あのさ、俺、自動販売機になるわあ。




彼からの突然の告白。あなたならそんな時どうしますか?




わたしは、わたしの取った行動は間違っていたのでしょうか?





静子(25)の場合。





「いい加減にしてよ、辰郎太。この年で自動販売機なんて、体力的に無理よ」




わたしは本当に彼の体が心配だったのです。自動販売機は1日何人もの方に飲料水を手渡すお仕事。




しかも彼がなりたい自動販売機はオフィス街にあると言う。土日は会社が休みだから、俺たち自動販売機も休みみたいなもんだしなんて辰郎太はお気楽に言うけどそんなの絶対無理。




「静子は俺の事、勘違いしてるよ。俺、自分の体の事なんてどうでもいいんさ。…一人でも多くの企業戦士たちに飲料水を手渡す、それを飲んだOLさんが上司との不倫を考え直す。そんな役目になれたらいいなって、俺、ガキの頃から考えてたんだ。煙草じゃ駄目なんだ、酒じゃ駄目なんだ、俺は色んな客層を一手に引き受ける飲料水の自動販売機になりたいんだ」




いつもふざけてばかりいる辰郎太が初めて見せた真剣な眼差し。




わたしだって応援してあげたいよ、だけどわたしの口から出た言葉は身勝手な台詞でした。




「結婚、わたしたち結婚は考え直した方が良さそうね…いやだもん、私毎日あなたの事心配してお家で待ってるなんて、いや。危険だよ、自動販売機。バール持った悪い人たちが来たらどうするの?お釣りは?お釣りも絶対、間違えちゃ駄目なんだよ、自動販売機は」



辰郎太は悲しい色した瞳をわたしに向けた。




「そっか、静子。…俺たち別れた方が良さそうだね。自分の結婚相手には、自分のすべてを理解してくれる人を選びたい。別れよう」



辰郎太の言葉にわたしは言い返す事が出来なかった。好きなのに、理解しているのに、言えなかったんだ。



わたしはただの一言「好きだから着いてく」って言えなかったの。




「分かった、自販機のお仕事頑張ってね。さようなら、辰郎太…」。




こうしてわたしは十年付き合った彼と別れた。今でもたまに後悔します、わたしの取った行動は間違っていたのかな?思いやりが無かったのかなって。赤ペン先生、教えて下さい…




[赤ペン先生のお返事]


静子さん、こんにちは(・∀・)ノ彼との悲しい別れ、立ち直れない自分。分かります、先生にも覚えがあります。先生は子供の頃、パイロットになりたかったのですが今は赤ペン先生です。こうして静子さんにお返事を書きながらも大空眺め、コックピットの自分を想像したりもします…男ってそんなもんですよ。静子さんは新しい恋をするべきですo(^∇^o)(o^∇^)oでは解決処方薬として先生の連絡先書いておきます。090‐××××‐××××


(おしまい)