うちの事務所は、相続関係に力を入れている。

 どの司法書士も、不動産があり相続が発生したら「相続登記」を行うということは当たり前にやっていると思う。うちの事務所もその1つだ。

 最近思うのは、日本人の寿命が延び、推定相続人も権利意識の高揚から遺産分割の際法定相続分を要求してくることが多い。一方被相続人になる方は、生前「うちには、財産がないから紛争にならないだろう」などと言って、終活をおろそかにしている人が多い。財産のある方は、紛争防止のため予め弁護士、税理士を入れ遺言などの対策をしている人がおおいが、一番やっかいなのが、マイホームだけ残して預金のあまりない層の人たちだ。特に子供が複数おり、一人は親と同居、その他は別居というケースだ。

 こういう層の人たちも最近は「争族」にならないように公正証書遺言を作成する方もいるが、何のために作成するのかわからない場合も多い。

 例えば、同居している子に相続させるという内容の時、同居していない子供の遺留分を割ってしまうことがある。それでは、紛争防止どころか煽ってしまうことになる。この場合、もし若いころに(遅くとも50代くらい)に終身の死亡保険(生命保険)に入り同居の子を受取人とすれば、保険金で遺留分を請求された場合払うことができる。しかし年を取りすぎればそもそも死亡保険に入れないし、仮に一時払いの保険に入れるとしてもそのお金をどこから持ってくるのか問題になってくる。

 一方長生きのリスクもある。何を言っているのかというと、子供達が相続で揉めないようにと折角公正証書遺言を作成しても、もし認知症になってしまったらこれまた問題になる。何故なら成年後見人を選任しなければなせず、もし第三者の成年後見人が選任され遺言の存在を知らなかったら、「本人のため」という理由で、子供の一人にあげる予定だった預金を解約されたり、管理が大変なので預金口座をひとまとめにされてしまったら、折角の遺言も何の役にも立たなくなってしまう。

 それを避けるため遺言とセットで事前に事情を知る親族又は専門家と任意後見契約を結ぶという方法もある。また自分の死後特に不動産を分割したくない場合は(相続税の納税は除く)、民事信託という方法もある。

 それぞれ一長一短があり人によってベストな方法は異なってくるので、「老後の安心を買う」という意味で、リタイア後のライフプランニングや相続対策など専門家に相談するのもいいのでは?