side N
ソワソワ
ソワソワ
明け方4時。
私は自室の中をウロウロと、
ソファに座ってみたり、
棚の整理をしてみたり、
ベッドに腰掛けてみたり、忙しない。
『だぁー…』
ボフッ
寝る気には全くならないけれど、
手持ち無沙汰で
大の字でベットに横たわった。
年間で何度もあるパーティーは
大なり小なりトラブルがある。
それでも、
今日みたいな一大事は久しぶりで、
死傷者が出るなんて、"あの時"以来。
あの、私が10歳の時に経験したあの襲撃事件。
あれ以降、警備は厳重になったし、
招待客以外は敷地内へ入れないし、
どんな身分であっても念入りな身体検査がある。
ゆうちゃんが私の護衛になってからは、
さらに警備体制も隊員の能力も上がってる。
なのに起こった。
何が、どうして、事態を招いたのか、
何もかもがまだ明確に分からないから、
私は余計に不安で仕方ない。
それに、
ゆうちゃんは何も言わなかったけど、
今回の件は簡単に終わりそうにないと、
彼女も感じていると思う。
『ゆうちゃん、まだかな、』
私は自分に降りかかるかもしれない危険より、
私の為にゆうちゃんに注がれる火の粉が
一番怖い。
彼女の無事を側で見ていないと
心が休まらない。
そんな感じで
悶々としながらベッドの上を転がっていると、
…コンコン
ガバッ!!
バタバタ!
「なぁ、」
ガチャ!!
『おかえり!!』
待ちかねたノックに、勢いよく扉を開ける。
「ふふっ、誰か確認してから開けて」
『ゆうちゃんだって分かるもん!』
「それでも」
『はぁーい…』
凄く凄く待ってたのに、
叱られてシュンとなっちゃった。
「でも、待っててくれてありがと。
ただいま」
フッと微笑んだゆうちゃんに
ポンポンと頭を撫でられれば、
私の機嫌は直ぐに元通り。
『ゆうちゃん、お疲れ様でした』
彼女をそっと抱き寄せて、
ギュッと抱きしめた。
コトン。
「ありがと」
リラックス効果のあるハーブティーを淹れ、
並んでソファに座る私達。
上着を脱いで腕まくりをしてるゆうちゃん。
いつもならもう少し寛いでくれるけれど、
今日に限ってはまだ両方に掛かった
銃のフォルダーを外す気はないみたい。
『なにか、分かったの?』
「ううん、確信的なことは何も」
彼女はティーカップを両手で包みながら
現段階で分かったことを教えてくれる。
暴走したのは、貴族階級の三男坊。
吸血種ではあるけれど、
機敏性の能力値が少し高い程度の標準型。
三男で家督は継げないが、商才に恵まれ、
業界ではそこそこの有名人だったらしい。
同席していた友人達の話では、
今日は風邪気味ではあったものの、
事件が起こる寸前まで異常はなかったそう。
「もちろん、同族の血を欲するような思考を
周りが感じたことはないみたい。
まぁ、周到に隠してたってのも
考えられるけどねー」
『んー、暴走して見境が無くなったってことかな』
「無きにしも非ずだけど、
あの場には私含め一般種も居たからなー」
吸血種は食血が主なだけ合って、
人それぞれ血の味に好みがある。
それに同族の血を絶やさないという本能からか
吸血種の血には独特の強い臭いもあれば、
人によって毒となる場合もある。
その一方で、
一般種の血は
とても食欲をそそる良い匂いが多い。
私はゆうちゃんの血しか受け付けない分、
彼女が血を流していなくとも
時に強く香りを感じる時がある。
『暴走で本能が剥き出しになってれば、
普通は一般種に行くよね、』
「うん。
だけど、あの人は同族だけを狙ってたと思う」
『んー』
「はぁー」
『とりあえず、調査を待つしかないかな』
「だね。」
ただの突発的な事象だとは思えないし、
スッキリしない。
「何があるかわからないし、
しばらくは用心してね」
『ゆうちゃんもね?』
これ以上何も起きなければ良いなと願いながら
私は彼女の肩に頭を預けた。
「なぁちゃん。
そろそろ、寝なきゃ」
普段早寝早起きの私は、
ヨシヨシと頭を撫でられると
すぐにフワフワと睡魔が現れる。
『んー…』
「ふふ、頑張って起きててくれたんでしょ?」
『さっきまで全然眠くなかったのにー』
「ほら、ベッドに移動して?」
ヨイショとゆうちゃんに支えられて
ふらふらとベットへ向かう。
ボフン
『ゆうちゃん、帰っちゃうの?』
「なぁちゃんが眠ったらね?」
『じゃあ、ねない』
「ふふ、心配しないで。
起きたらまた来るよ」
『ここで一緒にねよー』
「お風呂入りたいし、無理です 笑」
『えー、ここのお風呂使えばいい』
「覗きそうだから、ヤダ」
『そんなこと、しないよ?』
「はいはい、分かったから、
もう瞼閉じて??」
『むぅ……、、、』
…
…
「ふふふ。もう寝ちゃった。」
『…スゥスゥ…』
「おやすみ、なぁちゃん。また明日」
パタパタ。
カ チャ、
、、パタン。

