1981年12月25日
名古屋市民会館中ホール
名城大学グリークラブ 
第14回定期演奏会より

「中勘助の詩から」 Ⅶ.追羽根 
作詩 中 勘助  
作曲 多田 武彦
指揮 掛橋 正洋
ソロ 井上淳二

五月の病気このかた引籠ってた姉も
この頃は不自由ながら家のなかの用が足せるやう
になった。で、いよいよ足ならしに外へ出ることになり、
第一日は筋向ふのお稲荷さんへお詣りと話がきまった。
姉は附添ひに ヨネさんをつれて出かけた。すぐ
戻るといったのが思ひのほか暇がかかるのでどうかと
気づかってるところへベルが鳴った。急いで玄関へ
出迎へる。ユキさんがあけた格子から競技に
勝った子供みたいに得意にはひりながら境内をまはって
きた、といふ。上出来だ。後につづいたヨネさんが、
これをおみやげにと手にもった羽根をすこしあげるやうにして
私にみせた。露店で買ってきたのだ。

いち夜あければ初春の
夢を追羽子いたしましょ
羽子板もって紅つけて
ひとりきなきなふたりきな
ふるや振り袖裾模様
帯は金襴たてやの字
黒のぽっくり鈴ちろり
見にもきなきなよってきな
まるいむくろじ白い羽根
蘂のすが絲青や赤
それ花のよに実のやうに
ちょんとつかれて空高く
あがるとすれどくるくると
つちにひかれて舞ひおつる
乙女の夢の追羽子を
吹きてちらすな春の風