(弁慶殿の提案とはいえ、墓地にこのようなことで立ち入ることになるなど……)
 
とはいえ、墓地を荒らすわけでも、何かをするわけでもないから、と言われると、断れないのが自分の性格で……
 
それに───
 
ちらりと横に視線を落とすと、顔を強ばらせ、小刻みに震える少女が。
私の視線に気付いたのか、少女は口を開いた。
 
藤姫「わ、私は大丈夫です!夜に出歩くなど、今までなかったですし、むしろ楽しみなくらいで……!」
 
少女にすら気を遣わせるほど私は情けない顔をしているのか、と反省しつつ、私は彼女に手を差しのべた。
 
永泉「はぐれたら危ないですし、足元も危険ですから、その、……手を繋ぎませんか?
 
それに、その……、気持ちも少しは落ち着くと思うので……」
 
いいのですか?と、おずおずと差しのべる手は、普段より小さく見えて、私がしっかりしなければ、と思えた。
 
 
弁慶殿のお誘いがあった際、藤姫の参加に対して、せっかく他所へ行ける機会な上、他にも八葉がいるから何かあったらお守りします!と皆で言ったはいいものの、まさかこんなことになるとは思いませんでしたし、肝試しで私と組むなんて藤姫も思っていなかったでしょう……。
 
頼りない自分に歯がゆく感じるも、彼女は手を繋いだことで、少し表現が和らいだ(ようにも)見える。
 
私がそう思いたいだけかもしれないけれど……。
 
 
永泉「早く帰って、皆のところに戻りましょう。大丈夫です。弁慶殿の提案ですから、危険なところになど……」
 
とたんにガサガサと茂みが揺れた。
 
「「きぃやぁああああああ!!!!」」
 
私達は一目散に駆け出しました。半ば私が藤姫を引っ張りあげているような形になっていなくもなかったですが。
 
 
少しした頃、私は我に返り、立ち止まりました。
 
永泉「し、失礼、しました!あの、どこか、痛めておりませんか?」
 
藤姫は駆けているとき、地に足がついていただろうか、などと考えつつ、声をかける。
 
途中、ゆらゆらとしたいくつもの青白い(?)灯りが見えたので、そこにでも行けばもしかしたら屋敷があったかもしれない。こんな道端でへたりこむこともなかったのかもしれない、など、考えれば考えるほど彼女に申し訳なくなってくる。
 
藤姫「はぁはぁ、だ、大丈夫です!このように走れたのも、永泉様が手を引っ張ってくださったお陰です!」
 
咳き込みつつも話す彼女を見て、無理をさせてしまったな、と申し訳なく思っていると……
 
 
「貴族様だよな?金目のものでも置いていってもらおうか」
 
 
休む暇もなく、小汚ない賊が出てきた。
今度こそ、私がしっかりしなければ。普段と変わりないことをすればいい。
 
はずだったのだけれど───
 
 
とたんに、道端の木からボタボタと何かが落ちてきたものだから、私達は再び跳ね上がって、小汚ない男達を突飛ばし駆け出してしました。
 
「賊なんて予定にあったかな?」なんて声が聞こえた気もするけれど、人に助けを求める余裕もなく、私達はなんだかんだ墓地に着きました。
 
藤姫「なんとか、たどり着きましたね!」
 
まだ、帰り道という試練があるのに、藤姫はもう終わりだと言いたげな晴れ晴れとした顔をしていた。
 
永泉「え、ええ!これで終わりです!さぁ帰りましょう!」
 
上ずった声で声をかけ、蝋燭を立てる。
私もなんだか、もう用事が済んだかのように思えてきてしまい…………
 
 
 
指示通り蝋燭を立て、急いで帰ろうと後ろを振り返ると、なんと、されこうべが、ぶら下がってきて、
 
「「きぃやぁあああああああああ!!!」」
 
気を抜いた後のことですから、かなり動揺したのでしょう。気付いたら目の前に八葉の皆がいました。
どうやら、集合場所に帰ってきたようで……。
 
ヒノエ殿に、藤姫を脇に抱えて走るとは、と笑われて、初めて自分のしていることに気付き、慌てて彼女を下ろしました。
 
 
藤姫にとっては初めての夜道探索でしたのに、楽しむ暇もなく終わってしまったことを、申し訳なく思いつつも、無事に身ぐるみ剥がされることなく戻ってこれたことに安心している自分がいました。
 
 
全く、弁慶殿は見かけによらず、とんでもないことを考えつくものです。
 
 
ふぅ、
一息ついたところで、次は友雅殿ですね。
どうぞ、お気をつけて。
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