現役販売員のNさんのもとに、ある日、「小包」が届きました。

 
 
差出人は、Nさんの後輩、Tさんでした。
 
 
Tさんは販売員をやめることになり、小包には手紙と贈り物が入っていました。
 
 
手紙には退職の挨拶と、Nさんにあてた感謝が綴られていました。
 
 
 

 
小包を受け取ったとき、Nさんは少しだけ「あれ?どうして?」と疑問に思ったそうです。
 
 
 
「たしかにTさんのことは知っている。
 
 
 
けれど、たまに顔を合わせるくらいで、親しいお付き合いをしていたわけではない。
 
 
 
退職するからといって、お礼と、それに贈り物をいただく間柄ではなかったのに」
 
 
 
それでもTさんにとって、Nさんは「恩人」だったのです。
 
 
 
 
 
Tさんがまだ新人だったころ、お客様からクレームをいただいてしまったことがあります。
 
 
 
謝罪をし、お客様も怒りをおさめてくださったのですが、うろたえてしまったTさんは、動揺が収まらず、その後も「小さなミス」を繰り返すことに。
 
 
 
このとき、先輩スタッフだったNさんは「Tさんの様子がおかしい」ことを知ると、彼女にそっと声をかけました。
 
 
 
「あなたとは、何度か私が教育係で一緒になったことがあるよね。
 
 
 
あなたの仕事ぶりを何度か見てきて、あなたが『いい加減な仕事をする人』ではないことを、私は知っています。
 
 
 
今日はたまたまミスをしてしまったけれど、私はあなたのことを信頼しています。
 
 
 
だから、自信を持って。
 
 
 
あなたが、手を抜かずにきちんと仕事をする人だと、私はわかっていますよ」
 
 
 
手紙の最後には、「Nさんは『あなたのことを信頼している』と、そういってくださいました。
 
 
そのひと言を、いまもはっきりと覚えています。
 
 
 
私にとって、心あたたまる『救いの言葉』でした」と書かれてあったそうです。
 
 
 
 

「あなたを信じています」という「救いの言葉」が、人に勇気を与えます。

 
 
人間は、誤解されることに不安を、理解されることに安心を覚えます。
 
 
 
だからこそ、責任を問うよりも先に「あなたを理解している」ことを伝え、相手の心の負担を軽くすることが大事なのです。
 
 
 
多くを語らなくても、「あなたを信じています」という「救いの言葉」が、人に勇気を与えることができるのです。