制作:敦賀蓮の【T】片想いを【K】(生温かく)見守る会【M】
担当:石橋 光



いくら社長命令とはいえ、酷すぎる。
なんでもお見通しの社長なら、俺の気持ちだって知ってるんじゃないの?

そりゃ敦賀さんは、俺と対して年も変わらないのに、背も高くて演技も上手くて、堂々としてて頼りになって………。
やめよ。なんだか心が折れそうになってきた……。



報告します。


今日は珍しく『きまぐれロック』以外の番組で京子ちゃんと共演。

タレントとしても頭の回転が速く、礼儀正しいけどノリがいい。
最近では女優としての評価も高い京子ちゃんは、いろんな番組に引っ張りだこだ。

そんな京子ちゃんが、俺達ブリッジロックが司会を務めるトーク番組のゲストとして来てくれた。

「リーダー、折角やから京子ちゃんの控室に挨拶に行ってきたらどうや?
俺達先輩やけど、今回は京子ちゃんはゲストやし、不自然やないやろ?」

俺の気持ちを知っているメンバーの二人に背中を押されて、京子ちゃんの控室にやって来た。


コンコン


「はい」

あ、あれ?敦賀さん?
京子ちゃんの控室を訪れた筈が、扉を開けてくれたのは敦賀さん。

「あ、あの…ゲストの京子さんに挨拶を…」

「あぁ、わかりました。……最上さん、共演者の方が挨拶に……」

「えっ!…あぁっ、光さんっ!…すみませんっ!私から伺うべきなのにっ!!」

恐縮して謝る京子ちゃんを笑顔で宥めていると、なんだか背筋がゾクッとした。

(……?このテレビ局、空調効きすぎじゃないか?)

「光…さん?」

「あっ、光さんはブリッジロックというグループの方で…。皆さん名字が『石橋』なので、お名前で呼ばせていただいてるんです」

京子ちゃんが敦賀さんに説明してくれてるけど……。

(同じ事務所だけど敦賀さん…やっぱり俺達のこと知らないんだ…)

ふと視線を控室の奥に送ると、テーブルの上には色とりどりの見るからに美味しそうなお弁当。

「ごめんね。食事中だった?」

「あっ、これは敦賀さんのお食事でっ…」

「最上さんの食事はとっても美味しいから。…昨夜、俺の部屋で作ってくれたハンバーグもとても美味しかったよ」

え?京子ちゃんの手作り弁当?
あれ?社長から、二人はまだ付き合っていないってきいてるけど?
付き合ってないのに、そんなことしてるの!?

「そ、それにしても、とても美味しそうなお弁当だねっ」

「よかったら光さんもご一緒にいかがですか?」

気を取り直して京子ちゃんに話題を振ると、彼女から嬉しいお誘いが…

「えっ、いいの?…それじゃ「あれ?石橋さん、呼ばれてますよ?」


………え?
近くに全く人がいない…けど?
多分、絶対…呼ばれてないけど?

「ほら、急ぎの用事じゃないですか?」

「えっ?え?」

なんだか訳がわからないうちに、気がつくと俺は京子ちゃんの控室から出ていた…。


あれ……?
もしかして俺、追い出された?

結局、敦賀さんが京子ちゃんと二人きりになりたかったって事だよね…。


社長……こんな報告で大丈夫ですか?



∞∞∞∞***∞∞∞∞


こんなんで…大丈夫ですか…?