こんにちは。

ひとつお話を書くと、全く逆の雰囲気のお話が浮かびます。
勢いで吐き出してみるのですが、書いてしまうと今度はすぐにUPしたくなります。
我慢の効かないタイプです(´Д`;)
気が向いたモノを気が向いたときに書くという、わがまま更新ですが、気が向きましたらご覧になってもらえると嬉しいですm(u_u)m

そうそう、こちらのお話は何度か限定記事を挟みます。(早速次回は限定です)
たいした桃ではありませんが、間違えて迷い込んだ方にお見せするのは申し訳ないですし、苦手な方もいらっしゃると思うので…。





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隠した想いと見えない気持ち 1
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求めたのは私から。

どうしても一人でいたくなかった。

誰かに傍に寄り添って貰いたかった。

それが恋い焦がれるこの人なら、それ以上に幸せなことはないと思った。

たとえそこに愛がなくても……。

 

 

【不破尚、日本ディスク大賞受賞!!】

そのニュースが各紙の一面を飾ったのは、春も近づく3月の始めだった。

それは少なからず私に衝撃を齎した。

 

芸能界に飛び込んでから早4年。

ありがたいことに、それなりにスケジュールも埋まり女優業を中心に忙しくさせていただいている。

一見順調に見えるが、私は今重大なスランプに陥っている。

愛される女の演技が出来ないのだ。

 

そんな中で耳にしたアイツの功績。

「早く俺様を見返してみろよ」

受賞して以来、忙しすぎて姿を現すことさえできなくなったアイツは、嫌味たっぷりに私の携帯の留守電にメッセージを残した。

 

私は焦っていた。

昨年、敦賀さんは日本一権威のある映画祭で主演男優賞を受賞した。

ショータローは今年、海外でのコンサートツアーを行う。

私だけが何の結果も残せていない。

 

いつもならそんな挑発さえ、私には奮起の材料となるのに……

スランプによる焦りから、私の中で何かが壊れた。

 

待って、置いていかないで!!

幼いころ、母の背中を泣きながら追いかけたこと。

私の悲しみを癒してくれたコーンに別れを告げられたこと。

ショータローに捨てられたあの日。

突如フラッシュバックした光景に、足元から崩れ落ちるような焦燥感に駆られた。

 

 

 

スランプを引きずったまま、ラブミー部の依頼として引き受けた敦賀さんのお食事係。

預かったカードキーで敦賀さんの部屋に入り食事の用意をした後、リビングで台本を読みながら家主の帰宅を待った。

もうセリフはすっかり頭に入っている。

今回のドラマは推理モノ。 

恋愛の要素はほとんどない役だった。

 

『愛される演技が出来るようになるまで、恋愛ドラマは禁止だ

 

先日社長に告げられた言葉を反芻する。

 

(女優としてもっとステップアップしたいのに。このままじゃ敦賀さんにもショータローにも全然追いつけないっ……)

 

「最上さん、ボーっとしてどうしたの?」

 

思考の坩堝に嵌っていると、真横から敦賀さんの声が聞こえた。

ハッとして顔を上げると、敦賀さんが私の顔を覗き込んでいた。

 

「お、おかえりなさいっ。すみません、私ったら、お出迎えもせずに……」

 

「いや、気にしないで。それより……顔色が悪いけど、具合でも悪い?」

 

そう言って私の額に大きな手をあてる。

敦賀さんが動いた拍子にふわっと香る爽やかで優しい匂い。

その香りに、何故か涙が溢れた。

 

「最上さんっ!?やっぱり体調が悪いんじゃ…?送るから今日は帰った方が……」

 

「嫌ですっ!!」

 

とっさに敦賀さんの腕に縋りつくと、その勢いに驚いた敦賀さんが私を見つめた。

 

「嫌です…。ひとりにしないで……」

 

必死にしがみつく私に、敦賀さんは困ったように少し考えた後、そっと抱きしめてくれた。

優しく頭や背中を撫でられ、その心地よさに徐々に心が落ち着く。

落ち着いた様子の私から敦賀さんが体を離そうとするのが嫌で、ぎゅっと腰に回した腕に力を込めた。

 

「離さないでください」

 

「最上さん……」

 

顔を上げると、敦賀さんが見たこともないくらい戸惑った顔をしていた。

お互いに見つめあっていると、敦賀さんの顔が近づいてきた。

自然と目を閉じると同時に、私の唇に柔らかい何かが押し付けられた。

 

(私…敦賀さんとキス…してる……)

 

なぜかそのことだけは冷静に考えることができた。

唇が離れても、名残惜しくてつい敦賀さんの口元と顔を見つめてしまう。

 

「そんな目で見られたら、止められないよ……」

 

こんな熱っぽい敦賀さんは初めて見た。

 

「止めないでください。もっと…して………」

 

そう言うと、自分から敦賀さんに口づけた。

始めは驚いた敦賀さんも次第に口づけを深めてくれる。

 

「ん……ふっ……んんっ……」

 

初めての深いキスに呼吸がなかなか追いつかなくて、空気を吸おうと口を開けると、敦賀さんの舌が侵入してきた。

それでもやめてほしくなくて、必死で敦賀さんの舌に応える。

私の咥内に入り込んだ敦賀さんのそれに自分の舌を絡めていると、急に敦賀さんが舌を引っ込めた。

慌てて追いかける私の舌は、今度は敦賀さんの咥内に吸い寄せられる。

飲み込めない唾液が私の口の端から零れると、敦賀さんはそれを追うように私の顎、首筋へと唇を這わせた。

 

「あ……はぁ、はぁ………」

 

やっと解放された私の口は、一生懸命酸素を取り入れようと呼吸を荒くする。

首筋に口づけていた敦賀さんの唇が今度は私の耳たぶに辿り着き、カリっと甘く歯を立てた。

 

「んあっ…!」

 

ぞくぞくするような感覚と同時に、お腹の奥の方が熱くなる。

 

「最上さん、この先の意味……わかってる?」

 

敦賀さんの綺麗な瞳の奥に熱い熱を感じた私は、頷いた。

 

「お願いします。傍にいてください……置いていかないでっ……」

 

傍にいて。

離さないで。

 

箍が外れた私が自分からまた口づけたら、敦賀さんが切なそうな顔をしながら私を強く抱きしめ、噛みつくように激しいキスをしてきた。

 

(今日の敦賀さんは、初めて見る表情がいっぱいだなあ……)

 

なんて、やっぱり私はどこか冷静に考えていた。