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もず

Enjoy精神を忘れない。

ファッションのナショナリズム化



☆ナショナリズム

→国家または民族の統一・独立・発展を推し進めることを強調する主義・運動。


☆グローバリズム

→グローバリズム(英: globalism)とは、地球を一つの共同体と見なして、世界の一体化(グローバリゼーション)を進める思想である。 字義通り訳すと地球主義であるが、通例では、多国籍企業が国境を越えて地球規模で経済活動を展開する行為や、自由貿易および市場主義経済を全地球上に拡大させる思想などを表す。




◎コロナ禍により、各国は鎖国状態。


航空便は止められ、欧米なんかはロックダウンも施行。国どころか、街の行き来も出来なくなる状況。

必然的に、コロナ禍によって、国家間の物理的、精神的な距離を思い知らされた。


◎ワクチン・ナショナリズム


各国は自国においてワクチン開発競争に躍起になっている。米、露、中、そして日本…先進国は特に。

いかにして、ワクチンを自国のぶんだけ用意出来るか。それは得てして、グローバルな発想ではない。ものすごくナショナリズム。


遠い国でコロナの変異株が出ても、その国や人を心配し、行動しようとするのではなく、その国からの流入を止める思想、流れが多くなった。


ただし、これは当然の動き。そもそも、グローバリズムとは、自らの健康、国の安全が確保出来た状態でないと成り立たない。それが成り立たないのなら、まずは自分の身を守る所から始まる。

自らの安全圏を確保してはじめて、他国の心配をする。


なので、こういった自国の健康、安全が最優先にされることで、どの国も価値観がナショナリズムに進んでいる。




◎ファッションにおいても、それが顕著。


たとえば「ルイ・ヴィトン」の2021年春夏。

テーマは「旅」

フランスのセーヌ川からショーを始め、8月に上海、9月に日本でもショーをやった。

はるかセーヌ川から、極東まで旅をしていくというのをテーマに掲げたのがルイ・ヴィトンのSSコレクション。


これだけ聞くとグローバリズムっぽいが、

「旅」のテーマは、あくまで現実保管の役割。現実で旅が出来ないから、ファッションの世界で旅をしようというもの。


◎文化は現実との補完関係にある。


そもそもファッションというのは、現実に悲壮感があっても、明るい楽しいファッションで気分を晴れやかにという発想。


ゲームやマンガも、現実の平凡さやままならなさにイラ立つから、現実逃避として取り付く。



◎◎◎カルチャーやエンタメは、現実を忘れられる、 現実と相反する、または補完する関係だからこそ、愛されている。(!)◎◎◎



◎では、改めてルイ・ヴィトンの「旅」にはどのようなナショナリズムがあるのか?

各媒体でも取り上げられる部分から。


ルイ・ヴィトンの現デザイナーは、

「ヴァージル・アブロー」という人物。

この人が手がけたSSコレクションは、カラフルで華やか。原色も用いた底抜けに明るいカラーリングでコレクションを飾っている。


これは、アフリカ出身のヴァージル・アブローが、子供の時に見た光景をそのまま反映している。アフリカの服飾文化は、主に「ラスタカラー」を用いたものが多い。



☆ラスタカラー

→ラスタカラーとは ラスタ・カラーとは、ラスタファリアン・カラー(Rastafarian color)の略語で、赤・黄・緑の明るい陽気なイメージの聖地 エチオピアの国旗の色のことを言い、アフリカが発祥の地である。 「ラスタ」の意味は・・・ ヒンズー語で「道」 という言葉を意味する。



象徴的なルックに、ルイ・ヴィトンのモノグラムをラスタカラーで表現しているものがある。

モノグラムを用いて、自らの出身国を大事に表したのが、ヴァージル・アブローの2021SSコレクションであった。


他にも、ガーナの染織である「ケンテクロス」を用いたルックもある。

ヴァージル・アブローはガーナ出身で、自国で馴染みの深いケンテクロスで服を作った。


☆ケンテクロス(ケンテ布)

→アシャンテ族伝統の民族衣装ケンテクロス。平織り、畝織り、両面縫取織りの技法で、様々な織り模様をブロック状に織り上げた細幅布です。



◎ファッション界も、今まではグローバリズムだった。


フランスのブランドがジャポニズム、または中国文化(チベット)モチーフにしたものを作ったり(マルジェラとかルメール:互いにエルメスデザイナー)、アメリカが欧州的なアプローチをしたりが多かったが、2021年のルックはどこも自国を大事にするナショナリズムなルックが多かった。



◎だが、今回は内に籠る傾向がある。



ディオールのデザイナー、キムジョーンズは、藤原ヒロシ等の裏原カルチャーが好きな人物。


なので、エアジョーダンやショーンステューシー等の、東京ストリートカルチャーブランドとディオールをコラボさせるというやり方が、ここ近年の彼の発信だった。

(そもそもブランドコラボの概念を根付かせたのは藤原ヒロシ)


しかし、今回のコラボは、

アモアコ・ボアフォとのもの。

彼は、黒人を賞賛する肖像画などを展開する、ガーナ出身のアーティスト。


というのも、キムジョーンズ自身が、

幼少期はボツワナ、タンザニア、エチオピア、ケニア、ガーナなどの、アフリカ諸国で育った事実がある。そのため、アフリカンカルチャーを展開するためにこのコラボが為されている。

しかも、ディオールの2021SSのモデルは、全員が黒人。


キムジョーンズは度々、様々なコラボを展開することで、多様性を表現していると言われるが(それも事実)、全ルックを黒人で表現しているのは、明らかに多様性ではない。

つまり、幼少期に育ったアフリカに舵を切ったナショナリズムの表れである。



◎ヨシオクボ2021年SSも、パリで発表されたテーマは「日本文化」。能楽堂の中でルックを撮るようなコレクションはもはや説明不要。



◎今の情勢は、自国を守ろうという意識が上がることで、ナショナリズムが高まり、グローバリズムが低下している。

これがカルチャーにも浸透し、ナショナリズムに基づいてものづくりが為されている。ファッションであれば、SSのルック。


ただし、各ブランドのナショナリズムがあることによって、様々な着こなしが生まれるので、全体で見ると、ある種「多様性」であったり、グローバリズムに行き着く。

ただし、広い視点で見なければ、カルチャーもある意味では閉じたものであることも然りである。




映像配信における変化も同じことが言えるかもしれない。


コロナ禍においては、家で映像を観る機会が必然的に多くなり、そのため、配信動画における社会性、メッセージ性の向上は明らか。

「ファルコン&ウィンターソルジャー」も、

元の硬派なストーリー性は引き継ぎつつ、それよりも尚、人類へのナショナリズム、グローバリズム、多様性のメッセージが強い。


誰かの視点で進む主義主張の会話シーンでは、必ず別の視点からのツッコミが入る。


サム

バッキー

ジョンウォーカー、レマー

フラッグスマッシャーズ(カーリ)

ジモ

シャロン

ワカンダのドーラミラージュ アヨ


故郷の国と、主義、それぞれ違ったものを持ったキャラクターが繰り広げる群像劇には、当然ながら一致した正義というのはなく、それぞれが正義なのだ。


フラッグスマッシャーズのメンバーの台詞

「昔は善と悪がハッキリしてた。

今の世界は複雑だ。

惑う人々に必要なのは、痛みの分かる同士」