朝。
朝が、来た。
そして、目覚める。
天宮ソラ。
腰まである黒い髪が、枕から離れた。

ソラは見た。
椅子に腰掛け寝ている祐美というなの母親を。
そして祐美も目覚めた。
「おはよう、ソラ。」
「おはようございます。」
相変わらずの敬語。
祐美を母親と認識するまでにどれくらいの時間がかかるのだろうか...。
「私は、ソラの、ママだから、敬語じゃなくて、いいの。」
一つ一つ丁寧に祐美は言った。
「ママ...ママ....ママは....祐美...さん...。」
ソラは不思議な顔を傾げて繰り返す。
祐美は、可愛らしいソラを見て少しだけ微笑んだ。
「さて、ソラ。帰ろう。」
ソラは眠たそうにむくむくと布団を動かして、ベッドから降りた。
そして、天宮病院から出た。
退院。
自家用車で家に帰る。
白い大きめの車に祐美とソラで二人。
他愛も無い会話の空気は薄く、ぼんやりとしていた。
ただただソラは真っ直ぐ前を見据えていた。
その空気が少し固まったのは、カーナビゲーションと言う名のシステムの音声。
[ まもなく、目的地周辺です。ナビを終わります。走行、御疲れ様でした。 ]
「ソラ、もうすぐ家に着くからね。」
ソラは、笑顔一つ見せず頭を縦に振った。
