2010年 日本東映 監督 平山秀幸 原作 藤沢周平(再掲載)   

 出演 豊川悦司 池脇千鶴 吉川晃司

「藩のため、藩を支える農民のため正義の行動をする主人公に悪意の刃が降りかか

る」

「観客でしかなかった私の推薦する100本の名画」の一つ

(有料配信されています。HD等も配信サイトで販売されています)

 

 股旅物を書かせたら長谷川伸、幕末は司馬遼太郎、「大菩薩峠」は中里介山、「宮本武蔵」は吉川英治、人情時代劇は山本周五郎、そして貧乏な下級武士と言ったら藤沢周平です。それぞれに個性があり、楽しませてもらいました。藤沢周平の世界はドラマや映像にしやすいらしく、多くがドラマ化されています。時代劇の松本清張といったところかもしれません。

 「必死剣 鳥刺し」は焼き鳥を連想して変なタイトルだと思いましたが、平山秀幸監督の演出は秀逸ですし、主役の豊川悦司の演技は素晴らしいものです。非常にレベルの高い映画だと思われますが、賞には恵まれていません。賞をもらうのは良い作品には違いないと思いますが、私はこの40年間の日本の映画賞には重きを置いていません。何しろ、日本映画自体の観客が少なくなったせいもあるでしょうが、良い映画から次の良い映画への過渡期のような気がして、良作が少なかったと思います。また、非常に商業主義がはびこってしまって、宣伝でお客を呼ぼう、賞を取ってもらってお客を呼ぼうというような意図で映画制作陣が動いているような気がして仕方がないのでした。良い映画よりはお客さんの入る映画を、しかも、宣伝で客の入る映画を作っていたような気がします。すべての映画人がそんなことはないと言うと思いますが、外国映画のレベルが安定しているのに、日本映画の1970年以降は極端に良い作品が少なくなったように思います。これは、全く私の個人的な感想です、このように発言することをお許し願いたい。

 良い映画とは面白い映画、見たくなる映画、目が離せない映画、生身の感情のある人間が登場している映画などです。良い映画を作ればいつかは必ずお客さんは評価してくれると思います。でも一回の失敗で巨額の損失になりますので、そうも言っていられないのでしょう。

 この映画は良い映画であり、面白いです。映像もきれいで、東北の田舎の景色や空を飛ぶ雁の群れが良いです。映画は主人公の兼見三左衛門が主君の側室を多くの家来が見ている中で一突きで殺害するというショッキングな場面から始まります。当然、打ち首になるはずですが、なりません。この側室の言動に問題があり、兼見三左衛門は藩の為にこの側室を殺害したことがよくわかります。

 主君はあまり頭が働かない主君で側室の言いなりでした。そのために農民は苦しめられています。この状況を改善するために主人公は挙に出たのでした。だから、衆議でこの主人公が打ち首にならなかったのも納得がいくというものです。

 しかし、物語はそれほど単純ではありません。どこかに悪者が隠れています。

 「必死剣 鳥刺し」とはいかなる剣なのでしょうか。これは必ず相手を仕留める技で、一般的に知られているとか、誰でもできるとか言うものではありません。これを見せるために映画は作られています。それは想像を絶する剣で映画を見なければわかりません。

 主役の兼見三左衛門役の豊川悦司の演技は非常に落ち着いた演技で好感がもてます。側室のわがままで自在に操られる主君の愚かさと、側室の強さが際立って、それがみんなの見ている前で殺害されるという展開は他の映画やドラマでは見たことがありませんし、唖然とします。その殺害の後の主人公の落ち着いた演技、藩、農民思いの武士の姿に頭が下がります。そういう武士でなければ、ラストシーンまでは引っ張っていけません。

 主人公は最後まで立派な武士ですが、その主人公には罠がしかけられています。

 ラストの殺陣が強烈です。意外な展開の後の、ラストの大立ち回りで、多くの人が死に、血がたくさん出ます。監督はこの血の出し方にこだわりがあるようです。主人公は仲間、いわゆる同僚が斬りかかって来るので、最初は峰打ちにしていますが、途中から刀を普通に斬れるように持ちかえます。自分が死ぬわけにはいかないのです。悪人に騙されたまま死ぬわけにはいかないのです。しかし、主人公は多くの人に斬られて、ほとんど動けなくなってしまいます。しかし、まだ、裏切った悪人は生きています。このままでは終われないのです。

 

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