原題 The Last Movie Star  2017年アメリカ 脚本・監督 アダム・リフキン

出演 バート・レイノルズの最後の主演映画 アリエル・ウィンター

「往年のモテモテだった大スターが、昔、本当に愛した女性に会いに行きます。その女性はアルツハイマーで老人ホームにいました」

(有料配信されています。HD等も配信サイトで販売されています)

(21.2.22改訂)

 

 杖を突きながら腰を曲げて歩く老人に昔の映画の大スターの面影はありません。しかし、この老人は人生の大スターに見えました。説得力のあるセリフに圧倒されてしまいました。私がもうこの老人の立場と同じ年齢に達し、人生のほとんどを終えてしまい、この映画の主人公のように失敗だらけの人生だったからです。でも、きっとみんな、全ての人が失敗だらけの人生なのだと思います。年を取ると成功したことなど思い出しません。失敗ばかりが悔やまれて、思い出されるのです。

 主演のバート・レイノルズの映画は見たことがありません。顔立ちがコメディ向きなので、きっと見なかったのだと思います。でも、この映画で彼が大好きになりました。すっかり感情移入してしまいました。顔も若い時とは全然違います。立派な年輪を重ねた皺の多い、元美男を思わせる綺麗な老人です。

 人気のあった映画スターです。「昔は何もしなくても、女がよってきたものだ」と言います。とある田舎の自主映画サークルのようなグループの映画祭に彼を特集するからと招待されて、自分の生まれ故郷に帰ってきます。そこでのインタビューへの答えです。彼はアカデミー賞とまではいかなくとも、その2段下ぐらいの映画祭に招待されたと思っていましたが、小さなバーを借り切っての映画祭です。もう、がっかりです。馬鹿にされたような気分です。

 旅費も宿泊代も無料ということで来ましたが、泊る所は安モーテルだし、迎えの車の運転手は実にパンク(「遊びたがりのいい加減な」の意味で使ってます)な若い、鼻に馬のようなピアスをしたとんでる女の子でした。だから、映画の最初はつまらないと感じましたが、とんでもない誤解で、感動作です。最後は涙が止まりませんでした。

 彼は故郷へ帰っていろいろな所を回るノスタルジックな旅をしたくなります。そのパンクな女の子もすべてに同行するうちに、変わっていくのです。服装や行動や身づくろいや心根全部がパンクだったのに、最後には心根だけはパンクを脱するのです。彼の言動がこのパンキーなお女の子を変えていくのですが、その変化の描き方はゆっくりで表情と行動で描かれていて、とても見事です。助演女優賞をあげても惜しくありません。

 人生を考えさせてくれる映画です。若い人にはわからないかもしれません。あるいはわかってもこの老人のこの映画の忠告通りに生きることは至難です。若い時は、人生は成功の坂道を上る作業です。それは人生が終わる寸前まで続く作業です。この老人の忠告と言うか、この映画のテーマは、人生を終えないとわからないものなのです。

 この老人は「恋なら1000回もした。しかし、愛した女性は一人だった」と言います。後の999回は無駄なのです。意味がなかったのです。

 その愛した女性はまだ生きていて、アルツハイマーになって老人ホームにいます。会いに行きますが、夜遅かったので、面会できないと追い返されてしまいます。でも、会いたいのです。会わなければならないのです。そんなことをしているうちにパンキーな女の子はこの老人が好きになるのです。愛おしくなるのです。

 一世を風靡した有名スターの人生の最後の過ごし方、全ての人がこのようにして失敗を償う旅に出たいのではないでしょうか。

 田舎の町の映画愛好家の映画祭の会場での最後の挨拶も感激します。若い人たちの喜ぶ顔がいいです。また、映画功労賞のトロフィがまた手作り感があってとてもいいです。

 最後に、このラスト・ムービースターは生涯愛した人に結婚を申し込もうとした時に、その場所が川沿いだったので、指が震えて、指輪を川に落としてしまいます。しかし、代わりの物を指輪にして、彼女の指にはめました。セリフだけのエピソードですが、忘れられません。是非、映画の中で聞いてもらいたいと思います。

 

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「燃えよドラゴン」 2月24日 WOWOWシネマ 1:45-3:30 2021/2/20
「街の灯」 2月24日 NHKBSプレミアム 13:00-14:27 2020/11/6
「ラスト・ムービースター」 2月25日 WOWOWシネマ 10:30-12:15 2020/9/22
「E.T.」 2月26日 WOWOWシネマ 14:15-16:15 2021/2/21
「武士の一分」 2月26日 WOWOWシネマ 21:00-23:15 2021/2/22
「世界の中心で愛を叫ぶ」 2月26日 NECO 21:05 未定
           
(さくらのブログの他の旧作名画のタイトルと掲載日)
タイトル 掲載日     タイトル 掲載日
「ハスラーズ」 2月8日     「戦艦ポチョムキン」 2月19日
「ブラッド・ワーク」 2月9日