよ」
「今日は、店行く前に寄って行きたいところがあります」
「え?それは、どこですか?」
私が不思議そうに尋ねると、彼は微笑んだ。
「下鴨さんへ行きまへんか?たまには、参拝もええでっしゃろ」
「あ、はい!そうですね」
下鴨神社へは行ったことが無かったので、私は少し胸が高鳴った。
それからしばらく歩くと、大きな神社が見えてきた。
下鴨神社は、平安時代以来、「賀茂皇大神宮」「賀茂御祖皇大神宮」などと呼ばれるわりと有名な神社で、現在でも世界平和、五穀農穣、殖産興業、身体病難解除、厄除け、安産などのご利益がある。
神社に来るのは、何ヶ月ぶりだろう…。
彼と、赤くて大きな鳥居まで近づいた時だった。
急に彼が、私の歩みを制するように立ち止まった。
「ん、どうしたんですか?」
私が不思議そうに尋ねると、彼は呆れた顔をした。
「あんさん、神社でお参りしたことあらへんのか?」
少し怒ったようにも見える。
「いえ、何度もありますけど。あ、あの…私、何か悪いことしましたか?」
私は慌てて聞き返した。
「はぁ…。鳥居のくぐり方、知らへんのか?」
「え、鳥居のくぐり方?」
「……その様子は、知らんようどすなぁ」
彼は、ため息をつきながら神様に会う為の作法を私に教えてくれた。
「ええどすか、ここは一の鳥居。この先、二の鳥居、三の鳥居とあります。ここでは、「祓い給い、清め給へ」と、心の中で呟くか、一礼するんどす。ここは、玄関と同じやさかい」
「……なるほど」
私は関心すると、早速秋斉さんがやって見せてくれた。
今習った通りに、私も神様に挨拶をしてみる。
神社の鳥居をくぐるのに、こんな作法があったなんて…今まで知らなかった。
私は、彼に感謝しながら神社の中へと入って行くと、まるで違う世界に来たかのように空気が一変した。
ふと、隣を歩く秋斉さんを見ると、空を仰ぐように上を向き、神秘的な何かを感じているようだった。
それは、今まで見たこと無いくらい眩しく、時々、髪を手で治す仕草がとても色っぽかった。
「ええやろ?」
と、ふいに彼が私の方を見ながら言った。
「え?……え、あ…はい」
「神社はほんまにええどすな。心が洗われるようや…」
そして、私たちは本殿まで辿り着くと、ここでも、同じように礼儀作法を教えて貰った。
まず、男性と女性とで参拝に来た場合は、男性より少し後ろに下がって女性はお参りをするらしい。
秋斉さんから一歩後ろに離れてお参りするのは、なんだか照れくさかった。
まるで、夫の後ろで妻が控えめに見守るような形になっていたから。
本殿に着く前まではいろいろなことをお願いしたくて、密かに頭の中で考えていたけれど、いざお願いしようとすると、何をどうお願いしたら良いか迷っていた。
本当は、翔太くんと無事に未来へ帰れますように…が、正しいのだろうけれど、やっぱり私はあのお願いをすることにした。
「よしっ」
私がお参りをし終わって目を開けると、少し前にいるはずの彼の姿が無かった。
「……あれ?」
少し慌てて探すと、彼は少し離れた場所でこちらを見て微笑んでいた。
「随分と長いお願い事どしたなぁ」
「あはは、欲張りすぎちゃいました」
私は、苦笑いをしながら彼に近づく。
「何をそないにお願いしはったん?」
「え、いや…その…秋斉さんは?」
「……言えまへん」
「じゃ、私も言えませんね」
私たちはお互いの願いを胸に秘めながら、来た道をゆっくりと歩きだした。
そして、呉服屋へ行って新調していた着物を羽織る。
「よう、似合うてはります」
秋斉さんが、目を細めて言った。
「えへへ…そうですか?」
と、私も照れ笑いをする。
そして、無事に新しい着物をいただくと、私たちは置屋へと戻った。
置屋に戻った頃には、もうお座敷へ出る為の準備をする頃合いになっていた。
私は早速、自分の部屋でさっき買ってもらった着物に着替えると、鏡の前で、さっきの秋斉さんの言葉を思い出す。
<よう、似合うてはります>
私は、お化粧なども全部済ませると、誰よりも早く秋斉さんに見てもらいたくて、彼の部屋へと急いだ。
「秋斉さん、居ますか?」
「春香はんか?おはいりやす」
私は、ゆっくりと襖を開けてしずしずと中へと入った。
「ほぉぉ…綺麗どすなぁ。やはり、あんさんに似合うてはります」
彼が笑顔で言った。
「あ…ありがとうございます!」
「春香はん、ええ女になりはったな」
そう言うと、私の後ろへピタリと身体を寄せて立ち、帯の崩れを直してくれる。
「あ、ありがとうございます」
「慶喜はんから預かったばかりの頃は、正直どないなるかと思うてましたが、こない綺麗になりはるとは…」
彼に耳元で囁かれるたびに、私はドキドキとしていた。
「…秋斉さんのおかげです」
「あんさんが一生懸命やさかい、ほっておけんようなってな」
と言うと、後ろからそっと私を抱きしめた。
「あの…秋斉さん?」
「何どす?」
「さっきは、お互いに内緒でしたけど、秋斉さんは神様に何をお願いしていたんですか?」
「……わては、あんさんがいつも笑うていられるよう、お願いしました」
「…私のことを願ってくださったんですか」
「あんさんは、わての……わての大事な人やさかい」
それを聞き、後ろを振り向いた瞬間、彼は私にキスをした。
それは、とても優しくて、どこか儚げで…切なく。
私は、自然と涙がこぼれた。
「泣いた顔もかいらしいどすな」
そう言うと、彼は私の零れ落ちた涙を指でぬぐってくれた。
「私は……」
「ん?」
「私が神様にお願いしたことは…」
「……言わんでもええ」
言わなくても、分かっている…。
参拝の時、私が何てお願いしたのか…彼にはもう、伝わっているようだった。
まるで、一夜かぎりの夢でも見ているかのような…。
二人だけの秘め事のような…。
「化粧…崩れてしもたな」
「また最初からやり直しです」
これからもまた、この人のそばにいたい。
この人の為にもっと可愛くなりたい。
心からそう思った。
<おわり>
お粗末さまでした!゚.+:。(≧∇≦)ノ゚.+:。
私に絵心があれば…旦那様たちを描いて途中に載せられるのになぁ…
ああ…絵が上手くなりたい…。