私は、ある年、講師オーディションに参加しました。
そうはいっても、自分に自信があったわけではありません。
むしろ、その逆です。
自信がなかったからこそ、勇気をふりしぼって参加することに決めました。
オーディションには、さまざまな講師がエントリーします。
その方々と自分を比べれば、「自分に足りないもの」を客観的に見直すことができるはずです。
また、オーディションには事前講座が設けられており、「講師の心得」を学べる、またとない機会でもありました。
予選会の結果、本選への出場を認められたものの、「自分にできるだろうか」という不安は少しも消えません。
それどころか緊張は増すばかりです。
そんな私を見て、まわりの人たちは揃って、こう言いました。
「工藤さん、ものすごく緊張しているでしょう」
そう言われ、私はますます緊張しました。
「どうして、だれも『大丈夫だよ』と励ましてくれないのだろう・・・」
そう思ったとき、ある方からの言葉が、私に勇気をくれました。
「工藤さんは本番に強いから、大丈夫!」
私はこの言葉をいただいてから、不安も、緊張感も、プレッシャーもなくなり、本番では気持ちよく登壇することができました。
言葉には、「相手をポジティブに導く力」もあれば、「相手をネガティヴに導く力」もあります。
「緊張しているでしょう」と言われた私は、ネガティヴに導く力に引っ張られて、どんどん気持ちがふさいでいってしまいます。
その一方「本番に強い」と言われたときは、ポジティブに導く力が働き、背中を押されたような安心を覚えました。
その方は、私が「励ましてもらいたい」と思っていることを感じ取り、ちょうど「私が求めていたひと言」をかけてくださったのです。
相手が「言われたらうれしい言葉」を察知して、言ってあげます。
そのやさしさが、あたたかな人間関係を築くのです。
だからこそ、たったひと言でもいいので、「大丈夫!」といった「背中を押してくれるポジティブな言葉」をかけてあげることが、とても大切なのですね。