2005年東宝 監督 黒土三男 原作 藤沢周平

出演 松本幸四郎 木村佳乃 緒形拳 佐津川愛美 石田卓也

「世継ぎ争いに巻き込まれて文四郎の父は切腹となります。そして巡り巡って文四郎も成長して立派な家臣となった時に、世継ぎ争いに巻き込まれ、父の無念を知るのです」

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 東北の家も何もないのどかな農家の畑に雪が降り注いでいます。いつもの藤沢周平の世界、抒情と武士道と理不尽の世界を描いた映画です。主人公は抜群の剣の達人です。

 牧文四郎(石田卓也)は15歳、その隣に住む小柳ふく(佐津川愛美)は12歳です。お福が小川で洗濯をしていると蛇が水の中を泳いできて、お福の指をかみます。文四郎が近くにいて、お福の噛まれた腕を手に取り噛まれた指の血を吸い吐き出します。

「泣くな、山かかしだ、まむしのように怖い蛇ではない。武家の子はこの位のことで泣いてはならぬ。念のため、家に帰ったら、蛇に噛まれたと言うんだぞ」

お福は深くお辞儀をして家に帰りますが、このことをずっと忘れません。

 次の日もまた洗濯をしている時に二人は一緒になります。そして、お福は再度昨日のお礼を述べるのでした。

 祭りの日には、二人は一緒に出かけ並んで打ち上げ花火を見ています。お福は横にいる文四郎の袖を持とうと恐る恐る手を近づけますが、生憎文四郎の友人が来て、「仲間がやられている」と喧嘩に駆り出されてしまいます。でも、お福は12歳と言う幼い年齢ですが、はっきりと文四郎が好きでした。文四郎は道場でも屈指の腕前で、強くて優しい素晴らしい青年武士でした。そして友情にも厚かったので、多勢に無勢の喧嘩でしたが、顔面や体を傷だらけにしても逃げませんでした。夏祭りの別れた場所に戻り、お福に「待たせたな」と謝ります。何も言わずにお福はその文四郎を見つめるのでした。

 文四郎の父、助左衛門(緒形拳)は人望厚く、誰からも信頼されている28石2人扶持の普請組に勤めている藩士でした。家の畑でナスをとり、川魚をつかまえて食事にする質素な生活です。文四郎は父を尊敬し、母・登世(原田美枝子)を大切に思っていました。

 風が強い、今にも嵐が来そうな夕暮れに近い時、家の前で父・助左衛門が2名の藩士と話しています。文四郎を見ると近寄ってきて、

「急用ができた。出かけるぞ。今夜は遅くなるぞ」

と言って、藩士2人と共に去っていきます。この時に文四郎は父の様子にいつもと違うものを感じました。

 風がますます強くなり、大雨が降り出しました。この10年、川が氾濫することはなかったのですが、今度は氾濫しそうな大雨です。普請組はこういう大雨の時に川の流れを変えて、川の水が農作物の方へ流れるのを防ぐ役目です。わざと土手を決壊させて、水の流れを変えるのです。父が帰って来ないので、文四郎がその役目をすると母に言い、普請組が集まっている場所へ行くと、普請組の責任者が集まっている農民たちに大声で指示します。

「ようし、この場所を決壊させるぞ」

ですが、農民は動きません。その場所の土手を崩せば、川の濁流は自分たちの畑と実った作物の上に流れ、自分たちの作った農作物は全滅してしまうからでした。

 そこへ、土手の上を文四郎の父が急いで責任者の元へやって来て、叫びます。

「お待ちください。緊急のお願いがあります。切開の場所を上流の土手に変更していただきたい。今、ここで土手を切れば、刈り入れ前の金井村の作物はつぶれます。上流のその地ならば、外は荒地、たとえ水が溢れたとしても、土砂は流れ、家は助かります。ここで土手を切れば、金井村の人足は引き揚げてしまいますぞ」

 責任者は迷っていましたが、「ようし、最もだ、よく言った!」と決断します。そして、「決壊場所を上流に変更する。急げ!」と言うと、農民は皆歓声を上げて呼応します。そして上流へ向かって大急ぎで駆け上がっていくのでした。

 大雨の嵐の中をその農民の後ろ姿を見送る父を土手の下から見上げる文四郎は父の偉大さを目の前にし、感動と尊敬の念に満たされていました。

 幾日かが過ぎ、城内が急に騒然とし始めます。父と同役の人が、家に来て母と文四郎に言います。

「御父上は明日にでもなれば、疑いも晴れて戻ってくるであろう」

文四郎が何もわからずにいると、母が説明します。

「お父様が何かのお疑いを受けて,監察の方々に捕まえられたというのです」

辺りを警戒し、戸を閉めて、「何があったというのですか?」との文四郎に、その藩士は

「恐ろしい話を聞いた。殿のお世継ぎをどなたにするかで、藩内に争いがあったそうな。助左衛門殿はそちらに関わられたらしい。他に関わった者が何人いるか知らんが、普請組からは3人だ。今夜のうちに龍興寺に送られるようだ」

 父の切腹の前に一度だけ短時間の面談が許されました。父が文四郎に言います。

「今度のことではさぞびっくりしたろう。心配をかけた。何事が起きたのかはいずれ分る。しかし、わしは恥ずべきことをしたわけではない。私の欲ではなく、義のためにやったことだ。おそらく後には反逆の汚名が残り、お前たちが苦労することは目に見えている。だが、文四郎は父を恥じてはならぬ。そのことは胸にしまっておけ―――道場の若い者の中では最も筋がいいそうだな。励め。登世を頼むぞ」

 父の亡骸を大八車に乗せて運びますが、山の一本道の上り坂が登れません。お福が坂を下りてきて、一緒に泣きながら押してくれました。

 

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