今年も母校から広報誌と一緒に卒業制作展の案内が届いた。

毎年毎年、この季節になると律義に送ってきてくれるのだが

元来出不精な私はこれまで一度も出向いたことはない。

 

 

 

10年前ならどうだったかと思うが

ここ数年は広報誌を見るだけですっかり満足してしまっている。

才能のある後輩たちが次々と世の中に輩出されて

文化・芸能・芸術の世界で様々な賞を受賞してたり

第一線で活躍している様子を見るにつけ

すっかり遠い国の話のように思えてくる。

よもや自分も以前は同じ学び舎で同輩と

美術を学んでいたとは考えられず、

 

あれは夢か幻か、現実か。

 

その記憶も既に定かではなくなってきた今日このごろ。

 

 

でもたまにふと思い出す光景がある。

夏休み、

課題作業の為、一人うだるような暑さの中、汗を拭きふき

キャンバスの前で唸るように筆を走らせていた自身の姿。

油絵具だらけの白衣を着てぼさぼさ頭で殆ど化粧もせずに

来る日も来る日も課題を仕上げていた。

周りもバイト掛け持ちの貧乏美大生だったから

外食なんて行かず、コンビニの安いおにぎりを頬張り

テレピンの揮発性精油の匂いに包まれながら

アトリエ内で芸術談義に花を咲かせることが唯一の楽しみだった。

 

あれからン十年経って、それぞれ自分の道を進んだ。

私なぞはおよそ美術とはかけ離れた仕事についた。

ごくたまに当時の同輩と会ったりすると

美術の先生になっていたり、大手美術系出版社に勤めていたり

はたまた未だ第一線で芸術を追い求め、年ごとに

個展を開いているツワモノもいて

みんなしっかり妥協しないで生きてきたんだね、

と妙に感心してしまう。

それだけこの世界にこだわって生きていくのって大変で。

 

覚悟のない私は第5線くらいが丁度よいのである

と思っている。

 

それでも結構それなりに暮らしていけるものだ。