Navy & White
Ron Herman Cafe Limited T-shirts
一年ぶりの再会・・・
もう二度と逢うことはないだろうと忘れかけていた・・・
一年以上前のある暑い日の出来事。
いつものように身支度を済ませ、仕事へとマンションを出ようとしたところ・・・
階段にひとりの女性がうずくまっていた。
余計なことなどせず、見過ごそうかとも思ったが、
やはり・・・もしも具合が悪くて助けが必要だったら?と思い、
ひとこと、「どうかしましたか?」と声をかけてみました。
よくよく聞いてみると同じマンションの住人で、鍵を失くしてしまったらしく、
オートロックのため中に入ることもできず困っていて、
管理人が来るまでとにかく待っているつもりだったそう。
・・・とにかく心配したようなことではなかったのでひとまずホッとしました。
が、彼女は何も持っておらず、しかも裸足でいるのに気付き、
・・・それにしてもちょっと様子が変だな?と思い、
でもそれを尋ねるのもきっと彼女自身も嫌だろうと察し、
それでもまだ一時間以上は管理人も来ないだろうから、
とにかくまずは自分のケータイでコールセンターに電話して、
何か他に解決する方法がないか彼女自身で状況を説明するよう促しました。
そして自分も会社に向かわなければならず、せめてしてあげられることとして、
靴ぐらいは貸してあげようと部屋に戻り、それでも男物ではやっぱり変に思われてしまうだろうから、
以前に勤めていた先で、いつか大切な人にあげようと渡す相手も決まっていないのに買った
サンダルがあったのをとっさに思い出し、恥をかかぬようそれを彼女に貸しました。
そして後ろ髪をひかれる思いで自分は会社へと向かいました。
数日後、彼女はお礼を言いに部屋を訪ねてきました。
(あの日にサンダルの他にもまたコールセンターや誰かに連絡を取ったり、
何かするのにあったほうがいいだろうと少しお金を渡していたこともあって、
彼女は自分が立ち去る時に部屋番号を聞いてきていました。)
彼女は貸していたお金とサンダルと菓子折りを持ってその時のお礼をしてくれました。
サンダルは新品と気付いたらしくソールを張り替える心遣いまでできる女性でした。
あのあと自分も一体何だったんだろうとしばらくはおせっかいな推理をしていましたが、
彼女の言うことが本当なら・・・酔いつぶれて気付いたらあの状況だった・・・
と恥ずかしげに話してくれました。
でもきっとこんな気遣いのできる女性ならこんな恥ずかしい思いをして、
自分が心配しなくてももう二度と同じことはしないんだろうと思えた。
同じマンションに住んでいるのなら、またいつか会ったりもするだろうから、
わざわざ菓子折りまでいただいたお礼はいつでもできるだろうと思っていた。
しかし季節は変わり、秋を越え冬になり、やがて春を迎え、気がつけばまた暑い夏になっていた。
あれからもう一年・・・
ある朝の突然の出来事も季節が巡り暑さを感じるようになるまではもうすっかり忘れかけていた。
もしかしたら本当は何かきっと別の事情があって、
本当は彼女はこのマンションには住んでいないんだろう・・・って。
実際あの日の前にも後にも彼女を見かけることなどなかったし・・・
そして、一年以上が経った今日、いつもは遅い帰りの自分が帰るはずもない時間に
ちょっとした用事があってマンションに戻り、エレベーターが開いたその時、
すれ違い通り過ぎようとしたその瞬間、横顔に微かな見覚えを感じた。
思わず「あっ・・・」と立ち止まると、彼女も行き過ぎようともう一歩踏み出す手前で立ち止まり、
振り返り、お互いほんの秒もたたぬくらいで時間が止まり記憶がよみがえった。
「おひさしぶりです。全然会わないから本当はここには住んでいなかったんだと思っていた。
でも本当に住んでいたんだね(笑)。」
彼女はすこし微笑んで、「まだ住んでいますよ。」・・・と、
柔らかな笑顔で返してくれた。
彼女はあの時よりもさらに素敵で、再会できて何だか嬉しかった。
そして自分はただ、「お元気そうで!」と一言だけを返した。
彼女も出かけるところだったのでそれ以上引き止めるつもりもなかった。
そして互いにさよならをするわけでもなく自然とまた足取りを元に戻した。
きっとまた会うこともなく、いつかこのマンションを離れる時が来たのだとしたら、
これはきっと何かの都市伝説だったんだとでも思うことにしよう・・・