「目、閉じろよ。」



煌びやかに輝く夜景。


反射してさらに美しい海の波打ち。




私は今、幸せの一歩手前かもしれないー……







土曜日14:00。





私とハルは横浜に上陸していた。






休日だし、クリスマスも近いだけあって人は賑わいを見せている。



「歩きっぱなしで腹減ってるだろ。


先に食べ行くか。」




ハルはスマホをそそくさと取り出し、ご飯屋さんを調べ始めた。



男の人とデートするのも久しぶりなのに、リードされるなんてほぼ初めてだったから、なんだか今いるのが自分じゃなくて映画をみてるみたいだった。





「美味いパスタ屋さん、三つオススメあんだけど、どれがいい。」




スマホで見せてくれた画面には、本当に美味しそうな写真ばかりが載っている。




正直、一緒に食べられるならどこでも良いのだが折角オススメしてくれたのだからここはハルに乗る。




「えーっと、じゃあこの”ソムリエ”ってとこかな。」



パスタの写真がどことなく小洒落ていた。


これならば仕事の資料にもなるかもしれないと、少々余計な考えがよぎってはしまったものの。


パスタの中では1番好みのカルボナーラが大盛り無料らしかったので、ここに心が動いていた。



「センス良いじゃん。

ここ、ワインもスゲー美味いんだよ。」



あれだけ私の前だとツンケンしている奴が、クシャッと少年のように笑う。



またズルい攻撃で、私のHPはバーをひとつ削られてしまった。




「ん。」




「えっ。」



お店を決めたやいなや、差し出される手に一瞬何が起こったのか認識できなかった。







「手、出せよ。」





ハルはぶっきらぼうに私の手を恋人繋ぎしてきた。









心拍数が伝わりそうだ。







今、貴方は何を考えている?




私のこと、本当に何も思っていないの?





ただの気まぐれ? 遊び?




それとも、ちょっとだけ。



ほんのちょびっとだけでも、私のこと………



期待しちゃ駄目なのは分かっていても、もう後戻りはできなかった。




恋って、こんなんだったなそういえば……。




好きになったら、相手がどうであれ、もうどうしようもないんだ。






「……なんか、今日のお前、可愛いな。」






手を引かれるだけ引かれている私は、歩く色気の塊のようなコイツに顔を覗き込まれてその言葉を放たれた。






「………っ。

んなわけ……あるかっ!!」




つい咄嗟に、顔をかがめて否定してしまう。



クズみたいに振り回したり、リードしてくれたり、言って欲しいこと言ってくれたり。





あと数センチ踏み込まれたらー…….




私の方から告白してしまうかもしれない。










「ん、着いたわ。」



私だけが悶々としている最中、見上げるとそこには小さな木造のお店が佇んでいた。





豪華すぎないというか、変に気疲れしなさそうなところが雰囲気もあって凄く良い。




「とりあえずお腹いっぱいになりゃ、
気持ちも晴れる。



飯、楽しもーぜ。」






木の葉のそよ風が宙を舞い、私達の空間を包む。





憧れの人とのご飯がとろける時間になるなんて。

















今の私には、ただ目の前の想い人に見惚れるしかー………なかったんだ。