こんばんは。
吐き出したはずのキッズ妄想が止まりません。
もう少しお付き合いいただけると幸いです。
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プライマリーな彼ら ≪2≫
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「敦賀蓮です。よろしくお願いします」
ざわつく教室内を見渡す。
みんな、新しいクラスメイトに興味津々の様子で俺の顔を見ている。
男子は値踏みするように、女子は頬を赤らめながら前後左右の席同士ひそひそと話し合っている。
そんなそわそわした空気の教室内で窓際の席に一人、ピンと背筋を伸ばしたきれいな姿勢でこちらを見ている女の子を見つけた。
「!!」
「それじゃあ学級委員の不破尚くんと最上キョーコさん。蓮くんにいろいろと校内のことを教えてあげてください」
担任の社先生の言葉に、最初からずっと俺を睨むように見ていた男の子と、例の女の子が立ち上がる。
(学級委員なんだ……)
彼女に校内を案内してもらえる幸運に、俺のことを睨みつける人物のことは頭からすっかり消え去っていた。
放課後、俺はやっと最上さんと話しをすることができた。
今日一日、何度か声かけようとタイミングを計っていたけれど、休み時間は新しいクラスメイト達に席を囲まれてしまい、なかなかチャンスを見つけられなかった。
放課後になり最上さんのほうから声をかけてくれた。
「敦賀くん、これから時間があったら校内を案内してもいい?」
「もちろん。お願いします」
彼女から話しかけてくれたことが嬉しくて笑顔で答える。
「………最後にここが音楽室。
これで校内はほとんど案内できたけど、何か質問とかある?」
一通り校内を一周して、最後にたどり着いたのは音楽室だった。
最上さんが先に中に入るのを確認して、そっと音楽室の厚い扉を閉める。
「ううん……。ありがとう。最上さんと放課後の校内デートができて楽しかったよ」
「敦賀くんたら、王子様みたいな見た目でそんなこと言うと、女の子たちはみんな敦賀くんに夢中になっちゃうわね」
「王子様?」
一番夢中になってほしい相手に、他人事のように言われて、少しがっかりしながら問いかける。
「うん。クラスの女の子たちが言ってたわよ。
敦賀くんってかっこよくて優しくて、まるで絵本の王子様が現実に飛び出してきたみたいなんですって」
クスクスと楽しそうに話す最上さんに見惚れながらそっと近づく。
「最上さんも王子様とか、おとぎの国とか好きでしょ?」
だって昔、君は俺を妖精の王子さまだって信じてたから……。
「……え?」
「最上さんて、そこの河原の近くに住んでいる?」
「何で知ってるの?」
やっぱり……。
俺と最上さんは、6歳のころに出会っている。
でも、俺のことは覚えていないのか……?
「最上さんは、魔法とか妖精とか信じてそうだよね?」
「どうしてわかるの!?」
「え……」
思いもよらない返事に逆に驚いた。
「私、妖精に会ったことがあるの……」
お目をキラキラと輝かせながら、内緒よ?と可愛い声で囁く。
「!!?」
「本当よ!魔法の石だって貰ったんだからっ」
「っっっぶふっ」
も、もしかしてその妖精って……!?
「そんなに笑うなんてひどい!」
「そんなことないよ。その……可愛いなって思って…」
笑い過ぎてこぼれた涙をぬぐいながらフォローしたけど手遅れで、最上さんはぷりぷりと怒る。
「やっぱりからかってる!!」
ぷくっと膨らませた頬が可愛くて。
つい……。
膨らんだ頬と一緒に尖らせた唇に、自分のそれを寄せた。
「れぇ~ん~~!!」
あと数センチ…というところで、邪魔…いや、担任の社先生が音楽室の入り口に立っていた。
仕方なく最上さんから離れる。
「蓮、ここは日本だから。慎みと恥じらいの文化の国だから」
社先生の言いたいことはなんとなくわかる。
俺だって誰彼構わずこんなに近づく訳じゃない。
最上さんだから傍によりたいし触れたいんだ。
「蓮くん、この後職員室においで?」
「今日はこのまま最上さんと一緒に帰りた「職員室、お・い・で??」」
「わかりました」
俺は最上さんにお礼を伝えると、仕方なく社先生の後に続いた。
職員室で社先生から「日本とアメリカのスキンシップの違い」とか、「慎みと恥じらい」について延々と説明されたけど、正直そんなのはどうでもよかった。
(キョーコちゃんに会えた!!)
幼いころ、ほんの少しの間だけ日本に滞在した。
あの時、偶然出会った女の子のことが忘れられなかった。
父さんから日本で暮らすと聞いた時には、「もしかしたら…」くらいにしか思っていなかったけれど、まさかクラスメイトになれるとは!
キョーコちゃんと再会できたことはもう運命としか考えられなかった。
キョーコちゃんが俺を覚えていてくれた!
(あの時の妖精と同一人物だと気づかれていないけど…)
それだけで胸がいっぱいだった。
社先生のお説教をBGMに、俺は明日からの楽しい日々に思いを馳せた。
∞∞∞∞***∞∞∞∞
なんだか続きそうな気配……。
でも続きは全く決まっておりませんm(..)m