2.

「ありがとう。だが、私は歩くのがすきなんだ」と答えた。


タクシーは黙って去った。


また次の客を求めていくだろう。


そして、彼もまた歩き始めた。パソコンの入った大切なブリーフケースをかかえて。


そのしっかりとした重さを、彼は、おのれの使命の重さと感じていた。。


行く先のあてのあない。しかし、彼は確実に知っているのだ。


・・・彼を必要とする、まだ見知らぬたくさんの人たちが、彼を求めていることを。


今日も彼は歩きつづける。


人生をかけた夢を追い続ける人がいるかぎり。(つづく)

まつわりつくような暑さの中、彼の横にタクシーが停まった。


きちんとした背広を着て、重たそうな黒いブリーフケースを抱えた彼を


見かねたのだろう。親切な運転手はドアを開けると、


身を乗り出して「乗っていきますか?」と尋ねた。


エアコンの効いた涼しい風が、車から彼の前に流れた。


彼は運転手ににっこり笑った。しかし、こう答えるのだった(つづく)