私は天才科学者・宝条である。

本来は科学者だが、何かの手違いで食品開発の依頼が届いた。

前回のリフォームと比べると、だいぶ科学者向けの依頼になってきたが、

それでもこの依頼もお門違いには変わりない。

断ろうかと思ったが、私は最近ガチャポンに無我夢中であり、

そろそろお金が無くなってきたのでしぶしぶ引き受けることにした。

今のガチャポンはクオリティが高い反面、

値段が200円と高価格というところが欠点だ。

200円というと、私の年収の3分の1にも匹敵するから驚きだ。

私のような天才科学者でも、苦労は絶えないのである。





食品開発の依頼は次の通りである。




 Dear.宝条博士

 我々はプリン一筋の会社なのですが、近年弊社の売り上げが落ち込み、今まさに倒産の危機に瀕しています(オー,ノー!)。そこで、新商品を開発しようと思っていますが、宝条博士のお知恵を借りたく思い依頼をお願いしました。新しいプリンを考えてください。
 ちなみに、商品名は『ブリブリプリン』です。よろしくお願いします。

                  From.スキャットマン





ますは下の『写真1』をごらん頂きたい。



プリン2
           写真1


これが現在販売しているプリンであるが、

特にこれと言った特徴は見えず、

これでは売り上げが伸びないのも無理はないな、ふはははと私は思った。

一見難しそうな依頼にも思えるが、

実はこう見えて私はプリンのヘビーイーターである。

カスタマーの気持ちなら痛いほど分かる。

これは楽な仕事だな、ふはははと私は思った。


通常我々が思うプリンと言うのは、

カスタード80%:カラメル20%の割合で出来ている。


だが、これがそもそもの間違いなのだ。


私は新商品に相応しいカスタードとカラメルの黄金比を割り出すべく、

研究施設にある全てのスーパーコンピュータを起動させた。

デスクトップPCが膨大な数の情報演算を行い、

ノートPCがネット情報を自動スキャン、解析にかけ、

プレイステーション2が『テイルズ・オブ・ジ・アビス』のムービーを流し、

電動鉛筆削りが鉛筆の木部を削り上げ、

電動ミキサーはバナナを粉々にした。

そして私は遂に新商品に相応しい、

最も美しいプリンの黄金比をはじき出すことに成功した。

その計算に基づいて製造されたプリンが『写真2』である。


プリン3
           写真2




冗談が過ぎた、と少し思った私は、

しばらく我が家の地下室にこもりアダルトサイトを駆け巡った。




二日後、案の定依頼主から長い手紙が届いた。






 宝条へ

 これがあなたの結論ですか。正直、弊社の社長から工場長まで動揺が隠し切れません。ある女性社員がこれを初めて見たとき、「この黒いのはなんでしょう? チョコ風味のカスタードでしょうか? きっとそうですよね。まさか100%カラメルのプリンを作る馬鹿はいないですもんね。というか、100%カラメルだったら、それはもうプリンじゃなくてカラメルですよね。あははは。(パクッ) カラメルだった!!!」といってショック死しました。それ以外に問いただしたいところはたくさんあるのですが、大きなところを言わせて貰うと、なぜプリンに毛を生やそうと思ったのですか? 確かに豚足のように毛の生えた食べ物がありますが、どうしてプリンにまで毛を生やそうとお考えになったのでしょうか。しかもあれほどの剛毛を。それと、右上にあるのは何なのでしょうか? こればっかりは我々スタッフも頭を抱えて考えざるを得ず、緊急会議の末、「これはやはりロープウェーではないか」という結論出したのですが、(もしロープウェーじゃなかったらすいません)なぜロープウェーを登場させたのですか?普段冷静な社長が「そんな馬鹿な」とまで言っておられました。はっきり言わせていただきますと、この製品は採用できません。真面目にやってください。

                  From.スキャットマン







ロープウェーは正しい、と私は思った。

あれはロープウェーである。

今回の製品でもっとも力を注いだ部分であった。




再開発の依頼が届き、私はまた頭を悩ませた。

これ以上のプリンは考え付かなかったのである。


そのとき、下のフロアから母親が晩ご飯だよと呼んでくれた。

私はいそいそと階段をくだり、晩ご飯を食べた。


それで、もう面倒臭いからこれでいいやと思い、

依頼のプリンを晩ご飯中に製造にした。

途中、ロープウェーから『ドスゲビッチ星人』の地球侵攻作戦が始まるなど

思わぬアクシデントが襲い掛かったが、構わず私は強行した。

完成したのが『写真3』である。


プリン4
           写真3


お腹一杯になった私は、そそくさと二階にのぼり、

部屋に鍵をかけた。



私は天才科学者・宝条。

この世に不可能は決してない。


僕のメロがちっとも大きくならない。

メロ、というのは、僕がやっている『メロメロパーク』のキャラクターで、何ヶ月も前に登録したのだけれど、まだ憎たらしい顔のまままったく成長しない。なんだこれは。

ブログをたくさん更新するとメロが成長すると聞いたことがあるけれど、そのせいだからだろうか。僕がブログをさっぱり更新しないから、メロが育たずにうんこばっかりしているのだろうか。皆さんには分からないだろうけど、メロメロパークの「マイホーム」というところに行くと、僕のメロが部屋でくつろいでいるシーンが見えるのだけれど、それはもう、うんこ天国といった感じでうんこをするんだ。あっちに行ってうんこ。こっちに行ってうんこ。はっきり言ってうんこ。瞬間移動してうんこ。ドアが開いたと思ったらうんこ。冷蔵庫の中にモうんこ。テレビのチャンネルかえればうんこ。よくみればメロもうんこ。メロなんて最初からいなかったんだ。僕は部屋でうんこを飼いならしていたのだ。


そんなわけで、メロをたくさん成長させたいので、今日から頑張ってブログを更新しようと思う。

まず、今日はメロメロパークのストーリーを紹介する。



①アズバルト王国に生まれた農民の子「ピピオニール」はある日、迷いの森にあやまってはいってしまう。


②ピピオニールは森の奥深く、大樹の切り株の魔剣を抜いてしまう。


③魔剣に魂を支配されたピピオニールは、アズバルド王ラディオファルド7世を殺害。


④アズバルド王国を帝政にし、初代皇帝の座につき、恐怖政治を敷く。


⑤ピピオニールは隣国のガラシャ連邦への侵攻を開始。


⑥度重なる国内クーデターなのど反乱分子を一掃しつつ、ガラシャ連邦を壊滅させ、魔剣の瘴気によってガラシャ土を1000年の呪いにかける。


⑦次々に大陸の国を滅ぼし、遂には自国の領民にまで牙を向ける。


⑧大陸人口が10分の1になったころ、正義感の強いフェクトはひとり精霊に導かれ迷いの森へ。


⑨かつて魔剣が眠っていた地に、こんどは淡く光り輝く聖なる剣が静かに眠っていた・・・


⑩上記の話とは別に、ホームレスの田上安雄(61)が僕のメロを排便した。



これが、僕とメロとの物語(であい)なのです。

ああ、愛しのメロ、はやく成長するんだ。


先々週くらいに、アメーバブログの交流会に行ってきました。

僕の会社の先輩が招待されていたので、「僕も行きたいです。そして真実の愛を掴みたい、この手に」と言って強引についていきました。アメーバブログの交流会は、ただで飲み食いが出来る上、お土産にサイバー・エージェント特製のボールペンと真実の愛が手に入ると言ううわさを聞いたからです。これは行かない意味がないな、さもなくば自害すべきだな、と思ってアメブロ交流会に行きました。

ただ、流石に先々週の出来事なので、僕の記憶も多少曖昧になっているかもしれません。僕が覚えていることといえば、先輩の奥さんが綺麗だったことと、帰りにロボットミュージアムというロボット専門店に寄って、別の先輩が仕事中にもかかわらず一向に会社に帰ろうとしなかったことくらいです(僕はその日オフでした)。今では招待してくれた先輩の顔もろくに思い出せません。鼻が300個くらいあったような気さえします。


では、さっそくアメブロ交流会の日記を書こうと思います。先ほども言いましたが、うろ覚えの部分が多々あるのでその辺りはご容赦ください。


まず会場は井戸の底でした。名古屋のお洒落な料理屋だと聞いていたのですが、全然違いました。井戸の奥底でした。そこで待ち受けていたのは300個の鼻を持つ会社の先輩とその奥さんでした。

 「あ、先輩、こんにちは」

 「よう。久し振りだな。そんなことより見てくれよ。とうとう鼻の数が350個を超えたぜ。ギネスに載るかも知れねえ!」

 「そうですね。さっそく中にはいりましょう」

精神を病んでいる先輩と立ち話をしているのもなんだったので、さっそく会場へ足を踏み入れました。会場に集まった人たちは、みなロシア人でした。さっそく交流が始まりました。 

 「sjksjdksf mdkslier kcsj djiweojfc」

 「ええ?本当ですか?」

 「mc! mkdw!!」

 「それは災難でしたね。ブログのネタもそれで集めてきたんですね」 

 「mnfk! dk」 

 「うんうん、何言ってるのか全然わかんねえ」

ロシア人と話をするのにもうんざりだったので、アメブロスタッフの人と話をすることにしました。

アメブロスタッフの人は、みんな若くて綺麗でした(そう言えと脅されました)。中でも広報の方が綺麗だったので、その人と話をしようと思って近付いたのですが、システム担当のスタッフに見事に捕まりました。僕が日記で下ネタばかり言っていることを言ったら、「下ネタはやめろ」と言われました。なかなか慇懃無礼だなこのハゲ野郎とも思いましたが、たしかにスタッフさんから見たら、下ネタばかり書くブロがーというのは嫌なんでしょう。僕もこれからは下ネタを書くのはやめようと思いました。ワギナ。


正規に招待された人にはブログカードというものが手渡され、それを名刺交換のように配ってみなと交流せよ、みたいなイベントが起こりました。僕は無理やり押し入った人なので、ブログカードは貰えませんでした。僕だけ疎外感を覚えたので、財布の中から一万円札を出して、一番綺麗なスタッフさんに「こ、これで……」といったけど無視されました。グヘヘ。


しばらくすることがなかったので、トイレに行って時間をつぶしました(※)。最後には抽選会がありました。 PSPなどなかなかよい景品がそろっていましたが、僕らのテーブルは誰一人としてあたりませんでした。悔しさのあまり先輩は失禁していました。ははは、先輩、26歳にもなってお漏らしですか、と僕は心の奥底で笑いました。しかし、僕も悔しさのあまり脱糞していたのは秘密です。交流会はとても盛り上がって終了しました。とてもいい勉強になりました。景品が当たらなかったのは残念だったけど、アメーバブログがとても身近なものに感じました。最後に一人一人にお土産が手渡され、わーい!ボールペンだー!ワーいと思って封筒を空けたら、ボールペンは入っていなくてポストカードだけでした。悔しさのあまり、内臓が破裂しました。今もまだ瀕死です。 

「ありがとうございました」とアメブロスタッフさんに見送られ、僕らは帰路につきました。

電車の中、ガラスに映ったチャック全開の僕を見て、僕は一人で泣きました。交流会中、僕はチャック全開で交流していたようなのです。僕の息子がそんなに社交的だなんて、僕自身も初めて知りました。あのとき、ちゃんとチャックをしまっていれば……。僕は電車の中でそっと人生の窓を閉じました。 あのとき=(※)

大学に入学する直前の話です。
僕らの学科では、 入学前合宿という素晴らしい催しが開かれました。

先輩曰く、 「さあ、蛆虫ども。 そう、お前らだよ! なんでみんなガンダムの話ばっかりしてんだよ! アムロか! 大学だぜ? 楽しく行こうじゃないかベイベー!!」

蛆虫ども(僕も含まれる)。 「た、楽しくったって……僕らには無理だよ。 だって、どうせ友達も出来なければ、 彼女だって出来ないに決まっているんだ。 いいじゃないか、アムロだって暗い性格だったんだぞ」

 「バカヤロー!今から変わればいいじゃねーか!入学前に、友達作って、彼女作れば、大学ハッピーライフの始まりだぜ! 勇気を出せよクソども」

意味合い的には、こんな感じのニュアンスを含む合宿だった。 手乗りインコというレアな愛玩ペットを飼っている先輩が、 僕らに熱く諭した。
そんな合宿に、僕も参加した。 生まれてこのかた、蛆虫だった僕は、大学で成虫になろうとしたのである。それはもう、美しい翼を持った、 『美ゴールデン・インテリ美・モテモ美テ・美男美美』 になろうと思ったのである。 (美を使いすぎた) 昔の僕は、すごかった。 活力があったね。 本当。 参るよ。

合宿は、あまり覚えていないけど楽しかった。 なかでももっとも白熱したのは、 自己紹介タイムである。 これは、1対1の合コンのような形式で行われて、 持ち時間内に相手と話が出来るというシステムだった。 時間が過ぎると、ローテーションで違う子と話す。 フォークダンスの会話バージョン見たいなものだ。 ドキる。
これには自己紹介カードというアイテムが必要で、 自分の趣味や特技や好きなことを書いて、それを相手と交換し合い、お互いに話をして仲良くなろうというものだ。
男女混ぜてやる。 男は女の子を前にしてぎらぎらと燃え上がり、(多分)女の子は男を前に、静かに燃えていた。
僕も例外ではなく、(うはうは。これで、僕も女の子と仲良くなってやるぞ。攻略ルートを作りまくってやるんだから。 んもぅ!)
燃えていた。
でも、僕はノリが大変悪いので、自己紹介カードには何も書かなかった。あたかも、僕のブリーフを思い出させるような白紙になった。ただ、好きな歌手の欄にだけ、椎名林檎と書いた。女の子を攻略する気ゼロに近い。こんなので行った。今から思うと、昔の僕はそう、例えるなら、戦時中の沖縄に三角定規だけを装備して特攻して行った阿呆のようである。(例えるの失敗)

実際、この企画は物凄く盛り上がった。これまでにない熱気を見せ、みんなはお互いに話しまくった。
それはもう、「だから、俺が言いたいのはさぁ、そいうことじゃなくて」 「うーん、それは違うと、僕は思うよ。 何故ならば」 「なんつーか、ガンダム? あれ意味わかんね。 キモい」
全員が自分のターンになったしゃべり場の人のように、一気に自分のことをまくし立てていた。大いに盛り上がった。僕のところ以外では。
 僕   「はじめまして」
 女の子 「はじめまして」
 僕   「……」
 女の子 「……」
 僕   「……」
 女の子 「……あ、椎名林檎好きなんだ……」
 僕   「うん」
 女の子 「あ、……そうなんだ……」
 僕   「……」

……
時間切れ。


何が悪夢かというと、これが本当の事だということが悪夢だ。僕は何よりも、銀河無限にチキンだった。
時々さ、女の子に免疫がないのか、何喋ってもムスっとしてる人っているよね。 それ僕。
それから3人くらいと、これを繰り返した頃に、僕は思った。
 (これじゃあダメだ。僕のエロス大学生活は、こんなんじゃあ切り開けない。愛と性欲の日々を送るために、もっと頑張らなくちゃ。 んもぅ!)
勇気を出した。4人目。 可愛らしいナイスガールだった。直球である。 僕のバットが唸りをあげる。 (下ネタちがう)

僕は頑張って自分から話しかけた。
 「好きな漫画とかってある?」
ファーストコンタクトは、漫画で行った。こういうの、性格出るよね。 女の子に漫画はダメだけど。でもその女の子は、少々そっちも嗜むようで、

「あー、あたしテニプリが好きなんよー」

ナイス方言で帰ってきた。 テニプリとは、少年ジャンプに連載している『テニスの王子様』という漫画の略称である。僕も知っていた。やたら美形ばかり出てくる、そっち好きの人には堪らん漫画だろう。最近では、主人公にサイヤ人の血が混じっている事が判明し、試合中とかに、変なオーラを出してくる青春テニス漫画だ。ある回で、主人公の手の指が6本ある事が明らかになったらしい。(本当)

だが、
 (テニプリ??)
略称は知らなかった。だいたい、なんでプリンスって読むのさ?普通に略して、『テニスの王子さ』でいいじゃん。
ここで、 「知らないや。メンゴメンゴ。うっふん」と言うのはた易かったが、せっかく繋がった会話だ。ここで切るのはもったいない。僕は知ったかぶりをした。
 「うん。 知ってるよ。 テニプリだね。 サイコー」
しかし、嘘だとばれたようだ。
 「ねえ、本当にテニプリ知ってるの?」
 「ぐぬぅ……」
僕は下を向き、必死で考えた。
 (テニプリ?? 知らないよバカ。 それは一体なんなのだ??)
 (何かの略称か??)
 (はたまた、それが暗に何かを指すものなのか??)
 (テニプリ……)
 (テニプリ……)
 (手に……)
 (手に、プリ……?)
 (手にプリっ?)
 (プリってお前……あれだよね……)
 (ひねり出すときの、効果音だよね……)
 (でも女の子がいきなり、汚物発言するか??)
 (しかも、手に? なんか違う気も)
 (しかし一か八かだ! これにかけてみるっきゃ・ない!)
 
 「知ってるよ!」
僕は顔を上げた。
 「 手乗りう○こ の事だろ?」
愛玩ペットっぽく、可愛らしく包んだ。


あの時の彼女の眼……すくみ上がるね。 今でも。
まるで、汚物はお前だろみたいな、射る様な
 (あの、眼……)



案の定、僕に彼女は出来ず、女人の誰一人ともお近づきになれなかった上、大学生活中、彼女には汚物を見るような目で見られ続けた。
先輩よ。何がハッピーライフの始まりだよ。こちとら、入学前から汚物宣言だよ。
クソ、騙された。甘い言葉に惑わされ、僕の大学生活は女性方面で大きなマイナススタートとなった。

僕は合宿の帰り、独り電車で静かに思う。粋がっていた孫悟空は、釈迦如来の手のひらで踊らされていただけだという。先輩の甘言に惑い、粋がって希望を膨らませた僕もそれと同じ。
 (踊らされてた、だけなんだな……)
僕は、どこまでいっても、手の上で踊るただの道化か。
 (いや、)
手の平で踊る、ただの汚物に過ぎない。
 (ははは、そうか。こりゃとんだ皮肉だ。 ……結局僕が)
手乗りうんこ、という訳だ。

クラフト・エヴィング商會の著書に、『どこかにいってしまったものたち』というタイトルの本がある。
どこかにいってしまったものたち。
どこかにいってしまったものたち……
それはどこか、僕を懐かしい気持ちにさせてくれる言葉だ。昔はあった。記憶の中にはある。でも、今はもうない。なくなってしまったもの。

懐かしい記憶が、徐々に輪郭を取り戻していく。

僕の場合、それはブルマーだ。

ううん、書き間違いじゃないよ。ちゃんとブルマーって書いたんだよ。

どこかへいってしまったもの、ブルマー。それに郷愁の念を覚えるのは、何も僕だけではあるまい。変態じゃないよ。真人間だよ。
ブルマーが好きな男の子は、残念ながらたくさんいる。女の子は、全く理解できないと思うけど、そのメカニズムを以下に紹介しよう。

『なんでもおしえて! ぼくらの疑問』 のコーナー
トオル「どうして男の子はブルマーが好きなの?人類学の先生、教えて!!」
昆虫博士「太ももが見えるからじゃねーの? 自分で考えろハゲ」

実は違う。多分違う。僕らが子供のころは、未だブルマーにも市民権が与えられていた。街中を太ももと一緒に、堂々と闊歩していた黄金時代が、確かにあった。それが政治上の思惑()により、移民ともいえる次世代型に覇権を奪われ、短き原住民は絶滅へと追い込まれたのである。



)当時の衆議院総選挙で、ブルマー原理主義議員の議席数が思うように振るわず、対して新参勢力のスパッツ過激派が議席を増やした、という政治的背景がある。


私的な意見だが、ブルマーが当たり前のように着用されていたときに、ブルマーに劣情を抱いていたものは、ただの変態である。しかし、それがハーフパンツに取って代わって数年がたった。

今、着用されていない。だからこそ、価値があるのである。

今、ブルマーに対する熱い想いを抱いている者は、そのようなメカニズムの末に、完成された思想体系に組み込まれたと言うことを覚えておかなければならない。この辺までは、僕の廃案になった卒業論文の引用です。(タイトル『ブルマーに見る現代の性犯罪惹起的側面』)

僕も昔、

「へっ、何がブルマーだよ! ドラゴンレーダー作れるのかよ!!」
 「この……紺色で……もこもこしてて……生地は何なんだよ!!」
と、考えうる限りの罵倒を繰り返してきた。
それがいまやどうだろう。愛すら感じる。あの紺色は、現代の荒んだ社会にはない色だ。と言うことを、高校のときに男の子たちに話した。


思いのほか、同志が、集った。
 

『われら、ブルマーの魂を解放せんことを、ここに誓う!!』

誓った。 

僕らは『南ブルマー解放民族戦線(通称ブルコン)』と名乗り、ブルマーの解放活動に乗り出した。当時の僕らは、ブルマーが消えた理由として、一部の富豪が、金ではなくブルマーで資産保持を図ったためにおこった『ブルマーショック』によりブルマーの市場流通量が激減し、それを埋め合わせる形として急遽ハーフパンツの採用が閣議で決定したと思っていた節があった。
ブルマー解放を御旗に掲げていたが、僕らにはなす術がなかった。肝心のブルマーがなかったからだ。ためしに、僕らは制服販売店へと足を伸ばした。
 「すいません、ブルマーをたくさん下さい」
断られた。ブルマー恐慌のさなか、自由経済市場は、完全に麻痺していたのである。

議論に議論を重ね、僕らは奇策を思いついた。スーパーの紙おむつを買占め、それを紺色に塗り替える『ドレスアップ』という作戦に出た。紙ブルマーの誕生である。一部の過激派からは、女子にまず紙おむつを穿かせてから、そのままの状態で、皆で色を塗ったほうがよいのではないか、という性犯罪すれすれ(アウトです)の妙案が飛び出したが、指導者らは
 「我々は紙の名の下に布教活動を行っているのではない。すべてはブルマーのために!」
との名言を残し、皆その啓示とも言える言葉に涙を流した。
完成したブルマーを生徒会室へ持っていくと、恐ろしいスピードでサンプルが破られていった。あの眼鏡の副会長は、僕らの中では邪神と呼ばれるようになった。 
 「ふむ、問題は耐久性にあったわけだ……
紙ブルマー開発者の呟きを、僕は今でも覚えている。
学校を挙げての普及活動に失敗した僕らは、直接、女の子に手渡す方法に出た。手元にブルマーがあれば、自然回復するのではないかという期待の下、各教室にダンボールに詰めて配った。 掃除の時間に各教室に潜入し、自由に紙ブルマーを手に取ることが出来る環境を作り出した。
その日の焼却炉から立ち上る煙は、
 用務員「ああ、あんなの見たことねぇ。 悪魔が見えた」
どこか紺色を帯びた、ひどく禍々しい煙だったと言う。

あれから数年、僕らは散り散りになってしまった。あんなに固い結束を持った同志も、学年主任と内申書には太刀打ちできなかったのである。
遠い過去を胸に、僕は今日も女子高生の後ろを歩く。クラフト・エヴィング商會『どこかにいってしまったものたち』。そういえば、ブルマーの記述は載っていなかったな、と思いながら。
突然の強い風。前方の女子高生が、小さく悲鳴を上げる。
そこに、僕は見た。めくれ上がったスカートの中、ショーツを覆い隠し、紺色で、あのもこもことした生地……あれはまさしく……
 (生きていたんだ……僕らの想いが……僕らの絆が!)
女子高生が振り返った。僕はそれに、満面の笑みで応える。

睨まれた。



人生というのは辛いです。思った通りに行かないことが多すぎます。どれだけ、どれだけ真摯に世界に対峙しても、イレギュラーな事態は起こりうる。まさに、僕の人生もイレギュラーの名に恥じない壮絶なものだったと言えよう。あれはそう、中学のときの話です。 (回想シーンスタート)

舞台は教室です。後ろの黒板をふと見ると、次のような文字が書かれていました。      


 ア●ル


●の部分は、チョークがかすれてうまく読めなかった部分です。  


 (あれれ? これは、チャンスなのかな?)


と思ってしまった昔の僕が憎い。憎い。  


 (この甘い打球……打てる!!)


僕は確信してしまった。


 「おいおい誰だよ! 黒板にアナルなんて書いたの!!」


しーんとなったね。うん、覚えてるよ。あの空気、うん、忘れるもんか。決して。

正解は、 『アヒル』だったらしい。あの日から、確実に、女人から見られる目が変わった。  


 (まるで、汚物を見るような……あの目)


僕は、忘れない。良質の思い出。


あれもそう、中学のときの話です。歴史の授業、日本史、近代史の範囲だった。歴史の先生は、五・一五事件の説明をしていた。なんでも、殺害された犬養毅は、襲撃してきたクーデター軍にものともせず、  「靴を脱げ」  「話せば分かる」 と静かに言ったそうだ。歴史の先生は、このシーンが大好きらしく、何度も何度も熱弁した。そして僕は必死に便意をこらえていた。思いがけないベンつながりが、教師と生徒を結んでいたのである。

僕が爪先立ちをしていたのが、異様に目立ったせいだろうか。先生は、発射秒読み態勢にあった僕を無慈悲にも指名した。  


 「おい**、聞いていたのか?」


 「はい、先生。 グヌゥ……聞いていました」


必死だった。授業中にくる強烈な便意には、かの犬養毅も  


 「うっひょ~。 肛門筋の負けじゃ~~。 あっぱれ」  (ビシャーーー)


と歴史的失態を曝しながら手綱を手放していたことだろう。襲ってきたのがクーデター軍で、首相は本当にラッキーである。猛烈な便意の襲撃で、撒き散らしながら絶命してしまった場合、首相、5月15日は国恥記念日になっているところですよ。 なんて事を考えながら、僕は必死に肛門筋に全エナジーを集中させた。追い詰められた人間の頭は、時に異空間と化す。 そのとき悟った。  


 「ほんとうか?じゃあ、犬養首相が、官邸に押し入られたとき、なんていったか、おい**、言ってみろ」


そのとき既に、我が軍は第三防衛ラインを突破されていた。目標の攻撃はいまだ続き、司令部は白旗の用意をしていた。降伏とは、魂の開放を意味すると同時に、白旗(ブリーフ)を不可逆的に汚すことでもあり、多角的に存在意義の永久死を意味する。  


 「どうした?きちんと聞いていたら答えられるはずだぞ?」


僕は、必死に、あらゆる敵と対峙していた。


指令「状況を知らせろ」

オペレーター 「目標の攻撃、いまだ止まず。 排熱、追いつきません!!」

指令 「プラン『PAIN』を発動」 オペレーター 「プラン『PAIN』発動!!……ダメです! 効果ありません!!」

指令 「これまでか……全員に告ぐ。 速やかに退艦せよ。 繰り返す、退艦せよ」

僕 「まだだ! まだ終わらんよ!!みんなで、みんなで生き残る方法がまだあるはずだ!!その白旗、キレイなまま母さんに返すんだよ!!」


えらいことになっていた。内から迫り来る恐怖、先生の重圧、そして、教室と言う名の密閉空間。ガンバレ、僕の内部。 尊厳を守りぬけ!  


 「いいか、答えられるまで、座らせないからな」


『悪魔』が、『犬養毅の亡霊』が、内に潜む『黒の福音』が、僕を完全に取り囲んでいた。汗が頬を伝う。そこで、僕はようやく動き出した。すべてに決着をつけるため、僕を顔を上げ、机を両の手で大きく叩く。僕はそこで。僕はその極限状態で。僕が、起死回生をかけた挑んだその手段とは!!


あっ、気がついたらもうこんな時間!こんな日記書いている場合じゃないや、寝なくちゃ!明日も列車置き場に潜入して列車という列車にタックルをするっている大事な仕事があるんだから!

続き? ないない。もう本当に、硬くて大きい列車にタックルすることだけが生き甲斐!あっぱれ。  (ビシャーーー)

今から思えば、僕は昔から痛い子であった。

どうしてなの、何があなたをそこまでさせるの?といわれるほど痛い子であり、その傾向は今も残念ながら悪化の一途を辿っている。
かのナポレオン軍は、ロシア遠征の際、あまりの冬将軍に、フランス国旗を焼くという暴挙を犯した。だが僕は、それを知る数年も前から、自分の国旗ともいえる白きブリーフを焼くという禁忌を犯したことがある。
 

「どうしてこんなことするの?」

と母親にやさしく問い詰められたとき、平成の英傑はこういった。

 

「宇宙人に襲われるかと思った!」

思えば、この快感が全ての始まりではないのかと、僕は自分を疑う。
また、僕の歴史は、その痛々しいあだ名を抜きにして語ることが出来ないというもの事実である。
高校一年生、第一回目の科学の授業のことである。
 「明日、小テストを行うから、実験器具の名前を暗記して来い」
と教師は言った。
当時、粋がっていた僕は
 「予習なんてできるか。 僕は天の車(メルカバー)を探すんだ」
と、既に引き返せないほど症状が進行していた。
第二回目の科学の授業。案の定、実験器具の小テストがあった。
僕は、
 「予習? してないしてない。 あーもう、全然解らん。むしろ死にたいね」
といいながら、きっちり予習しているという痛い属性も装備していたので、割とすらすら出来た。
だけれど、一つだけ、どうしても思い出せない器具があった。全く思い出せなかった。ここで僕の嗜虐心がわいた。形から名前を連想してみた。
答案用紙に、
  

  チ


と書いた。本当に、この通りに書いた。あえて伏せた。
第三回目の科学の授業。答案用紙が帰ってきた。案の定、チポは不正解だった。心なしか、大きなバツが書いてあった。でもそれ以外は全て正解だったので、僕の中では満点だった。満悦な笑みを浮かべている僕を見て、先生は言った。
 「この中で、おもしろい解答を見つけたぞ」
まさか、と思った。だってそうだろう?第3回目の授業で、直球の下ネタを使って笑いを取る教師がどこにいようか?僕は、そう考えて安心した。だが先生は、真顔で僕に尋ねてきた。
 「おい、○○君、チロポってなんだ?」
ボケを潰された上、僕は入学一週間で、『ちろぽ』という不名誉なあだ名を授かった。

高校3年生の頃である。読書家という属性を身に付けようと、僕は必死に読書に励んでいた。あくる日もあくる日も、僕は狂ったように読み続けた。ある放課。女人が僕に話しかけてくる、という突発イベントが起こった。
 「ねえ、なに読んでるの?」
ハードボイルドキャラで通していた僕は村上春樹の短編小説集『カンガルー日和』を読んでいた。 でも彼女は、本なんて読むタイプじゃなかった。村上春樹なんて知らないんだろうなと思いながらも、本を見せた。
 「カンガルー? 好きなの? ハッ!」
それ以来、彼女からはひそかにカンガルーと呼ばれ続けた。
 「おいカンガルー。ジュース買って来いよ。そうだよ、ブリックの奴だよ!はよ行け、このハゲ野郎!」

同じく高校3年、冬。僕はめげずに読書に励んでいた。読み終えたら次、読み終えたら次、と手当たり次第に読んだ。その日は『スクール』というエロティカルブックを読んでいた。英語の授業中にも、僕は熱心にページをめくった。女教師の接近にも気がつかなかったほどだ。


 「何を読んでいるんですか!」

取り上げられた。 そして、見られた。


  「あ、あなた……!!」

職員室にも呼ばれた。

「どうしてこんな本を持ってくるんですか!」

問い詰められた僕は、過去の快感を貪ろうとした。

「宇宙人に襲われるかと思った!」



本は、その日のうちに返された。僕が掃除に行ってる間に、机の上に丁重に置かれていた、らしい。
それからしばらくの間、エロ本を『スクール』という隠語で呼ぶ習慣が男子の間で流行した。 それと同時に、僕も、『スクール』という隠語で呼ばれた。エロ本と僕を、同時に『スクール』と呼ぶ高等テクニックが、受験を控えた3-2にはびこったのである。
 ex
   「おい、『スクール』がスクール水着の『スクール』読んでるぜ?」
   「おい、『スクール』がまた新作のスクール水着買ったらしいぜ?」
不名誉だった。

 (だけれど、)


と僕はひとり、静かに思う。どんな悲壮なあだ名とはいえ、あだ名があるということは、他人との交流の証ともいえないだろうか。大学生になって、過去の自分のあだ名は全て清算された。そして、それは友人との交流も全て清算されたことをも意味する。あれほど嫌がっていたあだ名は、もうない。けれど、友人も。これは、

 (ハハ、全く……

よく出来た皮肉でもある。

 





朝起きたら、すでに夕方の5時だった。朝ではなかった。こんな日ばっかりである。生活のリズムが狂っているのだ。今日は、近くのレンタルビデオ屋に行って、
 『 ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還 』
を借りようと思っていたのに。起きるのが遅いと、全体としての気力がしぼむ。それでも、まあ暇だったので取りあえず行くことにした。
着替えが完了して、さて行こうかと思っていた頃に、友人が来た。僕の数少ない大学の友人が来た。
 

友人「あれ、どっか行く予定だった?」
 

僕 「ううん、別にいいよ。今じゃなくても。 どうかした?」
 

友人「いや、バイトの休憩時間なんだけど、暇でさ。なんか、遊ぶものない?」

僕は部屋を見渡してみたけれど、二人で遊べるものは何もなかった。かろうじて可能性があるのは、昨年僕がノイローゼのときに作った 『独りオセロ盤』位だったけど、それを勧めるには気が引けた。
 

 友人「おっ、これ何?」
 

 僕 「貴様も、なかなかお目が高い」



僕は彼が指す箱を取り出し、蓋を開けた。ドラゴンボールである。

 友人「……蝉の抜け殻じゃねぇか」

 
 僕 「果たして、本当にそうかな?」 

 
 友人「果たして本当にそうだよ!うわっ、頭に星が書いてある! き、キモい!!」

失礼なことを言われた。 苦労して書いたのに。

 僕 「では、さっそくシェンロンを呼ぶとしよう」
 

 友人「来るわけねぇじゃねえか」

試してみる価値は、ある!

 友人「仮に呼べたとしても、そんな蝉みたいなシェンロンに願い事をかなえる能力はねえよ」

 僕 「出でよ、シェンロン!!」

僕は先走った。

……

10秒後、僕の集めたドラゴンボール(蝉)は、容赦なく踏まれた。

そのときの、彼らが発した断末魔が、いまも耳を離れない。

 ex) 以下、断末魔の叫び

  蝉玉1 「ギャーーーー!!」

  蝉玉2 「タァスケテェーーーー!!」

  蝉玉3 「うっほほーーーーい!!」

  蝉玉4 「飛べねえ豚は、ただの豚だ……

  蝉玉5 「哀しいけどこれ、戦争なのよね。アムロ! 突っ込むぜ!!」

  蝉玉6 「あの壺をキシリア様に届けてくれよ!あれは……いいものだ!!!!」

  蝉玉7 「7つもの声を同時に聞くなんて、お前はまるで聖徳太子だな、ゴフッ」



7つ中、2つがガンダムの台詞を吐いた事にたいしては、なんていうか……正直、ひいた。

せめて、ドラゴンボールの台詞言えよ。

 (せっかく、借りたかったビデオをお願いしようと思っていたのに……

僕は、涙を流した。

そして、ほんの少し、大人になった。涙の数だけ、人は強くなれる。そう信じてやまない、病んだ22歳……、僕。



 友人「あっ、そろそろ休憩終わるわ。悪い、もう行くわ」



彼は出口に向かう際に、思い出したかのように振り返った。

 友人「そうそう、お前に渡すものがあったんだ。ほらこれ。お前が借りたがっていたビデオ。借りといてやったぜ」 


そう言って、彼は『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』のビデオを渡してくれた。そして、さわやかな笑みを浮かべる。


 友人「あばよ、リトルボーイ……



そう残して去っていった彼の背が、僕にはシェンロンのようにも蝉のようにも見えた。

(想いは、伝わるんだ……

少し感動して、僕は彼がくれたビデオを再び見た。言葉では伝わらない想いが、確かにあるんだ確かに、僕たちはそれをいま、共有していたのだ。
感動はいまだ、冷めてはいなかった。それでも、何か違和感を覚えて僕はそれを凝視した。

(なんだろう、この違和感)

なにか、重要なことを読み違えたような、この、違和感……
タイトルを読み返した。
 

『 ロード・オブ・ザ・陰部  Oh, No! 痴漢!』

想いは、伝わり損ねていた。

 「僕と、お付き合いしてください!」

この言葉を、家で何度練習したことだろうか。

雨の日も風の日も、彼女を想い、僕は負けずに練習してきた。家で。

しかし、いざ言おうとなると、なかなか勇気が出ない。こんな屈辱を味わうこと半月。今日こそは、彼女に告白をしようと思い、僕は出陣した。 戦だ戦だ、わーい!
大好きなあの子は『トイザらス』でアルバイトをしている。
僕はもう、言ってみれば常連だ。 何度も足を運んでいるからだ。 これまで、彼女の気を引くために、いろいろなことをしてきた。 店内のラジコンカーを走らせ、

 (届け、俺の想い!!!)
と念じながら彼女の足にラジコンカーをぶつけたこともあった。 睨まれた。 僕は逃げた。(L1R1)
店を何往復もしているので、配置は分かっているのに、わざわざ彼女に聞きに行ったこともあった。
 「あのぉ……大根って売ってないですよね?……はい、分かってます。 すいません」
彼女とのコミュニケーションはもうばっちりだと判断した。 今日、僕は一歩大人になろう。 彼女に告白をするのだ。 車の中で十字を5000回くらい切る。 準備は万全。 さあ、出陣じゃいモンキーども!!
店の中に入った。店内にはノリのいい曲が流れていて、僕には歌が僕の背を押しているように思えた。いける。この雰囲気ならばいける。僕は確信した。

さっそく、大好きなあの子を探す。今日のシフトは入っていないなんていう、初歩的なミスは犯さない。ちゃんと事前に調べてある。いや、ストーカーとかじゃなくて。 やめろ! そんな目で見るな!
店内を少し回ったところ、彼女を見つけた。ぬいぐるみの整理しているところだった。周りには誰もいない。今しかない、チャンスはいまだ!僕は彼女の前に進み出た。
 僕   「あのお、すいません。今よろしいですか?」
 彼女 「あ、はい。大丈夫ですよ。」
心臓の鼓動が激しくなった。 しかし、今言わねばいつ言うというのだ。
  (ガンバレ、ガンバレ、このチキン野郎! シネ!)
心なしか、周りのぬいぐるみも応援の目を向けているように感じる。さあ言うのだ!サムライとなれ!

 僕  「あの! ずっと前から好きでした!!! 僕と……」
 彼女「えっ?」
 僕  「僕と……その、ぼ、僕と……」
ええい、どうしたこの口よ!動け、動けジ・オ!!これしきのことが言えなくてどうする!僕の彼女への想いはこんなものなのか!
 《僕と、お付き合いしてください!》
たったこれだけではないか!結果などはどうでもいい!まずは勇気を持って言うことだ!さあ、俺よ!マスラオとなれ!!僕は体中の勇気を振り絞って、言った!!!

 「 僕とオツミ!!!! 」

……噛んだ。
オツミって言った。 はっきり言った。
外人が聞いても、 「 otsumi 」 って書けるくらい言った。
告白は。バラエティのオチのような按配になってしまったのだ。


僕は泣きながらトイザらスを駆けた。(L1R1)

嘲笑するぬいぐるみを尻目に出口へと走った。 ラジコンコーナーにも目もくれず、子供連れの親子を抜き去り、手を繋いだカップルの間をくぐり抜け、無人のロビーで直角フェイントを混ぜつつ走った。
ああ、なんて馬鹿な俺。こんな恥ずかしい失敗をするなんて。
トイザらスから早く離れたかったので、僕はそのまま全力で走った。プロモーションビデオのように、前だけを見つめて走った。
 (この雨が、涙をさらってくれればいいのに……)
と思いながら走った。(雨は降っていなかった)
涙が止まった頃、僕はひとり立ち止まった。そして、もはや見えなくなったトイザらスの方角をむき、静かに思う。

告白は失敗したけど、僕の気持ちは本当だったんだよ。
胸がこんなにも痛い。 これが失恋か。 いや。

「さようなら、もう二度と姿を見せないから」

トイザらスに背を向け、ゆっくりと僕は歩き出す。それでも、すぐに僕は振り返った。
置いて来たもの、残してきたものの重大さに、今、気がついたからだ。こんなにも心が苦しい。失って初めて分かる。ああ、どれだけ僕は大切なものを残してきてしまったのだろう。
僕は、小さくつぶやいた。


 「車、忘れた……」


取りに戻った。